クラフトビールの楽しみ方は人それぞれ。おつまみなしでビールの味わいにとことん集中したい方もいれば、おいしいフードと一緒に堪能したいという方もいますよね。今回は後者に該当する方に推したいお店、東京・芝公園の「芝惣菜所」で角打ちしてきました!
シェフが手掛ける極上の惣菜を量り売り!「芝惣菜所」
「芝惣菜所」は、都営地下鉄三田線・芝公園駅から徒歩3分ほどの路地沿いにある、量り売りの惣菜店。同じ芝2丁目にあるレストラン「イタリア料理 樋渡」(ひわたし、以下「樋渡」)のオーナーシェフ・原耕平さんのお店です。
原シェフは、国内のイタリアンの名店やイタリアでの修業を経て独立。2019年に「樋渡」を開業しました。レストランは順調にお客様を集めていましたが、オープンからほどなくしてコロナ禍に。都内に緊急事態宣言が出て飲食店の営業が制限される中で耳に入ってきたのは、仕入れ先の生産者の窮状でした。
「生産者さんのSNSで、しんどい、という書き込みを見つけたんです。例えば鶏は絶えず卵を産みますよね。緊急事態宣言だから今は産まないで、というわけにはいかない。八百屋さんも出荷先が減って、僕がいつも通り野菜を発注すると“こんな時に注文してくれて本当にありがとう”と言われたりして……。たくさん仕入れたくても『樋渡』1店舗だと限界があるし、ずっとモヤモヤしていました」(原さん)
料理を提供する場さえあればもっと仕入れが増やせるのに、と考えていたとき、ご近所でお店を営む知り合いの料理人から、店を移転し跡地で営業してくれる人を探しているとの話が。そこで、原シェフは持ち帰りの惣菜店の開業を思いつき、2021年8月に「樋渡」の姉妹店として「芝惣菜所」をオープンさせました。
ちなみに、「芝惣菜所」が営業を始めてから食材の調達量は大幅に増え、卵については「樋渡」1店舗の頃と比べて約5倍の量を仕入れることができているのだそう。
テイクアウトもイートインも!なんでもそろうイタリアの“バール”のようなお店
「芝惣菜所」の店内は、奥がキッチンスペース。その手前に惣菜が並んだ冷蔵ショーケースがあり、壁にはナチュールを中心としたワインのボトルがずらっと並んでいます。そして、ショーケースの右手には人気銘柄のクラフトビールが入った冷蔵庫が!
イタリア料理店の系列のお店でワインを販売するのは自然な流れに思えますが、なぜワインだけでなくクラフトビールを扱うことにしたんでしょうか。
「僕の中で、この『芝惣菜所』は街の“バール”みたいな立ち位置のお店です。イタリアのバールというのは雑貨も売っているし、エスプレッソも飲める。夕方になればカンパリソーダやアぺロール、グラスワインが飲めて、パニーニや生ハム、サラミ、オリーブなどの惣菜もあります。『芝惣菜所』も、惣菜があってパンがあって、ビールもワインもコーヒーも、なんでもある店にしたかったんです。ないのはタバコと雑誌くらいで。
それで、せっかくビールを扱うならスーパーやコンビニでは買えないようなクラフトビールを、1銘柄ではなく数種類置こうと思いました。冷蔵ケースを開けてどれにしようかと選ぶ楽しさが味わえるように」(原さん)
「芝惣菜所」はテイクアウトだけでなくお酒の角打ちもでき、ふらりと立ち寄っておいしいお惣菜とクラフトビールで軽く一杯飲むことができます。
惣菜はレストランと同じ食材を使用
お惣菜は「樋渡」と同じ高級食材を使い、シェフが手作りしています。お値段は少し高めに感じるかもしれませんが、使っている素材を考えると実はかなりリーズナブル。100グラムから量り売りしています。
この日のお惣菜をチェックしてみましょう!
この日は12種類のお惣菜と揚げ物が並んでいました。
お惣菜の一部をピックアップしましょう。「津軽鶏ときのこのヴィネガー煮込み」は、津軽リンゴを食べて育ったブランド鶏を白ワインヴィネガーで煮込んだ、やさしい酸味のある一品。山口県特産の超希少な無角和牛を使った「山口 無角牛のローストビーフ」は、レストランクオリティの素材を味わえる「芝惣菜所」ならではのメニュー。「自家製ポテトサラダ」は、ジャガイモにツナ、アンチョビ、ケッパー、オリーブを使い、マヨネーズではなく赤ワインヴィネガーで味付け。ほかに、トビウオの刺身を使った「飛魚と青みかん、やさいのマリネ」や、北海道十勝の放牧豚のミートボール風「遊ぶたのポルペッティ トマト煮」なども。
揚げ物も一味違っていて、鶏の唐揚げは醤油を使わず赤ワインとニンニクとローズマリーで下味をつけ、衣にセモリナ粉を使用。アジフライはパン粉が自家製でサクサク。シチリアの郷土料理・アランチーニ(ライスコロッケ)は、高級魚スジアラを使ってアレンジ。スジアラの身を煮てほぐして、その出汁で炊いたリゾットを丸めて揚げています。
パン類もおすすめ。チャバタ(イタリアの食事パン)や、ピッツェッタ(小ぶりのピザ)はもちろんビールに合います!
クラフトビールの品ぞろえに注目!人気ブルワリーのビールがそろい踏み
クラフトビールのラインナップは……
ビールのセレクトは、原シェフのおおまかなオーダーを伝えた上で、信頼をよせるリカーショップにおまかせしています。この日はWest Coast Brewing、Yorocco Beer、Uchu Brewing、志賀高原ビール、そしてイタリアのMorettiが並んでいました。
どうしても注目してしまうのが、入手困難なことで知られるUchu Brewingのビール。Uchu Brewingは2017年、山梨県北杜市でスタートしたブルワリー。ホップをふんだんに使ったビールが人気で、リリースされると即完売してしまい毎回購入制限がアナウンスされるほど。2021年に工場を拡張したことで生産量が大幅に増えましたが、依然としてすぐにSold Outする状況が続いています。「芝惣菜所」でも常時ストックがあるわけではないですが、タイミングが合えば買えます! この日はブラックベリーを大量投入したスムージーのようなサワーエール「KIMONO」と、Mosaicホップを100%使用したスッキリ系のDIPA「DEEP SPACE Mosaic」がありました。
人気ブルワリーのビールはほかにも。静岡・West Coast Brewingの「Full Hop Alchemist v24」は少しづつレシピを変えながらバッチを重ねてきた定番Hazyの24バッチ目。神奈川・鎌倉市のYorocco Beer「Flor de Jamaica」は毎年夏に限定醸造されるハイビスカスを使ったセゾン、「Mind Breeze」は小麦麦芽を使用したペールエール。
志賀高原ビールは、フラッグシップ「志賀高原IPA」をはじめ3種類。イタリアの定番ラガービール「Moretti」も。別の日にはおなじみのBrew Dogのビールが並んでいた時もあり、味わいも価格帯も選択肢の幅は広めです。
惣菜×クラフトビールで角打ち!
では、お惣菜とビールを購入して角打ちといきましょう! イートインの場合、お惣菜はお店が用意したお皿に盛り付けてもらえます。
サワーエール×酸味のあるヴィネガー煮込み
セレクトしたビールは、ちょっと特別な1本、Uchu Brewing「KIMONO」。超濃厚なブラックベリーの味わいをシークワーサー果汁が引き締め、フルーティーな酸味が感じられます。色もかなり鮮烈で濃厚。ドロドロ手前のトロトロなテクスチャーのスムージー系で、果実感が豊か。しっかり飲みごたえがあるサワーエール。
おつまみに選んだのは「津軽鶏ときのこのヴィネガー煮込み」(税込み864円/100グラム)。スムージーのようなフルーツサワーエールに合うお惣菜というのはかなり難しい選択ですが、このお料理はワインヴィネガーの酸味があって、「KIMONO」のフルーティな甘酸っぱさと意外に合いました。
みずみずしいゴールデンエール×ちょっと特別なポテサラ×チャバタ
取材とは別の機会に飲んだのはYorocco Beer「Brain Sharpener」。長野県のサイダリー・Son of the Smithから酵母を分けてもらって仕込んだというGolden Aleです。
合わせたのは「自家製ポテトサラダ」(税込み648円/100グラム)。マヨネーズ味のポテサラとは一線を画し、ツナやオリーブの味わいとヴィネガーの酸味がある「自家製ポテトサラダ」は、どんなスタイルのビールにも合いそう。「Brain Sharpener」のみずみずしさが引き立ちました。
チャバタも超もっちもちで美味。パンが好きな方はこのチャバタだけでビールやワインが楽しめるのでは?
「容器をご持参ください!」テイクアウトはタッパーやお皿持ち込みで
今回は角打ちを楽しみましたが、お惣菜とクラフトビールをテイクアウトして家飲みするのもいいですね。「芝惣菜所」では、お店側がパッケージを用意するのではなく、お客様が自ら持ち込んだタッパーやお皿・お鍋等で惣菜を持ち帰ります。
お客様に容器を持参してもらうのは、使い捨てプラスチック容器の使用を削減するため。コロナ禍で営業に制限があった頃、「樋渡」で料理の持ち帰りができるようにした際の試行錯誤の経験からこの営業スタイルを採用しました。
「プラスチックごみの問題が世の中でこんなにニュースになっているのに、プラスチック容器を大量に買って店に置いているのが嫌だったんです。それで、『樋渡』でお皿やお鍋を持ってきていただけたら料理を詰めますよと呼び掛けてみたら、地元のお客様が結構利用してくれたんです」(原さん)
持ち帰り時間が短い方はお皿を持参するのがおすすめ。家でお惣菜をタッパーからお皿に移す必要がなく、洗い物も減ります。スタッフがきれいに料理を盛り付けてくれるので、そのまま食卓に出せるのも利点。
ふらりと1杯角打ちも、テイクアウトも。気軽にレストランの味が楽しめる!
上品なレストランに行くのはちょっと気が引ける、という方も「芝惣菜所」なら気軽にレストランクオリティのフードを楽しめます。クラフトビール好きにとっては、お惣菜に合わせて人気ブルワリーのビールが買える・飲めるのが魅力。テイクアウトで家飲みを贅沢に演出したり、ホームパーティを盛り上げたり、これからの季節はビールとお惣菜を買って行楽地やキャンプに行くのもいいかも。ぜひ「芝惣菜所」で角打ちやテイクアウトを体験してください 。タッパー持参で!
※ご紹介したビールや惣菜の情報は取材当時(2022年9月)のもので、時期によりメニューやラインナップ、価格は変わります
【関連サイト】
「芝惣菜所」インスタグラム