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この先のビアフェスは?ごみ問題は? 環境×ビール×イベント、業界3人のトークセッション

つくばクラフトビアフェスト

国内の大規模なビアフェスの1つ、「つくばクラフトビアフェスト」の実行委員会が、ビールに注目したオンライントークイベント「つくばクラフトビアフェストオンライントーク」を不定期で開催しています。2021年4月には、これからの時代に合ったビアフェスやビールの楽しみ方について語るトークセッションを生配信。今後のビアフェスの行方は? 環境問題・ごみ問題の解決策は? ビール業界に関わる3者がそれぞれ異なる立場からこの先の展望を語った、トークの一部をご紹介します!

ビールに注目したトークイベント、つくばクラフトビアフェストオンライントーク

新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、さまざまなイベントが中止・延期となり、規模の縮小やオンライン化の傾向は今も続いています。ビアフェスも同様で、コロナ前の状況に戻るのは少し先になるかもしれません。しかし、コロナ終息後にイベントが再開した時、これまでと全く同じように運営されるのがベストなのか、それとも、時代の変化に合わせてもっと別のあり方が問われているのか。イベント主催者もビール好きの皆さんも、この先のビアフェスについて思いをめぐらすことがあるのでは?

会場の様子
「つくばクラフトビアフェスト2019」の様子
写真:TCBF

2012年から2019年まで毎年開催されてきた「つくばクラフトビアフェスト」(以下、TCBF)は、全国のクラフトビールが茨城県つくば市の「つくばセンター広場」に結集する人気のビアフェスです。2020年は中止となり、現在2021年10月の開催に向けて動いています。

イベントを運営するTCBF実行委員会は、イベントに先立ってYouTubeチャンネルを開設。「つくばクラフトビアフェストオンライントーク」(以下、TCBFオンライントーク)と題して、最新のブルワリー情報や今後のイベントのあり方などビールに注目したトークイベントを動画配信しています。

2021年4月24日には、ビール業界に関わるゲストが「これからの時代に合ったビールの楽しみ方」を考えるトークセッションをライブ配信。アサヒビールでパッケージ開発者として勤務する古原さん、二子玉川・ふたこビール醸造所の市原さん、そしてTCBF代表の永田さんの3人が、感染症への対応やごみ問題、持続可能な社会を目指すSDGsなど、ビールを通して社会問題にどう向き合っていくべきかという大きな課題について語りました。この3人はそれぞれビール業界に携わり、アサヒビールとパナソニックが共同開発したリユースカップ「森のタンブラー」のプロジェクトに関わっているという共通点があります。

タンブラー
木材を使って製造されたリユースカップ「森のタンブラー」。2019年のTCBFで採用され、ロゴがプリントされたオリジナルの商品が販売された
写真:TCBF

今回は、そのトークセッションの内容の一部をご紹介します。今後のビアフェスについて考えるヒントになる内容です! 全編ご覧になりたい方は、YouTubeのTCBFチャンネルにアーカイブがありますので、動画をチェックしてください。

3者が語り合う、これからの時代に合ったビールの楽しみ方

トークセッションの様子
TCBFオンライントークの様子(YouTube画面キャプチャ)。左から市原尚子さん、古原徹さん、永田洋さん、MCの佐野匠さん

【TCBFオンライントーク「これからのビールの楽しみ方を考える」ゲスト】
古原徹さん アサヒビール株式会社パッケージング技術研究所部門で、容器包装の研究開発に従事。木材を使ったリユースカップ「森のタンブラー」や、食べられるカップ「もぐカップ」を開発し、SDGsの取り組みを主導。2021年に発売し即完売となった「スーパードライ 生ジョッキ缶」開発チームの中心人物。
市原尚子さん 東京都世田谷区の二子玉川で2014年にスタートした、ふたこビール醸造所の代表。地域の人々と一緒に庭や畑でホップを育てる活動「世田谷ホッププロジェクト」などを通じ、コミュニティ作りに取り組む。地域で開催するイベントなどで、「森のタンブラー」を採用。 
永田洋さん  2012年から開催されているビアフェス、つくばクラフトビアフェストの代表。筑波大学在学中、海外留学先でビアフェストを経験し、つくば市でもビールイベントを開きたいと仲間を募って実行委員会を立ち上げた。現在は市外からも多くの人が集まる人気イベントに成長し、地元の名物フェスになっている。

 
MC:つくばクラフトビアフェスト実行委員会 佐野匠さん
会場:「KITEN TOKYO」(天王洲「Tennoz Rim」内)
配信URL:つくばクラフトビアフェストチャンネル「第2回TCBFオンライントーク」

使い捨てカップのごみは数万個!TCBFが抱える問題

つくばクラフトビアフェスト代表 永田洋さん(以下永田さん):ビアフェスをやるうえで、これまで、大きく分けて2つの問題がありました。まず1つはごみ問題。TCBFには毎年1万人くらいのお客様が来場され、トラック3台がパンパンになるほどのごみが出ます。そのごみは何なのかというと、皿や箸もあるんですが、大量のプラカップです。個数にすると数万個。5万、6万、そのくらいの数のプラカップを使い捨てしているんです。
ごみがたくさん出ると廃棄する設備が必要ですし、廃棄にお金がかかります。負の要素がたくさんあって、それをどう減らしていけるのか毎年考えてきました。イベントをやっていく中で、ごみ問題・環境問題というのはどうしても切り離せないんです。そんな中で古原さんにお声掛けいただいて、「森のタンブラー」を導入したという経緯があります。

会場の様子
TCBFには多くのお客様が来場する
写真:TCBF

永田さん:もう1つは、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の観点から、イベントそのもののサステナビリティ、持続可能性を考えていかなければいけないという問題です。我々は全員ボランティアでやっているんですが、イベントをやるうえで人材も必要だし、お金も、モノも必要です。
環境問題に直面しつつも、イベントを成功させるために、どうやって人やお金を集めてイベントを持続するか、こういった問題がありました。

MC:使い捨てプラカップのごみがたくさん出る場面はビールのイベント以外にもありますが、古原さんは「森のタンブラー」のような使い捨てないリユースカップが必要だと考えるようになったきっかけがあったのでしょうか。

会場の様子
2019年のTCBF。お客様に「森のタンブラー」を手渡しする古原さん(左)
写真:TCBF

アサヒビール パッケージング技術研究所部門 古原徹さん(以下、古原さん):もともとは東京五輪の会場内で大量のプラカップや紙コップが捨てられるだろうと考えた時に、使い捨てのプラカップを楽しく心地よく減らしていくために繰り返し使えるリユースカップを作ろうとしたのがはじまりでした。イベント会場でも使うし、その後家庭の食器としても使えるものを作りたかったので、いろんな素材を探しました。
僕が開発に携わった「森のタンブラー」は木材を50%以上使っていて、缶ビールなどを注いでも泡が良く出るという特徴があります。2019年に、大規模なイベントとしてははじめてTCBFで活用していただきました。来場者にも非常によろこんでいただきましたし、使い捨てカップがたくさん減らせたという成果がありました。

タンブラーとビール
二子玉川・ふたこビール醸造所で導入している「森のタンブラー」

ふたこビール醸造所代表 市原尚子さん(以下、市原さん):うちも、イベントでリユースカップを使いたいということでオリジナルロゴ入りの「森のタンブラー」を導入しました。この1年間イベントがなく経験値はないんですが、今後もイベントでは「森のタンブラー」を使っていきたいと思っています。

タンブラー
「森のタンブラー」のフタ、“森タンの帽子”はビールの泡のように白くてぽってりしたカタチ。首から下げられるオリジナルネックストラップもオプションで購入可。デザインや使いやすさも魅力

リユース容器導入の壁、デポジットか買い取りか、コロナ禍の密対策

古原さん:ふたこビール醸造所さんのお客様は、常連さんが多いですよね。そういう方は、イベントのたびに「森のタンブラー」を持ってきて繰り返し使ってくれる、ということに違和感がないんですが、一見さんが多いイベントではリユースにハードルがある。ですから、2021年3月にふたこビール醸造所さんと一緒に隅田公園でビールを提供するイベントをした時には、デポジット制にしたんです。300円のデポジットを支払ってもらって「森のタンブラー」を使っていただき、ビールを飲んだ後に「森のタンブラー」を返却してくれたら返金して、返却せずに持ち帰ってもいいということにしました。

店内
二子玉川にある「ふたこビール醸造所」の店舗。来店客は地元の常連が多い

永田さん:TCBFは周辺の住民さんが多く来場します。一見さんもいれば、毎年来てくださる方もいます。デポジット制にするのか、買い取っていただくのか。そこは悩ましいところです。デポジット制って、うまく運用できましたか?

古原さん:返金作業が大変でしたよ。特に人数が多いイベントでは大変です。でも買い取っていただくことにした場合、それが理由でお客様が減ったらどうするんだと、僕がイベント主催者だったら考えてしまいます。
本当は、ごみを出さないイベントということでリユースカップ代を入場料にインクルードして支払っていただく、というのがあるべき姿なのかなと思います。

永田さん:2019年のイベントの時は、ビールと「森のタンブラー」のセットで販売して、買いたいお客様に提供していました。
その後コロナ禍になり、今まさにちょうどいい時なのかなと思っています。コロナ対策としてお客様の人数を把握するようにという行政からの要請がある中で、入場料をお支払いいただいた方に「森のタンブラー」をお渡しし、それを持っていないとビールを飲めないことにすれば入場者がカウントできて会場の密対策にもなるかなと考えています。
でもそれでお客様が減ってしまうとなるとちょっと……

市原さん:勇気がいりますね。

永田さん:そうですね。入場料をいくらにするのか、というのも問題です。

コロナ後の意識の変化

古原さん:コロナ後を見据えた問い合わせはすごく増えていて、コロナを1つの契機として、使い捨て容器の使用を減らそうという流れが加速している実感はあります。
皆さん、リモートワーク等で時間ができて、自分の生活を振り返る機会があるんだと思うんです。自分の事だけではなくて、他の人や地域の事を考える時間もできてきていると思います。

MC:市原さんは接客をしていて、お客様の変化を感じることはありますか。

市原さん:コロナ禍で増えたのは持ち帰り、量り売りです。グラウラーという水筒でビールを持ち帰る方が本当に増えました。

グラウラー
ふたこビール醸造所ではグラウラーの貸し出しも行っている。グラウラーはリユースできるため、ペットボトルやプラカップなどと違いゼロウェイストでビールを持ち帰りできる

古原さん:グラウラーのレンタルもやっていますよね。

市原さん:そうです。グラウラーは気軽に買えるんですが、結構なお値段なんです。ですから、まずは試してみたいという方に向けていろんなサイズのグラウラーを貸し出ししています。

MC:ビールの買い方のバリエーションが増えてくると、プラカップに限らず、廃棄する容器を使わずにビールが飲めることにつながっていきますね。

永田さん:「森のグラウラー」はないんですか。

古原さん:「森のグラウラー」、「森のマイボトル」、今取り組んでいます。散歩する時にグラウラーと「森のタンブラー」を持って出かけて、家族で外で飲む、というのは想像するだけで楽しいなと思っていて。今後そういう提案もしていきたいです。

押し付けではないやり方、広めるための情報発信

市原さん:グラウラーの利用も、ごみを出さないためにリユース容器をデポジットで貸し出すことも、押し付けではなく、皆さんにやっていただけるしくみややり方を考えていけたらいいなと思います。
2021年3月の隅田公園でのイベントでは、ビールを買う方の列ができてしまって、デポジットを付けて「森のタンブラー」を使っていただくことの意味を説明する時間がありませんでした。

MC:説明をしないと、なんでこういうことをやらされているんだ? となりますよね。アサヒビールさんは「森のタンブラー」について情報発信をしているんですか。

古原さん:取り組みを発信するための、オフィシャルのホームページを立ち上げています。

森のタンブラー
左から、「森のタンブラーHINOKI」、「森のタンブラー」、「森のタンブラーMUGI」。素材によって色が違う。ほのかな香りにも素材の特徴が現れる。HINOKIは国産のヒノキを、MUGIには、アサヒビールモルトの麦芽の麦芽粕が使われている

永田さん:TCBFでは、出店しているすべてのブルワリーに「森のタンブラー」について理解していただかなくてはいけないという課題がありました。素材の木の香りをどうとらえるかはブルワリー次第で、これは使いたくないという声も実際あがりました。そのイベントがただ単にビールを楽しむイベントなのか、もしくは、環境問題まで考えるのか、それも意識の問題ですが、課題でした。

市原さん:個人的な感想を言うと、「森のタンブラー」の木の香りは、使っているうちに減っていきます。買ってすぐは、すごく木の香りがするんですが2回3回と使っていると何も感じなくなります。

古原さん:「森のタンブラー」は素材の質感や香りがダイレクトに出ます。特徴をわかっていただいたうえで、使いたいと思っていただける方を増やしていくことが大事だと思っています。
「森のタンブラー」も、プラスチックを一部使っています。プラスチックが悪だというわけではなくて、それよりも、使い捨ててしまうことがもったいないというだけなので。「森のタンブラー」があって、プラスチックのリユースカップがあって、消費者が選ぶということで良いと思うんです。ごみを減らしていく、というイベント主催者の思いがまずあることが大事だと思っています。

毎年新しいことに挑戦!この先のTBCFは…

永田さん:TCBFでは毎年新しいことをやる、という方針があります。同じことを続けていても面白くないよね、ということで。できることは何でも取り入れていきます。

古原さん:今年のTCBFで使う「森のタンブラー」は、つくばの地元の間伐材で作るのはどうですか。木を間伐しに行きましょう。参加型ということで。

永田さん:いいですね。すぐやりたいです!

会場の様子
「つくばクラフトビアフェスト」代表の永田洋さん(右)、つくば市長・五十嵐立青さん(左)
写真:TCBF

トークセッションは、ふたこビール醸造所のクラフトビールを飲みながらのリラックスした語り合いになりました。withコロナ、afterコロナがどういう時代になるのか予測は難しいですが、今までの社会に再び戻ることを目指すよりも、これを機にライフスタイルを変えていくことが望ましいのかもしれません。これまでの課題を踏まえて環境に配慮し、サステナビリティを意識して、アップデートしたビアフェスが実現するのが今から楽しみです! 2021年のTCBFオリジナル「森のタンブラー」もぜひ入手したいですね。全国のクラフトビールを存分に楽しめるTCBFは、2021年10月に開催予定です。

TCBF、2021年のテーマは「散歩しながら楽しむビアフェスト」

2年ぶり10回目の開催となる2021年のTCBFは、「散歩しながら楽しむビアフェスト~Happy Hoppin’ Hopper~」をテーマに掲げて開催します。キャッチフレーズにあるHoppin’ Hopperとは「はしご飲み」「ビールの原料ホップ」「弾むように楽しく歩く」という意味を込めた造語。クラフトビールをきっかけに、青空のもと人と人がリアルに出会い、晴れやかな気持ちになってほしいという想いを込めています。消毒・検温・マスク着用・3蜜の回避などを徹底し、ソーシャルディスタンスや座席、導線に配慮した会場づくりなど、感染防止策をしっかりと講じた上での開催を目指しています。

【つくばクラフトビアフェスト2021 開催概要】
日程:
1日目10月1日(金)17:00~22:00 Last Order 21:00
2日目10月2日(土)11:00~22:00 Last Order 21:00
3日目10月3日(日)11:00~20:00 Last Order 17:00

会場:つくばセンター広場、ペデストリアンデッキ、および周辺の会場
主催:つくばクラフトビアフェスト実行委員会
共催:つくば市(つくばペデカフェプロジェクト)、つくばセンター地区活性化協議会
※新型コロナウイルス感染状況、国や行政からの指示により、開催内容が変更になる場合や、中止になる場合があります。

【関連サイト】つくばクラフトビアフェスト
【関連サイト】FUTURE Tide
【関連サイト】森のタンブラー公式ショップ
【関連サイト】ふたこビール醸造所
【関連サイト】ビアフェスのごみを減らせるか?「森のタンブラー」開発者と利用者に聞くリユースへの取り組み
【関連サイト】地域を再発見する時代、二子玉川・ふたこビール醸造所が紡ぐパブリックなコミュニティ

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