長龍酒造は奈良県の清酒メーカーで、2021年から「CHORYO」ブランドを設立し、クラフトビールの醸造・販売を始めました。2022年3月には奈良県広陵町に日本酒とクラフトビールが楽しめる「長龍ブリューパーク」をオープンし、クラフトビールの醸造により一層力を入れています。
今回はCHORYOのクラフトビールの秘密に迫るべく、クラフトビールチームリーダーの吉田誠さんとヘッドブルワーの樋代卓矢さんにお話しを伺いました。
クラフトビール参入のきっかけは「事業資産の有効活用」
長龍酒造は大阪府八尾市にある飯田グループの製造部門で、奈良県広陵町で清酒づくりを行ってきました。飯田グループは「酒を通じて、より豊かな生活を演出」をコンセプトに大正12年の創業以来、酒類食品にまつわる事業を展開しています。飯田グループの事業は酒類の卸し売り、原料の製造・販売、飲食店の運営まで多岐にわたります。これまで酒類業界はさまざまな変革期が訪れましたが、変革に柔軟に対応し、企業シナジーを高めてきたのが同グループです。
クラフトビール参入を検討し始めたのは8~10年前のことです。東京にビアパブ開店ラッシュが始まり、キリンビールが100%子会社「スプリングバレーブルワリー」を設立するなど、クラフトビールの認知度がグッと上がった頃でした。最初は飯田グループの清酒原料をビール醸造に活かせないか?と考え、ビール原料の販売を始めました。例えば焼酎で用いられる「白麹」をビール醸造用に販売したことがあります。あまり売れ行きは伸びず、その後も試行錯誤しましたが、ビールの原料販売はなかなかうまくいきませんでした。
原因を考えたところ、これまで清酒は製造まで行ってきましたが、ビールは醸造したことがありません。そのため、製造者(ブルワー)の気持ちを理解していないことに気づき、飯田グループでも「ビールづくりに挑戦してみよう!」と事業が立ち上がりました。ビール製造ははじめての試みだったので、ブルワー探しから始まり、さまざまなツテで出逢ったのがヘッドブルワーの樋代卓矢さんです。長龍酒造では、クラフトビールの原料を知るために「クラフトビールづくり」が始まったのです。
清酒醸造の経験から得た「品質保持」に対する考え方
クラフトビールのプロジェクトチームは、グループ内のあらゆる部署から集められたプロジェクトチームです。清酒の醸造過程からビールづくりに活かされていることがたくさんあります。例えばビールはさまざまな原料を用いることができますが、日本酒は酒米だけでつくられています。原料の細やかな処理や、麹菌、酵母といった菌類の厳密な発酵管理などによって品質を保持しています。
飯田グループでは「安定した品質の商品を製造し続けることがもっとも大切なこと」と考えています。ビール醸造の過程では通常行わないような分析方法を取り入れて、醸造の変化をチェックしています。高品質な商品を安定供給することは、消費者にとっての安心感と業界に対する信頼に直結します。これまで清酒醸造を長年行ってきた経験がビールづくりに活かされています。
ブルワー・樋代さんと日本酒製造チームは、お互いの原料や作り方・発想を共有し、ビールと清酒の技術をより発展させながら新商品の開発を行っています。飯田グループで製造・取り扱いしている清酒や焼酎の原料を利用し、長龍酒造のオリジナリティー溢れるビールを今後展開予定です。現在は「乾燥麹」を効果的に利用できないか?模索中とのことでした。
長龍酒造が目指す「もう一度飲みたいビール」
CHORYOのクラフトビールのコンセプトは「もう一度飲みたいビール」です。ビール愛好家の「ホーム」となるようなビールづくりを目指しています。CHORYOには3つの「もう一度飲みたいビール」があります。「日常」「インパクト」「オリジナリティー」の3つを軸に、コンセプト「もう一度飲みたい」を表現しています。
日常的にもう一度(一杯)飲みたい「ライスラガー」
ライスラガーは「もう一度(一杯)飲みたい」をコンセプトに、日常的に飲みたいビールを表現しています。日本人に馴染み深いラガースタイルで、奈良産の米を使用しています。口あたりがやわらかく、軽めな仕上がりで、お米の甘さが感じられ飲みやすいです。ホップはヘッドブルワー・樋代さんのクラフトビールづくりの原点であるオーストラリアにちなんで、南半球産を使用しています。
ライスラガー
ABV:4.5%
IBU:18
酒類:ビール
原材料:麦芽(ドイツ製造)、米(奈良県産)、ホップ
スタイル:ラガー
インパクトが癖になる、もう一度飲みたい「IPA」
IPAのコンセプトは「クラフトビールの原点をもう一度飲みたい」です。IPAは多くの人がクラフトビールにハマるきっかけとなるビールで、インパクトがあり印象に残ります。CHORYOのIPAはクラフトビールの王道といえるアメリカンウエストコーストIPAで、しっかりとした苦みとドライなボディが特徴です。これまでホップや全体のバランスをアップデートし続け、発売以来もっとも変化があります。さまざまなスタイルのビールを飲んで、「もう一度飲みたくなる」クラフトビールの原点を目指しています。
IPA
ABV:6%
IBU:45
酒類:ビール
原材料:大麦麦芽(カナダ、ドイツ製造)、ホップ
スタイル:IPA
CHORYOのオリジナルをもう一度飲みたい「白麹」のビール
通常乳酸を使用することが多いビールの仕込み工程で、白麹由来のクエン酸や麹の持っている酵素を利用したビールの開発に挑戦しています。クエン酸のすっきりとした酸味や、酵素の作用でドライになりグイグイッと飲めるビールです。白麹のビールはCHORYOの目玉となる商品で、ジャパニーズスタイルのクラフトビールとして確立したいと考えています。
麹菌は日本の「国菌」とも呼ばれ、清酒づくりに欠かせません。麹菌は海外でビーガンを中心とした健康志向の人々に注目されている自然派食品です。ヘッドブルワー・樋代さんは「将来的には日本全国や海外に伝えていきたい」との目標があります。
白麹セゾン
ABV:5.5%
IBU:30
酒類:ビール
原材料:麦芽、白麹、ホップ
スタイル:セゾン
CHORYOの4月限定ビール
ローズとハイビスカスのやさしい芳香「WIT Rose & Hibiscus」
WIT Rose & Hibiscus(ウィットローズ&ハイビスカス)はベルジャンウィットスタイルの小麦ビールで、バラとハイビスカスを副原料に使用しています。香りは強すぎず柔らかい芳香で、やさしい味わいです。忙しい毎日にホッとリラックスできる癒しの味に仕上がっています。
WIT Rose & Hibiscus(ウィットローズ&ハイビスカス)
ABV:5.5%
IBU:17
酒類:ビール
原材料:麦芽(ドイツ製造)、小麦麦芽、オーツ麦、ローズレッドペタル、ホップ、みかん果皮、ハイビスカス
スタイル:ベルジャンウィット
CHORYO最高のIPA「DOUBLE IPA」
DOUBLE IPA(ダブルアイピーエー)はCHORYO初リリースから1年の区切りに誕生した最高のIPAです。過去に仕込んだビールの知見、技術を投入し、今できるすべてを詰め込みました。IPAならではの苦みと香りが楽しめます。
DOUBLE IPA(ダブルアイピーエー)
ABV:9.5%
IBU:40
酒類:ビール
原材料:麦芽(カナダ製造)、オーツ麦、小麦麦芽、ホップ、ぶどう糖、乳糖
スタイル:ダブルIPA
CHORYOは関西近郊の酒類専門店や近鉄百貨店奈良店で購入可能!
CHORYOのクラフトビールは近鉄百貨店奈良店(大和西大寺)をはじめ、関西近郊の酒類専門店で購入できます。CHORYOはお客様に「一番自信がある状態でビールを飲んでほしい」という想いから賞味期限を30日に設定しています。賞味期限が短いため、個人経営の酒類販売店等でお客様に積極的にお酒を紹介している店舗で販売しています。
CHORYOのタップを常設している「JOSEP(ジョゼップ)」
JOSEP(ジョゼップ)はJR・近鉄「王寺駅」から徒歩1分にあるクラフトビールパブです。常時10種類のタップ(樽生)があり、出来たてのCHORYOが飲むことができます。フードメニューが充実しており、CHORYOとのペアリングが魅力です。地元の人が多いビアパブですが、親切で気さくなおひとりさまが多く、はじめての人でも会話が弾みます。CHORYOのクラフトビールとは?
CHORYOのクラフトビールは全体的にすっきりクリアで飲みやすいと好評です。クラフトビール初心者でも飲みやすく、ビール愛好家にとっては個性的なビールを巡ったあとに「もう一度飲みたい!」と感じるビールです。CHORYOでは「ホーム」を感じられるビールづくりを目指し、データ分析と研究を日々重ねています。
CHORYOは清酒メーカーの知見を活かし、フレッシュで安心感のあるビールを提供しています。日本酒づくりの基本となる繊細な酒づくりをベースに、出来上がったビールは2週間に1回検査して、賞味期限を決定します。より出来たてのおいしい状態で提供したいという想いから、ほかのメーカーに比べて賞味期限が短いことが特徴です。購入後はできるだけ早く飲むとよりフレッシュな状態が楽しめます。
CHORYOのビールが存分に楽しめる「長龍ブリューパーク」
長龍酒造は2022年3月に日本酒とクラフトビールが楽しめる公園施設「長龍ブリューパーク」をオープンしました。土日祝11:00~17:00にタップルームを営業しており、CHORYOの出来たてクラフトビールが楽しめます。定番ビールは2種類で、それ以外に季節限定やテストバッチのビールを販売しています。100ℓの醸造設備でつくられるビールは長龍ブリューパークでしか飲めません。