ビアフェスのごみを減らせるか?「森のタンブラー」開発者と利用者に聞くリユースへの取り組み

森のタンブラー

ビアフェスやスポーツ観戦など、イベント会場で飲むビールは最高ですよね。でも、会場内のごみ箱にプラスチックカップがあふれているのを見てゲンナリしてしまうことはありませんか? 

アサヒビール株式会社とパナソニック株式会社は、イベント等で大量に消費される使い捨てプラスチックカップ削減のために、植物資源から作るセルロースを使ったビール用タンブラー、「森のタンブラー」を共同開発。2019年からテスト展開し、2020年には事業化に向けて取り組みを強化してきました。

「森のタンブラー」誕生のきっかけを作ったキーパーソンは、大のビール好き。このアイテムはなぜ生まれたのか、開発にまつわるストーリーやサステナビリティへの思いをお聞きしました。さらに、既に「森のタンブラー」を導入しているブリューパブ・ふたこビール醸造所で、実際の使用感やお客様の反応についてうかがいました。

有機資源から生まれた、繰り返し使えるマイカップ「森のタンブラー」

アサヒビールとパナソニックが共同開発した「森のタンブラー」は、“使い捨て”という消費行動自体を変革することを目標とし、“使い捨て”しない飲料容器として考案されたカップです。パナソニックが開発した、間伐材などの木材から精製した有機資源を55%以上含む「高濃度セルロースファイバー成形材料」を使い、廃棄する際にも紙製品として分類することができ、プラスチックごみ削減への寄与を期待できます。

森のタンブラー3種
左から「森のタンブラーHINOKI」、「森のタンブラー」、「森のタンブラーMUGI」

「森のタンブラー」は2019年に販売が開始され、「GAMBA EXPO 2019」「B-1グランプリ in明石」「つくばクラフトビアフェスト2019」などの様々なアウトドアイベントで累計約1万個を展開。「つくばクラフトビアフェスト2019」では、3日間のイベントで使い捨てカップの消費を約2万個分削減できました。2020年にはアサヒビールの社有林「アサヒの森」のヒノキ間伐材を使った「森のタンブラーHINOKI」、アサヒビールモルト株式会社の「焙煎麦芽副産物」(ロス原料)を使った「森のタンブラーMUGI」が発売され、色や素材のバリエーションも増えました。

ビアフェス通いで抱いた疑問、開発者がこだわった使いやすさとデザイン性

「森のタンブラー」誕生のきっかけを作ったのは、アサヒビール株式会社パッケージング技術研究所の古原徹さん。古原さんはペットボトルや缶など、あらゆるパッケージの製作に携わってきた開発者です。

プライベートではビアフェスフリーク。友人とビアフェスに通う生活を送っていたある時、ビールを1杯飲むごとにプラスチックカップを捨てていることに疑問を持ち始めます。2015年に国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されてから、それまで以上に環境に配慮した容器包装の開発に力を入れてきた古原さんは、解決方法を模索しました。

植物資源から作るセルロースを使った「森のタンブラー」

「フランスでは使い捨てカップが禁止されていて、リユースするマイカップが普及していることを知り、“ビールがおいしく飲めて”しかも“日本らしい”マイカップを作りたいと思いました。そのための素材を探していく中でパナソニックさんとたまたま出会い、彼らが開発した環境負荷の少ない素材に着目したのが開発のキックオフです」(古原さん)

森のタンブラー
「森のタンブラー」は、うす張りグラスのような口当たりの良さ、泡立ちの良さが、ビールの味わいを引き立てる

古原さんは「落としても割れないことと、食卓でも違和感がないデザイン性の両立」を目指し “1秒でエコが伝わる”をキーワードに木目の質感や手触りにもこだわって金型を製作。うす張りグラスのような口当たりの良さと、液面が透けて見える面白さ、350ml缶ビールを注いだ時に、7:3の黄金比で泡ができる泡立ちの良さと、それに適した大きさをデザインに落とし込みました。

組織や立場を超えたパートナーシップで課題に挑戦

「海洋プラスチックなど地球規模の社会課題は、一企業だけの取り組みでは解決できません」と言う古原さん。SDGsの17の目標のなかで重視しているのは17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」。今後、社内の活動にとどまらず仲間を増やして社外連携を強化し、社会課題の解決と企業としての経済性を両立していきたいと語ります。

つくばクラフトビアフェスト
「つくばクラフトビアフェスト2019」のロゴをデザインしたオリジナルの「森のタンブラー」(左)と「つくばクラフトビアフェスト2018」の様子(右)
愛知県豊田市オリジナル森のタンブラー
愛知県豊田市の間伐材を使った「森のタンブラー」

さまざまなイベントとのコラボや、「ご当地素材」を使った「森のタンブラー」の展開を開始しており、2020年10月には愛知県豊田市の間伐材を使った「森のタンブラー」をリリース。食べられるコップ「もぐカップ」や麦の茎から作った「大麦ストロー」など、さらに新しいアイテムの開発にも乗り出しています。

「森のタンブラー」の使い心地は?ふたこビール醸造所の導入例

実際のところ、「森のタンブラー」の使い勝手はどんなものでしょうか。

東京・二子玉川のふたこビール醸造所は、「森のタンブラー」を導入しているブリューパブです。代表の市原尚子さんは「これまでイベントではプラカップを使用してきましたが、環境への影響やごみ削減の観点から問題だと思っていました」と言います。

イベントの様子
参加者が「森のタンブラー」を手にして集った“多摩川に向かってライン(列)乾杯”イベントの様子

市原さんは、二子玉川のライフスタイルショップ「蔦屋家電」内にある、パナソニックのショールーム「RELIFE STUDIO FUTAKO」(リライフスタジオ フタコ)とのつながりで、「森のタンブラー」を知りました。

「使い捨てない、というところに非常に賛同しました。薄くて軽くて圧迫感もない。泡立ちも良く、注ぎ方によっては泡がたっぷりになりすぎるほどです。オリジナルでロゴが入れられる点もいいなと思いました」(市原さん)

ふたこビール醸造所店内
ふたこビール醸造所店内

2020年春ごろからのコロナ禍で大規模なイベントが開けない中、市原さんは“多摩川に向かってライン(列)乾杯”という、ソーシャルディスタンスに配慮した少人数での乾杯イベントを定期的に開いてきました。9月9日のイベントでは「森のタンブラー」を採用。参加者はふたこビール醸造所のロゴが入った「森のタンブラー」を手に、川に向かって乾杯しました。ビールで街の新たな景色を作り出したい、と考えてきたという市原さんは「今年らしい景色が残せた」と振り返ります。

ふたこビール醸造所のボトルビール
ふたこビール醸造所のボトルビール

後日、タンブラーを持参して来店しビールをマイカップで飲まれたお客様もいたとか。価格面などのハードルもあり、イベントで提供するプラカップを全て「森のタンブラー」にするのは難しいという現実もありますが、市原さんは、お客様の選択肢の1つとして使い捨てないエコカップを導入できて良かった、と語ってくれました。

「森のタンブラー」はECサイトや実店舗で販売中!マイカップ持参の習慣は広まるか?

現在、「森のタンブラー」は、ECサイト「森タン公式ショップ」をはじめ、二子玉川の「RELIFE STUDIO FUTAKO」、ベータ(b8ta)新宿マルイ、パナソニックセンター大阪、今回取材をさせていただいた「ふたこビール醸造所」などで販売されています。ECサイトでは「森のタンブラー」の特徴の1つでもある刻印加工(文字などのプリント)が可能。ノベルティグッズとしても活用できます。ぜひチェックしてみてください。

国内では2020年7月にプラスチック製レジ袋が有料化され、使い捨てプラスチック問題に関心を持つ消費者も多くなってきているでしょう。マイバッグを持ってスーパーやコンビニに行くことが日常になりつつあるなかで、マイカップ持参の習慣は広まるでしょうか? 価格面や携帯性、利便性など今後も課題は残っていますが、お店にとってもお客様にとっても使いやすく、デザイン性にも優れたサステナブルな商品の普及が、ビール業界・飲食業界の常識を変えていくのかもしれません。

【関連ページ】Future Tide
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【参照ページ】植物繊維から生まれた世界初のエコカップ「森のタンブラー」で“脱・使い捨てプラスチック”!「つくばクラフトビアフェスト2019」で5000個展開!
【参照ページ】地球にやさしい「森のタンブラー」新たな取り組み!10月24日(土)・25日(日)愛知県豊田市の間伐材を使用したご当地タンブラー販売!

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