「フルーツビールって、甘すぎたり、人工的な香りがするから苦手」そんなイメージから、フルーツビールを敬遠している方はいませんか?今回は、ふだんフルーツビールを飲まない方や初心者の方に、ぜひおすすめしたい海外・国内の上質なフルーツビールをご紹介します。
チェリーは代表的な存在
ビールにフルーツをかけ合わせるなら、チェリーを使うのが王道と言えるでしょう。特に有名なのは、ベルギー発祥の「クリークランビック」(チェリーを浸漬したランビック)です。伝統的なフルーツランビックとして、スタイルを確立しています。また、18世紀ドイツのビール文化について記された書物にも、サクランボビールが登場しています。さらにヨーロッパ各地でも、古くから果物をビールに漬け込む技術があり、なかでもチェリーはよく使われていたことがわかっています。
あざやかなルビー色のビール、惹かれますね。現在でも、チェリーを使ったビールは各社からリリースされています。特に有名なベルビュークリークは、ご存じの方も多いかもしれません。
Love Among The Ruins / Thornbridge Brewery
ラベルには「モレロチェリー」を使用と記載されています。見た目は、アメリカンチェリーに似たチェリーの一種です。フルーティな中に、かすかな酸味が感じられる香りは、ブルゴーニュワインの樽で熟成したサワーレッドエールならではの特徴です。際立つチェリーの果実味とワインビネガーのようなきりりとした酸味、そこへ樽熟成による複雑な風味も加わり、重厚な味わいを実現しています。きめ細やかな口あたりと繊細な泡、赤ワインに似たこっくりとした色合いは、時間をかけて味わう一杯に最適です。
こちらのビールは英国の人気ブルワリーであるソーンブリッジが手がけています。おなじみの女神ラベルではないため見慣れない方もいるかもしれませんね。正統派ながら革新性をあわせもち、常に完成度の高いビールを生みだし続ける同ブルワリーが、現代的な樽熟成サワーエールをつくりたかったという意欲作です。
ソーンブリッジのビールについては、こちらの記事もどうぞ。
人気高まる南国果実
ラズベリーやブルーベリーなどのベリー類も、フルーツビールのポピュラーな材料です。そして、ビールとの相性が良い柑橘類も人気の高い材料です。最近は、マンゴーやパイナップル、パッションフルーツ、グァバなど、南国の果実を採用したビールが豊作の傾向にあります。陽射しがとびきりまぶしい夏の日に似合います。
Pineapple Mana Wheat / Maui Brewing Company
こちらはパイナップルジュースを使用しています。甘いのでは、と思われるかもしれませんが、パイナップルをビールに仕上げたものの多くは甘さひかえめです。ときおり現れるほのかなパイン風味を逃さずにお楽しみください。こちらのビールのように、ウィート(小麦)を使うビールをベースとして、トロピカルフルーツを組み合わせたタイプは、フルーツビール初心者の方にもおすすめです。なめらかな口当たりにトロピカルフルーツの風味が引き立ちます。
(参照:Maui Brewing Compan)
Apassionada / Edge Brewing Barcelona
パッションフルーツの果実味はじけるビールです。トロピカルな香りにはじまり、ベルリーナヴァイセがベースなので甘すぎず、ボディもかろやか。気分を上げる華やかな液色にもご注目ください。このふんわりと赤みがかった色味はハイビスカスによってもたらされたもので、トロピカルムードを盛り上げます。少し温度が上がってもおいしさが続くので、是非お気に入りのグラスに注ぎ、眺めながら味わってください。
(参照:Edge Brewing Barcelona)
特産物を使ったビールづくり
フルーツビールのルーツをたどってみると、実は発祥国は明らかになっておらず、製法の決まりごとも特にないようです。ブルワリーが個性あるビールをつくりたいとき、自由度の高いフルーツビールはとても良い素材です。地元の素材を生かしたフルーツビールは、国内にも数多くあります。たとえば宮下酒造の独歩マスカットピルスは岡山県産のマスカット天然果汁を、箕面ビールのゆずホ和イトは箕面市名産の止々呂美の柚子(皮)を使用しています。
浜なしゴーゼ / TDM1874ブルワリー
「浜なし」という梨をご存じでしょうか。浜なしは、梨づくりが盛んな横浜市のブランド果実です。収穫された浜なしは、当日中に地元の直売所で販売されるためスーパーや青果店に出回るチャンスはほとんどなく、さらに味の良さや品質の高さから贈答品としても人気です。生産が追いつかないほど入手困難なため、幻の梨と呼ばれています。
そんな希少な浜なしを、TDM1874ブルワリーでは、なんとビールに使用。「地元とともに成長したい」というブルワーの気持ちがビールづくりに熱く反映されています。クリアな液色は一見するとピルスナーのようにも見えますが、実はゴーゼスタイル。ただし、ゴーゼ特有の酸味や塩気はそれほど強くなく、飲み口は爽快です。浜なしとゴーゼそれぞれの美点が調和し、甘さのないドライな味わいが、のどを潤します。なかなか出会えないビールなので、見つけた方は幸運。ぜひ飲んでみてください。
(参照:TDM1874ブルワリー)
九州CRAFT日向夏 / 宮崎ひでじビール(旧:宮崎日向夏ラガー)
「日向夏」は宮崎県原産の柑橘です。外果皮と果肉の間に白く分厚いワタ(内皮)があり、このワタの独特な食感と甘みを生かす食べ方があります。冷蔵庫でよく冷やし、外果皮だけを削ぐようにむき、ワタをなるべく多く残すのがコツです。甘くやわらかなワタと一緒に果肉をほおばると、ジューシーな酸味が引き立ち、格別の美味しさをあますことなく味わえます。
九州CRAFT日向夏は、生産量日本一を誇る宮崎県産日向夏を使ってつくられた贅沢なラガーです。ほのかに香る日向夏がホップと相性抜群で、爽やかな飲み心地が特徴です。宮崎ひでじビールは、質の高いラガービールを醸造することで知られており、いつ飲んでも最高品質の味わいを楽しめます。以前は「宮崎日向夏ラガー」の名で愛され、昨年より「九州CRAFT日向夏」に生まれ変わりました。九州CRAFTシリーズには、ほかにもいくつかのフルーツビールがありますが、日向夏は通年販売しています。ひと味ちがうラガーを常備するなら、まず選びたい逸品です。
(画像引用元/参照:宮崎ひでじビール)
ビアイベントでフルーツビールを満喫
埼玉県で年に2回開催される「けやきひろば ビール祭り」にて、昨年、私はHyappa Brewsの限定醸造品「monkey business」を楽しみました。バナナを使った、とてもめずらしいビールでした。
全国各地で行われるクラフトビールイベントでは、各ブルワリーの「限定ビール」が必見です。ふだんは味わえないフルーツビールが登場することもありますので、クラフトビールイベントにお立ち寄りの際は、ぜひチェックしてみてください。
ブルワリーによっては画像のような「飲み比べセット」が用意されていますので、気になるビールを少量ずつ気軽に試したい方におすすめです。
新しい季節は、味覚の冒険をするチャンス!まだ飲んだことのないフルーツビールにあなたも出会ってみませんか?
【参考文献】
ランビック ベルギーの自然発酵ビール/著者:山本高之/技報堂出版株式会社/2011年6月30日初版発行
新しいクラフトビールの教科書/株式会社プレジデント社/2015年6月15日発行・発売
Mariko
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