東京都調布市、京王線飛田給駅前にある「Kaiser Chick」（カイザーチック）は、醸造所を併設した“ビアホール”で、ケーキや焼き菓子が並ぶ洋菓子店でもあるという個性的なお店。
なぜ洋菓子店とクラフトビール醸造所が一体化したのか……。元パティシエでブルワー兼マネージャーの平良巧さんと、共同でお店を運営している平良祐里さんにお聞きしました。
「Kaiser Chick」の原点は、地元で愛され続ける洋菓子店
「Kaiser Chick」をオープンしたのは、平良巧さん・平良祐里さんご夫婦。2023年1月に洋菓子と料理、クラフトビールのお店として開業し、同年11月末にビールの自社醸造をスタートしました。
そもそも、「Kaiser Chick」は1993年創業のケーキ店「パティスリーウルソン」（現在、東京都府中市・武蔵野市に2店舗展開）の姉妹店なんです。「パティスリーウルソン」は巧さんのご両親のお店で、店内に並ぶケーキや焼き菓子はウルソンの商品。巧さんは小さいころからパティシエを目指し、大阪の製菓学校を卒業。祐里さんも同じ製菓学校の出身です。
きっかけはドイツ・デュッセルドルフへの旅
製菓学校卒業後、巧さんは関西のパティスリーやカフェで働いていました。パティシエの道から一転してクラフトビール醸造に興味を持つことになったのは、祐里さんのお姉さんが赴任していたドイツ・デュッセルドルフへの旅がきっかけ。
「パティシエとして働いたり、カフェで調理もして、もともと食ベること・飲むことに興味がありました。それで、ドイツといえばビールだなと、旅に出る前にビールについて調べたんです。その時にはじめて、ビールにはさまざまな種類があることと、日本国内にもクラフトビールの醸造所がいくつもあることを知りました」（巧さん）
ドイツでビールを満喫し帰国した後も興味は尽きず、巧さんは製菓や調理の経験から自然とビールの醸造に意欲を持つように。日本各地の醸造所に問い合わせて福岡のブルワリーで職を見つけ、ブルワーとして4年ほど就業。店を手伝ってほしいと呼ばれて東京に戻り、「パティスリーウルソン」の運営に携わった後、ウルソンの洋菓子を販売する洋菓子店×クラフトビールの店として「Kaiser Chick」を開業しました。
店内はヨーロッパのビアホールをイメージ
「Kaiser Chick」の内装は、ヨーロッパのビアホールをイメージしたデザイン。「温かみがあって、あまり気取り過ぎない感じで、とデザイナーさんにお願いしました」と祐里さん。
入居した物件が予定していた以上に広く、天井もたまたま高かったのだそうですが、造りからしてビアパブやバーというより“ビアホール”という呼び方がしっくりくる内観です。
自社醸造の定番ビールは6種類
巧さんが目指しているのは、モルティーで、麦の香ばしさ・甘さが味わえるビール。ホップのキャラクターが立っていたとしても、麦芽の風味が感じられる仕上がりを志向しています。
ビールだけで楽しんでももちろんいいけれど、食事でもケーキでも「何か召し上がりながら、食中酒として飲めるビール」をメインに造っています。
Kaiser Chickの定番ビールは、6種類（2024年7月現在）。
巧さんがブルワーを目指すきっかけとなった旅先、ドイツ・デュッセルドルフは、褐色のビール・アルト発祥の地で、アルトを造る醸造所がひしめく“アルトの街”。Kaiser Chickの定番ビールの１つはそのアルト（「Chick Alt」）で、ホップも麦芽もドイツ産にこだわっています。麦の風味・香ばしさや甘味があって、程よく苦味もあるバランスの取れた味わい。
「アルトには個人的に思い入れがあります。シンプルなスタイルですごく難しいですが、目指している味わいに少しづつ近づけているかなと思います」（巧さん）
同じくドイツ発のスタイル・ケルシュも「Chick Kölsh」として定番にラインナップしています。
他に、柑橘が穏やかに香る「Chick Pale Ale」（Pale Ale）、オーツ麦（＝燕麦、燕は訓読みするとつばめ）を使いやや濁った液色の「つばめ」（Oats Pale Ale）、巧さんのお父さんの好みの味を形にした、苦味強めの「Chef」（Strong Ale）、巧さんのお父さんの出身地・沖縄産の黒糖を使った「Tarama」（Brown Sugar Porter）もレギュラー銘柄で、定番6種類は先々ボトルでの販売も始まります。
※タップリストは随時変わります
「Kaiser Chick」は、店内でドラフトビールを8Tap提供。そのうち6Tapは自社醸造ビールで2Tapはゲストビールです（2024年7月現在）。今後、季節限定醸造のビールを含め自社醸造ビールのラインナップが増えていっても、ゲストビールは引き続き繋いでいく予定。
ケーキ×ビール、ペアリングを楽しむ！
店内でイートインするなら、「Kaiser Chick」ならではのケーキとクラフトビールのペアリングを楽しみたいですよね。
どんな組み合わせがおすすめか、巧さんの推しを聞きました。
オーソドックスなチョコレートケーキ「ショコラティーヌ」は、「Chick Alt」や「Tarama」のような濃色のビールと合わせるのが無難ですが、「Chick Pale Ale」や「つばめ」のようなフルーティーなビールにも合い、柑橘の香りのするビールと合わせて、ショコラオランジェのような味わいを楽しむのもおすすめ。
※写真のビールは本文で紹介している銘柄とは別のゲストビール
人気のシュークリームには、ゲストビールとしてしばしば繋いでいる島根のブルワリー・松江ビアへるんの「縁結麦酒スタウト」（Milk Stout）が合うというお客様からの口コミも。
「意外な組み合わせなのに相性が良かったり、逆に、合いそうなのに全く合わない組み合わせもあります。ほかのビールのお店に比べてケーキの種類が多いですし、いろいろ試して楽しんでいただきたいですね」（巧さん）
フードメニューも、おつまみからガッツリ食事系まで充実
フードはヨーロッパの郷土料理をアレンジした一品料理など、メニューが豊富。
なかでも人気なのは、塩漬け豚。塩漬けした豚のすね肉を煮込んだドイツ料理・アイスバインをアレンジして、すね肉の代わりに脂の少ないもも肉を使った一皿。
写真提供：Kaiser Chick
他に、薄くのばしたお肉に衣をつけて揚げたシュニッツェル、インド風のスパイシーなカレーもリピーターが多い人気メニューです。
醸造所で落語会？ビールを飲みながら落語を鑑賞
「Kaiser Chick」では、毎月第一月曜日に三遊亭遊子さんの落語会を開催しています。実は、巧さんと遊子さんは高校の同級生。高校卒業後二人とも東京から関西に移り、学生時代を一緒に過ごした仲なのだとか。
落語会は木戸銭プラス1オーダー制。クラフトビールの醸造所で落語が鑑賞できるイベントは他に無いかも。スペシャルゲストが登場する回もあるようですので、スケジュール等の詳細はSNSで確認してください！
クラフトビールとおつまみ、食事とデザートも！フルコースで楽しんで
「Kaiser Chick」は自家醸造のクラフトビールに合わせて、おつまみ的な一品からガッツリした食事メニュー、そして焼き菓子やケーキまでオーダーできるので「フルコースで楽しんでほしいです」と巧さん。
ビールはプラカップでテイクアウト可能で、焼き菓子・ケーキももちろん持ち帰りできます。味スタでのスポーツ観戦やイベントの前後に立ち寄るのも◎。パティシエや料理人の経験を踏まえたブルワーが造るクラフトビールを味わってみては？
「Kaiser Chick」（カイザーチック）
〒182-0036
東京都調布市飛田給1-26-1 1F
営業時間：11:30〜22:00
ランチ11:30〜（ラストオーダー15:00）
グランドメニュー15:00〜（フードラストオーダー21:00・ドリンクラストオーダー21:30）
定休日：火曜
※営業時間等は2024年7月現在の情報です。お出かけ前にSNSで最新情報をご確認ください。
【関連サイト】
Kaiser Chick インスタグラム
のび子
最新記事 by のび子 (全て見る)
