夏といえば、ビール。乾いた喉を潤す最高の飲み物。
冬になると冷たいビールは敬遠されがちだが、冬にぴったりのビールだってもちろんある。黒ビールのスタウトやポーターは寒い冬にチビチビ飲むのがオツな飲み方だ。そして、スモークビールもそのひとつ。
グラスを鼻に近づけると漂う香りは、まさかの燻製の香りだ。
煙で燻した麦芽を使うビールがスモークビール。中でも最も有名なものはドイツ・ハンブルク産まれのラオホ。サクラやヒッコリーも燻製の際に使われるが、ブナの木で燻製した麦芽を使うビールをラオホと呼ぶ。アメリカではスモークビールやスモークエールと呼ばれている。
ラオホ誕生のいきさつは、その昔、大麦を発芽させた後、熱を加えて成長を止めていた。その際に窯で火にかけて熱風を当てる工程で、薫香が麦芽に移ることがあった。その後、上質な窯が普及し、麦芽が燻されることはなくなったがドイツのハンブルク地方では、燻しながら作る方法を受け継いだ、伝統的なビールがラオホだ。
日本ではあまり見られないスモークビールと醸造しているブルワリーを紹介しよう!
富士桜高原麦酒「ラオホ」
ドイツ語で煙という意味のラオホ。燻製した麦芽を使用し下面発酵で造られるビールである。
本格的なジャーマンスタイルを作ることで有名な富士桜高原麦酒。定番ビールとしてラインナップしているこのラオホ。アルコール度数5.5%。IBU 21。ビールの仕込み水にはミネラルバランスに優れた富士山の伏流水を使い、麦芽はブナの木でスモークされた麦芽を使用した燻製ビールだ。
2012年にWorld Beer CupとWorld Beer Awardsをダブル受賞。食欲をそそるようなスモーキーな香りと、受賞の実績を持つほどの上品さも併せ持つ1杯。
ブルワリー名 | 富士桜高原麦酒 |
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所在地 | 〒401-0301 山梨県南都留郡富士河口湖町船津字剣丸尾6663-1 |
電話番号 | 0555-83-2236 |
ウェブサイト | https://www.fujizakura-beer.jp |
うしとらブルワリー「KEMURI」
2017年11月7日に、うしとらブルワリーよりリリースされた「KEMURI」。
スタイルはスモークポーター。アルコール度数は5.5%。IBU32。
2014年に設立されたうしとらブルワリーの3周年記念と200バッチ目を記念して、「スモーキンビリー」という名のラオホを8月に醸造。好評につき再度燻製麦芽を使い、スモークポーターを醸造した。しっかりとした薫香はもちろん、強いボディとロースト感。
醸造長の植竹さんは、ブルワーになるかミュージシャンになるか迷ったほどの音楽好きのため、ビール名は、同名のスカパンクバンドからのインスパイアもあるようで、ブルワリーから届くビールのインフォメーションの最後には歌詞が引用されていた。
ブルワリー名 | うしとらブルワリー |
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所在地 | 〒329-0402 栃木県下野市笹原142-3 |
電話番号 | 0285-39-7300 |
ウェブサイト | http://blog.ushitora.jp/ |
所沢ビール「Smokin’」
2015年にブランド名を「ベルビア」から「所沢ビール」へと変更。地元所沢で栽培する麦を育てて、ビールを造ることを目指す団体「所沢麦酒倶楽部」がきっかけとなっている。所沢市初のクラフトビールとなった。
「Smokin’」のスタイルはウォルナットスモークエール。ウォルナットはくるみの意で、鬼ぐるみの樹で自家燻製したビール。ブルワリーで燻製麦芽を仕入れたのではなく、鬼胡桃の樹で麦芽を自家燻製したという驚きのビールがスモーキンだ。アルコール度数は5%。IBUは8。この「IBU 8」からもわかるように、スモークビールの中では比較的柔らかで、飲みやすい。はじめに薫香がさっと吹き抜けていき、バランスも良く、くるみの樹のせいなのか優しい穏やかなスモークエールに仕上がっている。
ブルワリー名 | 所沢ビール |
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所在地 | 〒359-0004 埼玉県所沢市北原町866-17 |
電話番号 | 04-2992-0501 |
ウェブサイト | http://tokorozawabeer.com |
どのスモークビールを飲んでも、はじめにガツンとくる燻製の香り。そのとき頭に浮かんでくるのは、やはりフードとのペアリングだ。チーズや生ハムなどと絶妙なコンビネーションを発揮し、牡蠣やスモークサーモンなどと合わせると、もはやダブル主演といったところだろうか。
この辺りが、まさに冬のビールといえよう。