ビアギークのがん体験者と仕込んだ「Beer yourself.」ビールを飲んでがんを知ろう!【2月4日はワールドキャンサーデー】

富士桜高原麦酒「Beer yourself」

2月4日は「ワールドキャンサーデー」! 2000年の「がんサミット」で宣言された取り組みで、世界中で人々が、がんに対する意識を高め行動を起こす日です。

山梨県のブルワリー・富士桜高原麦酒は、2023年2月4日の「ワールドキャンサーデー」に、がん患者さんとご家族・医療従事者のサポートと、がんに対する正しい知識の啓発を目的としたビール「Beer yourself.」(ビア ユアセルフ)を発売。都内を中心に全国のビアバーや飲食店、酒販店で提供がはじまっています。

「Beer yourself.」を共同で仕込んだ活動グループ「Support Cancer Craft Beer」(サポートキャンサークラフトビア)発足メンバーのお1人・富士桜高原麦酒醸造長の宮下天通さんに、このビールをリリースするまでのストーリーをお聞きしました。

がん患者さんへエールを贈るビール「Beer yourself.」

「Beer yourself.」のプロジェクトは、2019年都内のあるビアバーで開かれていたイベントで、クラフトビールを愛する山崎栄子さんと宮下さんが出会ったことをきっかけにはじまりました。宮下さんは山崎さんと話す中で、彼女が“がんサバイバー”(注)で、クラフトビールを通じてがんについての啓発活動をしたいという夢をもっていることを知ります。

「自分も身内にがん体験者がいて、いろいろな気持ちを経験しました。今の時代2人に1人が罹る疾病といわれていますので、がん治療経験のある方やその方を支える家族のお客様は普通にいます。 決して特別なことではないです。 だから自分も普通に、すべてのお客様に楽しんでいただこうとビールを醸造しています」(宮下さん)

富士桜高原麦酒

その後コロナウィルスの広がりで緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が敷かれた時期を経て、情勢が落ち着いてきた2022年、ビアバー「クラフトビールシザーズ秋葉原」のイベントで山崎さんと宮下さんが久しぶりに再会。たくさんのクラフトビール仲間も集まり、がんの啓発活動を形にしたいという強い意志が固まりました。

Support Cancer Craft Beer、発足

その後、山崎さんをはじめビール業界の有志が集まり、がん啓発のための活動グループ「Support Cancer Craft Beer」(サポートキャンサークラフトビア)が発足。メンバーは、山崎さんがお客様として訪れたことのある店の関係者ばかりで、全員が身近でがん闘病のサポートをした経験があります。

Support Cancer Craft Beer
Support Cancer Craft Beer発足メンバー

【Support Cancer Craft Beer発足メンバー】
富士桜高原麦酒 醸造長 宮下天通さん
「クラフトビアマーケット田町」 赤羽根優衣さん
「クラフトビールシザーズ秋葉原」 小畑聡一郎さん
「クラフトビアサーバーランド赤坂見附」 岩原周平さん
がんサバイバー 山崎栄子さん

メンバーが集まって、元旦に仕込み!

今回のビール「Beer yourself.」は「Support Cancer Craft Beer」初のプロジェクト。手に取ったひとりひとりが、がんに関する意識を高め、知識を増やし、がんに対して行動を起こしてもらえるよう願いを込めて醸造されたビールです。

ビールの仕込み
「Beer yourself.」の仕込みには、山崎さんもオンラインで参加!

2023年1月1日、発足メンバーが富士桜高原麦酒の醸造所に集まり、山崎さんもオンラインで参加して「Beer yourself.」の仕込み作業が行われました。

Beer yourself.
富士桜高原麦酒「Beer yourself.」(White Ale)
ラベルのアートワークや「Support Cancer Craft Beer」のロゴやは、ビアイラストレーターのイソガイヒトヒサさんが担当

ビールのスタイルはメンバー5人で話し合い、ビール好きにも一般の方にも飲みやすいホワイトエールに。

「富士桜高原麦酒はジャーマンスタイルを得意としているので、ベースはヴァイツェンビールです。ピルスナーモルトとウィートモルト、ミュニックを使用し、舌ざわりを滑らかにするためにオーツ麦を使いました。副原料としてホワイトエールには欠かせないオレンジピールとコリアンダーを、煮沸終了の15分ぐらい前に投入。麦汁に漬け込むことでオレンジピールの柑橘感やコリアンダーのスパイシーさを引き出しました」(宮下さん)

ホップは“勝利”を意味する名称の「Triumph」を使い、「Mandarina」「Citra」 で柑橘系の香りを出すことでオレンジピールの香りを一層際立てています。

あなたらしくいてね、の思いを込めた「Beer yourself.」

「Beer yourself.」というビール名については、メンバー皆でかなり悩んだのだとか。

Beer Yourself

「人生は、がんになったから“負け”ではないし、治療をしながらでも主治医の許可を得てビールを飲むことだってできる。がんの治療を受けていく中で、がん患者さんの QOL(Quality of life)や 、『自分らしくいる』いうことが大切にされます」(宮下さん)。そのことから、「あなたらしくいてね」の英訳Be yourself と Beerをかけて、「Beer yourself.」に。ラベルや印刷物などでは、「Be」と「er」の文字サイズに大小をつけて表記されます。

売り上げの一部をがん支援団体に寄付、今後も活動を継続

「Beer yourself.」は2月4日、「ワールドキャンサーデー」に発売。富士桜高原麦酒のインターネット通販(楽天市場「富士山からのおくりもの」)で販売を開始するほか、「クラフトビアマーケット田町」を含むクラフトビアマーケット全店舗や、「クラフトビールシザーズ秋葉原」、「クラフトビアサーバーランド赤坂見附」といった発足メンバーの店舗をはじめ、このプロジェクトに賛同する全国のビアバーや飲食店、酒販店などで提供・販売されます。「Beer yourself.」の売り上げの一部は、がん支援団体に寄付される予定。「Support Cancer Craft Beer」は来年以降も「ワールドキャンサーデー」にビールを販売し、継続的に活動していくことを目指しています。

がんを体験された方や、身近な方の療養に寄り添った経験のある方は多くいらっしゃるのでは? この機会に、クラフトビールを飲みながらがんについて語ってみてはいかがでしょうか。

(注)がんサバイバー
がん治療を終えた方だけでなく、がんと診断されたばかりの方や、治療中や経過観察中の方なども含む、すべての「がん体験者」のことを指す。がんの生存率が向上した一方で、がんサバイバーや家族は「副作用などの身体的問題」、「再発への恐れといった精神的問題」、「周囲との接し方などの社会的問題」、「治療費などの経済的問題」といった様々な問題に生涯にわたって直面する。そのような背景から、がんと向き合いながら自分らしく生きるという意味を含んだ言葉が使われるようになった。
(「Beer yourself.」プレスリリースより)

【商品概要】
商品名:富士桜高原麦酒 「Beer yourself.」(ビア ユアセルフ)
発売日:2023年2月4日
アルコール度数:5.0%
IBU(苦味):18
EBC(モルトの色合い):5
内容量:330ml (ボトル)
希望小売価格:627 円(税込み)

【関連サイト】
Support Cancer Craft Beerインスタグラム

富士桜高原麦酒 オンラインショップ

ワールドキャンサーデー

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のび子

日本文化にまつわる分冊百科の編集担当を経て、料理専門誌編集部へ。食のサステナビリティ、クラフトビールが生み出す地域のコミュニティ・資源循環を取材。超少食だが酒はわりと強い。

よなよなの里