クラフトビール醸造体験記 ~常陸野ネストビール 手作りビール工房~

ドルフィンインダストリー サマーオレンジIPA

2017年2月某日。ライターである私、若松達彦が経営する鹿児島にあるクラフトビールBUGERS & CRAFT BEERS「ドルフィンインダストリー」において、創業10周年を記念するオリジナルクラフトビールを作るため、茨城県那珂市にある木内酒造・常陸野ネストビール「手作りビール工房」を訪れた。

ここは日本酒蔵の雰囲気を残した小さな蔵で、マイビールを15リットルから60リットルまで要望に応じてモルトマッシング製法で作ることができる。今回は、最大の60リットル仕込みで鹿児島を代表する柑橘類である甘夏を使用したIPAを作る。

釜

打ち合わせではベースとなるビアスタイルやアルコール度数、苦味を決め、実際に匂いを嗅ぎながら使用するホップを決める。その後、自分たちで麦芽を計量し、粉砕機にかけ釜に投入。早速始まった「社会科見学」に心のときめきを感じる。

担当者の指示に従って、釜の中の温度を計り、かき混ぜる。やがて糖化が完了しているかどうかヨウ素液を使ってテスト。糖化が完了すると麦汁の温度を76℃まで上げ、酵素の働きを止める。大きな計量カップを使い、釜の下から麦汁を少しずつ出し、再度上から静かに投入する循環という作業をくり返す。

釜はロイタータンになっているので、こうして循環することで麦汁がろ過され、澄んだ色に変わっていく。

スパージング
スパージング

次に、麦汁だけを煮沸するために、麦芽を残し麦汁を隣の釜に移していく。残った麦芽にもまだ糖分が残っているので、それも取り出すために上からお湯をかける。その作業がスパージングだ。ここでは、花に水をやる時に使うジョウロを使用し、花壇さながら、麦芽が麦汁から顔を出しそうになると、すかさずお湯をかける。

そして煮沸。担当者の指示通り、タイマーのピピピという音に合わせ、最初のホップを投入する。約1時間ほど煮沸するので、ここでランチタイムとなり、事前に予約していたサバサンドを煮沸釜を眺めながら頂く。

しばらくするとまたタイマーがピピピとなり、鹿児島県産の甘夏の果汁と皮を投入。同時にアロマホップも投入する。今回我々がチョイスしたホップはビタリングにコロンバス、アロマホップにカスケード、アマリロ。どれもアメリカンIPAなどでよく使われているホップだ。

最後のタイマーが鳴り、煮沸終了。熱交換器を通し、麦汁の温度を下げて、ここでの作業が終了となった。できあがった麦汁を飲むと、とても甘く、この糖分を酵母が食べて、アルコールになる。ここからは、場所を移し、担当者が酵母を入れ発酵させる。

今回作ったIPAの度数は6%。IBUは40になった。発酵と熟成を合わせて仕込みから4週間ほどで完成(完成までの期間は度数による)。瓶詰めされて、希望の配送先へと送られる。

事前にメールで送っていたオリジナルラベルデザインも、粘着シートに印刷して同封されているので一枚一枚貼っていく(酒税法上ラベルの貼り付けは自身ですることになっている)。

サマーオレンジIPA
サマーオレンジIPA

初めて作ったこのビールは、副原料の甘夏になぞらえて、サマーオレンジIPAと名付け、10周年記念パーティの2017年4月12日にお披露目し、10年の節目をオリジナルビールで祝福した。あっという間に飲み干して、今や空瓶しか存在しない幻のビールとなってしまった、たった60リットルのサマーオレンジIPA。

いつもなら飲む喜びだけのところに、作る喜びもプラスされ我が子のような可愛さがあった。作るところから、飲むまで、たくさんの人と共有できたことは紛れもない財産であり、飲んで文字通り泡と消えてしまう、この儚い黄金色の飲み物への情熱が止むことはない。

ビール工房紹介

常陸野ネストビール 手作りビール工房

住所:茨城県那珂市鴻巣1257
電話:029-270-7955

要予約
平日 15リットル仕込み 25,515円(ボトル330ml/45本)から
土日 15リットル仕込み 28,350円(ボトル330ml/45本)から
(15、25、40、60リットルコース有り)

体験記中のランチ

木内酒造特製 常陸さばサンドランチ(手作り工房利用者限定)

1,000円

店舗情報

ドルフィンインダストリー

ドルフィンインダストリー

鹿児島市東千石町14-15 浜田ビル3F
TEL: 099-295-4600
URL: http://dolphintrip.net/trippers/

The following two tabs change content below.

若松 達彦

鹿児島市の繁華街・天文館でクラフトビールとハンバーガーの専門店DOLPHIN INDUSTRYを営む。サーフィンとカリフォルニアをこよなく愛す。出版社に勤めていたサラリーマン時代の経験を活かし、飲食店店主ならではの目線で執筆中。

よなよなの里