ニールセン、米国ビール市場の現状を発表。クラフトビールが好調!トップ40ブランドは2桁成長

世界最大のマーケティング調査会社ニールセンが、米国のクラフトビール(小規模醸造のビール)市場についての調査の日本語版を公開しました。

ビール全体の売上は低迷しているが、クラフトビールは好調

酒類の売上に目を向けてみると、現在、米国ではビールの売上げが以前よりも低迷しています。ニールセンの「米国ビール市場の現状(State of the U.S. Beer Market)」のレポートで、過去数年間はワインや蒸留酒にシェアを奪われていたことが明らかになっています。

しかし、こうした全般的な業績低下の一方で、クラフトビール界の成長が続いている側面もあります。

クラフトビール業界では40醸造業者の成長率が2桁に

ニールセンが米国で行った店外消費用ビール販売チャネルでの測定では、クラフトビールは、2017年10月7日までの52週間で3.4%の売上の伸びを示しました。この伸びはクラフトビール業界全体の数値ですが、売上高の上位を占める100醸造業者のうち40醸造業者の成長率は2桁に達しています。

この上位40醸造業者の2桁成長への道筋には、多様性があります。ニールセンは、大手クラフトビール・ブランドや急成長を遂げるクラフトビールブランドに該当する、以下の3つの領域に特に注目し分析しました。

1) 成長率が上位のクラフトビール醸造業者を多く抱える州と地域
2) 一部ブランドに対する大手主流ビール会社からの支援
3) 各社が出す商品種類の多様性

クラフトビールの成長を牽引するのは、特定の州と地域

地域別に見ると、醸造業者は米国の西側に特に集まっており、カリフォルニア州の6社、ワシントン州の3社、オレゴン州の2社、ユタ州の1社の合計12のクラフトビール醸造業者がこの地域に本拠を置いています。

ただし、上位40醸造業者のうち10社が所在する中西部でも力強い成長が見られます。中西部全体としては、ミシガン州とオハイオ州が最も成長への貢献度が高く、両州とも上位40醸造業者のうち3社を抱えています。

また、クラフトビールのシェアが比較的低い州に本拠を置く醸造業者は、上位40社のうち7社を占めます。この数字から考えられるのは、一般的には非クラフト系のビールからより大きな利益を得ている州でも売上を伸ばす方法を、こうした企業は見つけ出そうとしているということ。

例えば、ビール人気が高い州であるテキサス州とフロリダ州の少数の醸造業者は、クラフトビールの成長の余地がある州で2桁成長を達成しています。これは、クラフトビール醸造業者の好例といえます。

結論、醸造業者がどの州に所在するかが、全体的な売上を左右するきわめて重要な要素といえます。注目すべきは、クラフトビール醸造業者上位40社が、売上高の平均42%を本拠地である州から得ていることです(ビール販売を制限する法律がある州の醸造業者を除く)。

大手ビール会社は、本拠地以外の州でクラフトビールの販売拡大

上位40ブランドには、小規模な独立醸造所のクラフト・ブランドだけではなく、大手醸造会社が所有する12のブランドも含まれます。この12ブランドのうち4社が、2桁成長を遂げる醸造業者の上位10位に入り、それらは最大手のクラフトビール醸造業者です。

大手ビール会社が所有するクラフトビールブランドとなると、流通や販売経路は独立醸造業者よりも早いペースで拡大することができます。この4年間は本拠地である州以外での売上を拡大してきました。そのため、大手ビール会社が本拠地の州で占める売上の割合は4年前の54%から44%へと低下しています。

クラフトビールブランドの多様化が顕著に

クラフト醸造業者の商品の種類はさまざまであり、すべての醸造業者にあてはまる公式はありません。

例えばインディア・ペールエール(IPA)スタイルは、特に高い人気を誇り、クラフトの総売上の約30%を占めています。上位40社では、IPAが占める割合は平均売上の40%に達しています。そのうち6社においては、IPAが全体の売上に占める率が70%を超えています。しかし一部の醸造業者では、IPAの売上は非常に低く、代わりに他のスタイルが大きな売上をもたらしていることもあります。

また、クラフト醸造業者のブランドの幅広さも考慮すべき重要な要素といえます。上位40醸造業者のブランド数は、6から50以上まで多岐に渡ります。クラフト醸造業者1社あたりの平均は23ブランドもあり、10~25ブランドを擁する醸造業者は上位40社のうち18社も該当します。

しかし、米国では小売店の棚に占めるクラフトビールのスペースが以前ほど広がらないのが現状であり、個々のブランドが店舗に十分な利益をもたらさない限り、多様な商品の展開を長期的に維持するのは困難だとしています。

まとめ

米国のクラフトビール醸造業者の売上はどの州に所在するかが重要であること、ユーザーに人気があるスタイルのビールが特定のブルワリーでは売上に貢献しないなど、興味深い調査内容です。地域に応じたマーケティングや大手主流ビール事業者からの支援などで販路を広げることが重要であるという点は米国だけでなく、各国でもあてはまりそうです。こうした点を意識しながら各ブルワリーが運営することで、より多くの人々にクラフトビールが届くのではないでしょうか。今後のクラフトビール業界の発展に期待です。

【公式ページ】ニールセン カンパニー合同会社(ニールセン日本法人)

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明田川蘭

出版社、外資IT会社を経て沖縄で2年弱を過ごし東京へ帰って来て、編集・ライターとして独立。大のお酒好き、旅好きで、旅に出かければ必ずやその土地の地ビールや日本酒などをいただく。好物は「温泉に入った後のビール」「仕事で嫌なことがあった後のビール」「フェスでいただくビール」。

よなよなの里