スタイルが多様なクラフトビール。いろいろな味わいを試してみたい時、国内・海外のクラフトビールを幅広く扱う、クラフトビール専門通販サイトを利用するのが便利ですよね。通販サイトは数々ありますが、せっかく造り手のこだわりが詰まったクラフトビールを買うならサイト選びにもこだわりたくなりませんか? そこで「My CRAFT BEER」編集部はクラフトビール専門通販サイトを運営する「中の人」に取材。どんな店主がどんな思いでビールを販売しているのかレポートします。
今回お話をお聞きしたのは、岐阜県を拠点に営業しているエールビール専門の通販サイト「一期一会~る」の阪本真記さんです。サイト立ち上げのストーリーやお店の特徴、人気のビアスタイル3種のなかでセレクトした店主の推しビールもご紹介!
ビールが好き過ぎる店主が「一期一会~る」を開業するまで
「一期一会~る」は、岐阜県岐阜市を拠点に営業するクラフトビール専門のお店。エールビールに特化した品ぞろえで、国内外のブルワリーの商品を幅広く扱っています。
店主の阪本真記さんはもともとお酒が好きでしたが、一般的に飲まれているラガービール(ピルスナー)の味わいが苦手。飲食店で自分から積極的にビールをオーダーすることはなく、お付き合いで飲む程度でした。
ところが横浜で会社員をしていた十数年前、サークル仲間の後輩にすすめられてベルギーのトラピストビール「シメイ レッド」を飲むと……「シェリーのような、僕が好きなハードリカーの系統に近い味わいで、すごくおいしいなと思ったんです」(阪本さん)。使用する酵母や発酵方法がラガービールとは異なる、エールビールの存在を知り、それ以来ベルギービールにはまりました。
その後、会社の先輩に連れられて行った店でヤッホーブルーイングのIPA「インドの青鬼」を飲み、強烈な苦味に衝撃を受けて、今度はIPAに夢中に。セゾンなど他のスタイルのエールビールも飲むように。
転職を機に岐阜県に移ってからは、岐阜県内で開かれるビアフェスやバーに通い、IPA好きが集まるSNSのコミュニティなどに参加して情報を収集しました。
「SNSで紹介されるのはほとんどが海外のクラフトビールでした。こんなビールいったいどこで売っているんだろうと思いながら投稿を眺めていましたね」(阪本さん)。
検索して、ネット通販でビールを買ったり、わざわざビールを買うためだけに名古屋に遠征することもたびたび。阪本さんは熱狂的なプロ野球ファンでもあり、大阪ドームで野球観戦をするときには、クラフトビール好きには知られた酒販店「マルホ酒店」でビールを買うのがルーティーンになりました。
会社を退職して独立することになった阪本さんは「岐阜県内で自分の買いたいビールを買えるところがない。だったら自分でつくろうか」と、2018年12月、当初は副業としてクラフトビールの販売をスタート。小規模で、最小限の機能で運営する酒販店にするため通信販売を選び、3畳ほどのスペースに業務用の冷蔵庫を1つだけ設置して、エールビールに特化したサイトとして営業を開始しました。
なぜ一期一会?クラフトビールあるあるから生まれたサイト名
店名を決めるため、思いつく言葉をノートに書き出す中で出てきた言葉が「一期一会」。
クラフトビールは大量生産されていないがゆえに、同じ定番ビールでもその時々のレシピなどに揺らぎがあって、一度飲んだビールと完全に同じ味に再び出会えるとは限りません。
「このビールを飲もう、と決めてビアバーやボトルショップに行っても“さっき売り切れちゃいました”ということもよくあります。クラフトビールあるあるですよね。それで、代わりにおすすめしてもらったビールがめちゃめちゃおいしかった、という経験がある方もいると思うんです。クラフトビールとの出会いは一度きり。一期一会だと思います。そいういう縁を大事にしたいと思っています」(阪本さん)
手書きのカード、がっちりした梱包、お客様の好みを常にリサーチ
ショップをオープンしてはじめて注文してくれたお客様から現在に至るまで、通販の荷物には欠かさず手書きのカードを入れているというのも阪本さんのこだわり。オーダーを受けてからなるべく早く発送すること、丁寧に梱包することも心掛けているそう。
サイトは、「ガツンと苦いIPA系」や「 色も味も深い! STOUT/BROWN系」など、カテゴリーやスタイル、または“冬に楽しみたい”、“ 初めてでも飲みやす~い”など、テーマごとにもビールが分類されていて、好みのビールを見つけやすい仕様。また、「店主が選ぶお任せコース」は、2500円、3600円、5400円、10000円の4つのコースを用意。
自分で選んだビールをオーダーして、さらにお任せコースを注文することもできます。そういったオーダーがきた場合、阪本さんはお客様が選んだビールをヒントにして味の好みを想像し、ビールをチョイス。「パズルみたいですが、楽しんでやっています」(阪本さん)。
商品発送後メールで寄せられるリアクションや、タグ付けされたSNSの投稿なども「めちゃめちゃ見てます」という阪本さんは、リピーターのお客様の好みがいつも頭のどこかにあるそう。情報を大事にして、なるべくお客様にフィットするものをおすすめするよう努めているとか。
現在は倉庫を移転し、岐阜市内の民家で営業中。近隣にお住いの方はネットでオーダーし予約すれば倉庫でビールを受け取ることも可能。事前予約の上、直接倉庫に行って冷蔵庫を見てその場で購入することもできます(2022年2月現在は新型コロナウイルスの感染状況により休止しています)。将来は近所の方がふらっと立ち寄れるようなスペースにしたいという構想もありますが、あくまでもメインは通販でやっていきたいと阪本さんは考えています。
通販サイトを選ぶときには、支払方法や配送会社のチェックも大事。「一期一会~る」の概要は次の通り。詳しくは記事の最後にリンクする「一期一会~る」のサイトを覗いてみてください。
「一期一会~る」配送・支払等概要
配送:クール便(ヤマト便またはゆうパック、業者の指定は不可)
発送:注文・決済が完了した時点から店休日を除く2日以内に発送。着日時指定がある場合は、間に合う日程であれば対応。
支払い方法:銀行振込(ゆうちょ銀行)、クレジットカード決済(JCBカード、アメリカンエキスプレス、VISAカード、マスターカード、ダイナース)、コンビニ決済 、PayPay
通販サイトで注文し、倉庫で受け取る場合は現金でも購入可。
会員登録:登録しなくてもオーダー可
お客様に人気のビアスタイル3種、店主の推しビールは?
では、「一期一会~る」店主・阪本さんに、テーマを決めてビールをおすすめしていただきましょう。
「今お客様に人気があるスタイルを3つ挙げるとすれば、IPA(ウェストコーストIPA)、ドロドロ系のサワーエール、あとはヘイジーIPAですね」(阪本さん)
人気のスタイル3種それぞれについて、取材当時「一期一会~る」に在庫があった銘柄から阪本さんに推しブルワリー・推しビールをセレクトしてもらい、実際に通販で購入してみました。
安定感のあるおいしさ、BALE BREAKERのIPA
まずはIPAから。阪本さんの推しは、ホップの産地として知られるアメリカ・ワシントン州ヤキマバレーの、ホップ農家が営むブルワリーBALE BREAKER(ベールブレイカー)。在庫のあった「Moxee Made」(モクシーメイド)を入手しました。
「BALE BREAKERのビールは何を飲んでも安定感があります。定番のビールがまずおいしいし、限定醸造のものもクオリティが高くはずれがない。どのビールにも共通するのは、麦芽の香ばしさと、ホップの青い感じ。輪郭がすごくくっきりしていて苦味も強い。『TOPCUTTER』(トップカッター、IPA)と『BOTTOMCUTTER』(ボトムカッター、インペリアルIPA)という定番があって、僕の一番のおすすめは『BOTTOMCUTTER』。アルコール度数8%ですが、それを全然感じないくらいさわやかで、でもかなりパンチが利いていてがっつり苦くてがっつり酔えます。『Moxee Made』は準定番で、BALE BREAKERらしい、キレのあるさわやかなIPAです」(阪本さん)
飲みやすくリーズナブルな、ドロドロ系サワーエール
ドロドロしたテクスチャーのサワーエールは「最近人気が出てきています」と阪本さん。推しはアヒルのような鳥のイラストがデザインされたパッケージが印象的な、Oozlefinch(ウーズルフィンチ)のフルーツサワーエール。Oozlefinchはアメリカ・バージニア州のブルワリー。定番というよりシリーズで、フルーツの組み合わせを変えてビールをリリースしています。コンスタントに新作が出る「Crazy Pants」(クレイジーパンツ)は小麦麦芽を使った酸味のあるビール、ベルリン・ヴァイス(ベルリーナ・ヴァイセ)をベースにしたシリーズ。今回入手した「Crazy Pants Crazy Driver」(クレイジーパンツ クレイジードライバー)は、ブラックベリー、ラズベリー、ブルーベリーにラベンダー、バニラを加え、強烈な酸味とトロッとした口当たり、フルーティーでベリーの香り豊かなフルーツサワーエールです。
「ドロドロ系・スムージー系のサワーは結構値段が高いんです。その点でなかなか手が出せないという方におすすめなのがOozlefinch。たまにIPAなんかも作っていますが、フルーツサワーエールを多くリリースしているブルワリーで、日本に入ってくるのはほぼほぼサワーばかりです。Oozlefinchのドロドロ系サワーは、ロング缶で2000円を超えてくるような価格帯のコッテコテのフルーツサワーよりはややさっぱりであっさり。でもしっかりとろみがあって、スムージーっぽい風味と果実の味わいの凝縮感を楽しむことができます。なにより473ml缶で1000円ちょっとなので、ドロドロサワー入門編に良いのではないでしょうか。フルーツサワーは、どれがおすすめというより、自分の好みのフルーツが入ったものを選んでいいと思います」(阪本さん)
根強い人気のヘイジー、店主が「大傑作」と推す1本
液色が濁っているのが特徴のヘイジーIPAは相変わらず人気のスタイル。阪本さんの推しは、ニューヨーク州ガーナービルのブルワリーINDUSTRIAL ARTS(インダストリアルアーツ)の「Wrench」(レンチ)。
「INDUSTRIAL ARTSの『Wrench』は、弾けるような柑橘系の香り。口当たりが滑らかで、口に含んだ瞬間から桃、オレンジ、パインといったフルーツを感じる風味と甘味が立体的に広がります。後から苦味が追いかけてきて、わずかな酸味も心地良い。これまで飲んできたニューイングランドスタイルの中でも特に印象に残る大傑作です」(阪本さん)
SOLD OUT必至のラインナップはまさに「一期一会」
阪本さんに紹介していただいた3種のビールは、取材時には在庫がありましたが、すぐにSOLD OUTになるのは必至。
BALE BREAKER 「Moxee Made」、INDUSTRIAL ARTS「Wrench」は定番の銘柄なのでタイミングが合えばこの先も手に入れるチャンスは巡ってきますが、Oozlefinch「Crazy Pants Crazy Driver」は今後また同じレシピでリリースされるかどうか不明。まさに一期一会です。「Crazy Pants」のシリーズは素材を変えて定期的に新しいアイテムを出していますので、気になった時にはぜひ入手して味わってみてください。
推しペアリングはヘイジー×奈良漬!
ペアリングの提案もしていただきました。
「ヘイジーIPAは、ビールの個性や完成度が高すぎて食べ物を寄せ付けてくれない感じがあり、食事に合わせにくいと言われます。でも僕は、ヘイジーに合うものを2つ見つけました」(阪本さん)
阪本さん推しの、ヘイジーとのペアリング食材1つ目は奈良漬。漬けてある野菜の種類はなんでも構わないのですが、酒粕を洗ってしまわずに付いたままにするのがポイントなんだとか。「酒粕が付いている刻み奈良漬というのが売られていて。酒粕が付いていることで、ヘイジーが持っている香味やクリーミーさ、滑らかさに完璧に合うんです」(阪本さん)。
もう1つはドライフルーツで、なかでもドライイチジクがおすすめ。「ヘイジーに入っているオーツ麦の味がドライイチジクと相性が良いと思っています。パーフェクトです」(阪本さん)
ヘイジーと奈良漬、ドライイチジク、調理も必要なく気軽に試せるペアリングです。トライしてみては?
今後注目していきたいスタイル、これまでもこれからも大事にしていくポリシー
阪本さんがこれから先、注目していきたいビールは、ブレタノマイセスなどの野生酵母を使ったワイルドエール。
「ワイルドエールは味の振れ幅があって、サワーエールよりも酸っぱいものもあるし、糠漬け的な香りのあるものあり、酵母の個性によって味わいに大きな違いが出ます。僕はすごく好きなんですけれど、中瓶以上のサイズでリリースされることが多く、冷蔵庫のスペースを空けるのが難しくてなかなか取り扱えていません」(阪本さん)
一方で、「僕がおいしいと思うビールを発信することはもちろん、今世の中の人が何を飲みたいかなと想像しながらビールをラインナップしていきたい」と語る阪本さん。
「僕はやっぱり、1人のビール好きですから。SNSで情報を集めたりコミュニティに参加したり、同じビール好きとして情報を交換しながら、お客様とお互いに良い関係が築いていけたらなと思っています」(阪本さん)
ビールが好き過ぎる店主が営む通販サイト「一期一会~る」、商品入荷情報などSNSでの情報発信も細やかなので、要チェックです。
【関連サイト】
「一期一会~る」
「一期一会~る」インスタグラム