【阿佐ヶ谷】タコス×クラフトビール!高円寺アンドビールの新店「olla」(オジャ)、旅する店主のメキシコ愛

クラフトビールブルワリー・アンドビールが、2023年5月、高円寺のタップルームに続く新店「olla」(オジャ)をオープンしました! ロケーションは高円寺の店舗からも近い東京都杉並区・阿佐ヶ谷。醸造の新拠点、山梨の勝沼で仕込んだクラフトビールと、生地から手造りの具沢山タコスが味わえるお店です。

タコスといえばメキシコ料理。店内にはメキシコを想起させるカラフルな雑貨やサボテンが飾られ、カトラリーやお皿もメキシコ産。なぜメキシコ推しなのか? 代表の安藤耕史さんに、メキシコの旅の話や勝沼で取り組むバレルエイジドへの想いを聞きました。

タコス×クラフトビール!阿佐ヶ谷「olla」

「olla」は、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩約3分ほど。駅の北口に延びる大通り・中杉通りから1本入った松山通り沿いにあります。高円寺駅と阿佐ヶ谷駅の中間くらいにあるアンドビールのタップルームから「olla」までは、酔い覚ましがてらお散歩するのにちょうど良いくらいの距離。

阿佐ヶ谷olla
「olla」が店を構える松山通りは、個性的な飲食店や雑貨店などが軒を連ねるスポット

アンドビールは、醸造家の安藤祐理子さんとおもに料理を担当する安藤耕史さん夫婦が2017年にタップルームを開業、2018年に醸造をスタートしたブルワリー。タップルームはカレーやスパイス料理が楽しめる飲食店としても人気で、地元高円寺や中央線沿線を利用するお客様を中心に連日にぎわっています。

2021年春にはワインの産地として知られる山梨県甲州市・勝沼に新醸造拠点を構え、ビールのエイジングに着手。ワイン醸造で使った樽を譲り受け、バレルエイジドビールを製造しはじめました。

阿佐ヶ谷olla
アンドビールや「olla」を運営する合同会社カンパイ日和 代表の安藤耕史さん(右)。「olla」店長の吉田みのりさん(左)

ブルワリーとしては5年目、タップルームとしては今年で6年目となるアンドビール。タップルームのスタッフはそれぞれの得意料理を追求してスキルを発揮し店を任せられるようになり、勝沼の醸造所が稼働してビールの醸造量がこれまでの倍以上になったこともあって、「お店がもう1つあってもいいかなと考えていました」と耕史さん。

「勝沼で造っているバレルエイジドビールは時間をかけて熟成させているお酒です。グビグビ飲むというより、味わって飲むビール。もう1つ店をやるなら高円寺の店舗とは違う楽しみ方ができるように、ストーリーがあるお酒をゆっくり飲めるお店にしたいと、ぼんやりとイメージしていました」(耕史さん)

そんな中、現物件で営業していた知り合いの飲食店の移転が決まり、以前からこの場所を気に入っていた耕史さんが出店を決断。入れ替わりでお店を構えることになりました。

阿佐ヶ谷olla店内
「olla」店内はカウンターのほかにテーブル席も。メキシコのカラフルな刺繍や小物、サボテンなどが飾られている

店名の「olla」(オジャ)は、スペイン語(メキシコで一般的に使われている言語)で、鍋・寸胴鍋の意味。カレーやビリヤニなどのしっかりした食事系メニューが人気の高円寺のお店とはひと味違い、「olla」では、メキシコ料理のタコスをお酒に合うようにアレンジした“おつまみ系タコス”や一品料理を提供。

お酒はアンドビールのクラフトビールをはじめ、山梨県産を中心にした国産ワインがグラスでオーダーでき、メキシコのお酒・メスカルも飲めます。ナチュラルでウッディーな高円寺の内観に比べて、「olla」の店内はサボテンがあったりカラフルな小物が飾られていたりとメキシカンなムード。

タコス、メスカル、サボテンと、メキシコを感じる要素が満載の「olla」。

メキシコ推しなのには理由があるようで……。

学生時代からの壮大な伏線回収!再びメキシコへ

耕史さんがはじめてメキシコを訪れたのは、世界を旅していた学生時代。ワーキングホリデーでカナダに滞在しながら近隣各国を巡っていると、トロントにあったバイト先のお店が突然クローズし、ピンチに。仕事がなくなった! お金がない! とSNSに書き込むとメキシコ人の知人が連絡をくれて、メキシコ中西部のミチョアカン州にある村でしばらくホームステイさせてもらうことになりました。「ここに日本人が来るのははじめてだと言われました」と耕史さん。

メキシコには「Mi casa tu casa」(私の家はあなたの家)という言葉があるほど、懐の深い気風があるそう。商店を手伝ったり料理を作ったりしながら「いつまでもいていいよ」と言われるままずるずると暮らすこと約3か月。メキシコでの生活は耕史さんにとって特別なものでした。

「現地の人たちはみんないい人で。そこで僕は、人柄すら変わりました。もっとネクラだったはずなのに……」

アンドビール
旅が好きな耕史さん。ふらりと行ったメキシコにハマり想定外の長期滞在をすることに
阿佐ヶ谷olla
「olla」店内に飾られているメキシコの雑貨。カラフル!

メキシコの歴史ある食文化は「メキシコの伝統料理」として2010年にユネスコの無形文化遺産に登録され、耕史さんが滞在していたミチョアカン州はまさにその登録エリアでした。耕史さんは帰国後メキシコの伝統料理を卒論のテーマに決め、フィールドワークで再びメキシコへ。大学卒業後も仕事をしながら各国を旅し、メキシコを再訪しました。メキシコ料理の代表的なメニュー・タコスの店をやりたいという気持ちは耕史さんの中にずっとあり、長年の想いを「olla」で実現した、というわけです。

阿佐ヶ谷olla
メキシコで仕入れてきたホーローのお皿
阿佐ヶ谷olla
カトラリー類もメキシコのもの

今回店をオープンするにあたって、耕史さんはこれまでの人生で通算5回目のメキシコ行きを決行。約1か月間滞在し、調理道具や食器・カトラリーを仕入れたり、現地でトルティーヤを焼きまくってきました。マイクロブルワリーも5、6軒巡り、メキシコのクラフトビールシーンを体験してきたそう。

生地から手造り!具材たっぷり、お酒がすすむタコス

「olla」のタコスは本場メキシコ仕込みでありながら、現地の味をそのまま再現するのではなく、お酒に合うよう耕史さんがアレンジしたメニューになっています。

阿佐ヶ谷olla

タコスとは、トルティーヤに具材を乗せた料理のこと。「olla」のトルティーヤは生地から手造り! トウモロコシの粉をこねた生地を、メキシコで調達してきた専用の調理器具で伸ばし、焼きます。その日提供する分のトルティーヤはその日に焼くのが基本。焼きあがったトルティーヤからはトウモロコシの香りが立ち、食欲をそそります。

タコスの作り方
トウモロコシ粉をこねた生地を寝かせた後、小分けにし(左上)、メキシコで入手した専用のプレス機で伸ばす(右上・左下・右下)
トルティーヤを焼く
専用の鉄板で焼く!

タコスのメニューは、豆のペーストを塗ったシンプルな「フリホーレス」や、ラードで煮たやわらかい豚肩ロースとトマト・玉ねぎ・パラぺーニョのサルサ(ソース)を合わせた「カルニータス」などの定番メニューと、日替わりのメニューがあります。

タコス
定番タコスのひとつ「海老のフリット」

この日オーダーしたのは定番の「海老のフリット」。サクッと揚がった海老のフリットに、紫キャベツのマリネ、マヨネーズベースのチポトレ(唐辛子を燻製させた香辛料)を使ったソース、パクチーが添えられています。ライムを絞ってさわやかさをプラスしても◎。ビールにもワインにも合い、ボリューム感もある一品。

おつまみとして食べやすいよう、「olla」のトルティーヤはメキシコの屋台でよくみられる小ぶりなサイズ。しっかり食べたい時やシェアする場合には追加料金でトルティーヤを2枚つけるのがおすすめ。

トスターダ
「マッシュルームペースト&もろこし」のトスターダ

トルティーヤをパリッと揚げた、トスターダのメニューも。こちらもアボカドディップをのせたり、季節の素材を具にしたり、定番と日替わりのメニューがあります。

この日は、季節の素材を使った「マッシュルームペースト&もろこし」のトスターダをオーダー。焼いて細かく刻んだ旬の甘いトウモロコシが、キノコのペーストやトマトと一緒にトスターダの上に盛り付けられていました。

タコスやトスターダを中心に、一品料理もある
※メニューは日替わり

タコスやトスターダのほかに日替わり・季節替わりの一品料理もあり、〆めに食べたい丼や麺料理が提供されることも。

ビールは4TAP、山梨のワインやメキシコのメスカルも!

「olla」で提供される樽ビールは4種類。取材時(2023年6月)のラインナップはすべてアンドビールの自社醸造ビールで、高円寺の醸造所で造った「Jump to Belgium」(マンダリンオレンジベルジャン)と「Bailey-A Bell Saison」(フルーツセゾン)、山梨で造った「Thiol Burst」(IPA)、「CITRUS SUMMER」(Sour Hazy IPA)。
※銘柄は随時変わります

アンドビール
アンドビール「Thiol Burst」(IPA)

この日1杯目に飲んだのは、「Thiol Burst」(IPA)。白ワインや柑橘の香りがする化合物“チオール”が発生する酵母を使った、飲みごたえのあるIPA。

「Bailey-A Bell Saison」(フルーツセゾン)は昨年秋に収穫した山梨県産のブドウを高円寺に持ち込み、高円寺の醸造所で造ったビールと合わせてステンレスのタンクで8か月ほど寝かせた、高円寺×山梨のハイブリッドなビール。

「今はいろいろ混ざり合っているんですが……『olla』ではたぶんこの先、基本的に山梨で造ったビールを出していくと思います」(耕史さん)

阿佐ヶ谷olla
取材時のタップリスト。高円寺と山梨の醸造所で造ったアンドビールの自社醸造ビールと、山梨県産のワインを提供。※2023年6月撮影。ライナップは随時変わります

アンドビールとゆかりの深い山梨県の生産者のワインも飲めます。この日は「マルサン葡萄酒」、「キザンワイン」、「ドメーヌ・オヤマダ」のワインがグラスで提供されていました。メキシコのお酒メスカルも数種類取り揃えています。

ワイン樽を使ったバレルエイジドビール、ついにリリース!

もう1杯はボトルで。アンドビールのバレルエイジドビールのシリーズ「ROUND TRIP」の第1弾、2023年6月に初リリースになった「Bailey-A Trip」を。

アンドビールのバレルエイジドビール
アンドビールROUND TRIPシリーズ#001
「Bailey-A Trip」(Barrel Aged Fruit Saison)

「Bailey-A Trip」は、赤ワイン醸造用品種のブドウ“マスカット・ベーリーA”を使ったセゾン。ブドウの果汁と皮・種を発酵させ、ビールと、ワイン醸造では禁忌とされる野生酵母・ブレタノマイセス酵母とともに赤ワイン樽に入れて熟成。シャンパン酵母を加えて瓶詰めし、瓶内2次発酵させてガスを付与しています。熟成期間は実に15か月。ブドウの風味や香りが豊かで、ワインのような、でもやっぱり麦とホップを感じる味わい。ゆっくりじっくり飲みたくなる1本。

「Bailey-A Trip」は「olla」店内で飲めるほか、アンドビールのオンラインストアで販売中です(2023年7月現在)。

高円寺と阿佐ヶ谷をハシゴするのも◎

高円寺のタップルーム「アンドビール」と阿佐ヶ谷「olla」は、耕史さんがプランした通り全くコンセプトが違うので、「アンドビール」でしっかりカレーを食べた後に「olla」でゆっくり1杯というのも良し、「olla」でおつまみとお酒を楽しんでから、〆に「アンドビール」でカレーを食べるのも良し。

阿佐ヶ谷olla

トウモロコシの香ばしい香りが漂うタコス×クラフトビールを、ぜひ堪能してみて!

※文中にある料理やビールのメニュー、タップリスト、価格などの情報は2023年6月時点の情報です。

【関連サイト】
アンドビールオフィシャルサイト
アンドビール(ブルワリー) インスタグラム
アンドビール(タップルーム) インスタグラム
ollaインスタグラム

【販売サイト】
アンドビール オンラインストア

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のび子

日本文化にまつわる分冊百科の編集担当を経て、料理専門誌編集部へ。食のサステナビリティ、クラフトビールが生み出す地域のコミュニティ・資源循環を取材。超少食だが酒はわりと強い。

よなよなの里