日本でも徐々に人気が高まりつつあるクラフトビールですが、普段からビールを飲む方の中にも「クラフトビールって何だろう?」と思われている方もまだまだ多いのではないでしょうか。そこで、ここではクラフトビールに関する基本的な知識についてご紹介したいと思います。
クラフトビールとは?
クラフトビールとは、一言で言えば「小規模かつ大手から独立したブルワリー(ビール醸造所)によるビール」のことです。
クラフトビール大国であり発祥国である米国では、 クラフトビール業界団体のBrewers Association(BA)が、米国のクラフトブルワーを下記のように定義しています。
- Small(小規模であること):年間製造量が600万バレル(約72万キロリットル)以下
- Independent(独立していること):酒類関連企業による株式保有比率が25%未満
- Brewer(事業としてビールをつくっていること):当局の許可を得て日々醸造している
日本における業界団体の全国地ビール醸造者協議会(JBA)では「クラフトビール(地ビール)」を以下のように定義しています。
- 酒税法改正(1994年4月)以前から造られている大資本の大量生産のビールからは独立したビール造りを行っている。
- 1回の仕込単位(麦汁の製造量)が20キロリットル以下の小規模な仕込みで行い、ブルワー(醸造者)が目の届く製造を行っている。
- 伝統的な製法で製造しているか、あるいは地域の特産品などを原料とした個性あふれるビールを製造している。そして地域に根付いている。
注意したいのは、BAの定義はクラフトビールではなくクラフトブルワーであり、JBAの定義も「クラフトビール(地ビール)」と書かれているものの中味はクラフトブルワーの在り方についてです。しかし大した問題ではありません。なぜなら、「クラフトブルワーがつくるビールはクラフトビールである」という命題は必要十分条件を満たしていることが自明だからです(具体的に言えば、「クラフトビールであるならばクラフトブルワーがつくっている」という命題も成り立つ)。もし満たさないのであれば、クラフトブルワーまたはクラフトビール、あるいは両方の名付け方が適切でありません。違う名前を付ければいいでしょう。
また、クラフトビール大国・発祥地である米国の業界団体による米国内の定義は妥当として、日本の業界団体は組織率(全ブルワリーのうち加入している割合)が2割以下であり、その定義について「賛成多数ではない」と見られるかもしれません。しかし、米日いずれの団体も、クラフトビール事業を振興、具体的にはロビー活動を通じて小規模ブルワリー向けに減税を獲得している点で共通しています。減税(軽減措置)は法律で定められていることなので、加入していなくてもその恩恵を受けます。そしてロビー活動をするにあたり、「どんなブルワリーを減税対象にしたいのか」、すなわちクラフトブルワリーの定義がないことには、実施することができません。
つまり、日本の定義は法というかたちで普遍性につながっており、上記を見比べれば分かるように定義の第1、2項目は小規模と経営の独立ということでセンスを同じくしており、理屈と実行性から成る説得力を持っています。もちろん、日本の定義の第3項などについて異論もあるでしょうし、異論を考える自由があります。代案を出して議論をし、よりよい定義を作るのは望ましいでしょう。理屈と実行性から成る説得力を持った代案が期待されています。
クラフトビールの楽しみ方
こだわりのビール職人によって造られたクラフトビールの魅力は、その楽しみ方の豊富さにあるといえるでしょう。
クラフトビールが生まれ、存続し、増えてきたことによって、さまざまな銘柄が市場に現れ、消費者は多様性を享受できるようになりました。また、「小さなままでいて目の行き届く範囲で責任あるものづくりをする」という姿勢は、資源は有限なのに無限に成長しようとする「古くて限界が見えている資本主義」の解決策になるかもしれません。またその結果、地域に密着し、地域経済に貢献し、地域のコミュニティーを形成する例が少なくない点も見逃せません。プロでなくても、特にウェブを駆使し、クラフトビールを通じて世界中の愛好者とつながれるのも、難しいことではありません。
そして一般に日本で飲まれているラガービールを含め、クラフトビールと呼ばれるビールそのものの魅力は代えがたいものがあります。色味は見慣れた黄金色から艶のある黒色のビールまで。味わいは口当たりが軽く飲みやすいものから、苦味を出したパンチのあるビールまで。アルコール度数は低いものもあれば、驚くほど高いビールまで。少量生産が可能にしたその多様さこそが、クラフトビールの醍醐味です。その一つ一つの違いを五感を存分に使って楽しんでみましょう。
視覚
光り輝く黄金色から漆のような美しい黒色まで、ビールの外観を楽しむことができます。また、ボルトや缶に入ったクラフトビールの場合は、パッケージにも注目してみてください。個性豊かなパッケージからオシャレなものまで、思わずパッケージでジャケ買いするのも楽しみの一つです。
嗅覚
鼻からアロマ(香り)を感じてみましょう。ホップの華やかな香りから、柑橘系のフルーツの香りやチョコレートのような甘い香りまで、今でには味わったことのない香りのビールに巡り合うことができます。
味覚
口に含んだ時のフレーバー(味)は、さっぱりとして飲みやすい味から、ホップが効いた苦味が強いものも、そして高級ブランデーのような芳醇な味わいがするものまで、その幅広さは同じビールとは思えません。
触覚
舌が触れた時の感触も口当たりの軽いものから、滑らかな感触のビールもあれば、少しピリッと感じるものもあります。
聴覚
ビールグラスにビールを注いだ時の音も楽しみの1つです。炭酸が弾けるように、ワインのようにしなやかに流れるように注がれるビールも。飲む前にその違いを感じるのもクラフトビールの楽しみです。
まとめ
ブルワー(醸造家)のこだわりに思いを馳せ、五感を存分に発揮して、肩肘張らずに気軽に楽しむのがクラフトビールです!1つ1つに特徴があるクラフトビール。ぜひ、好みのクラフトビールを見つけてみましょう!
【参照ページ】Craft Brewer Definition – Brewers Association
【参照ページ】「クラフトビール」(地ビール)とは « 全国地ビール醸造者協議会