サッポロビール株式会社100%子会社のジャパンプレミアムブリュー株式会社より、2017年10月に誕生したブランド「Innovative Brewer」。
第一弾として発売した「THAT’S HOP Nelson Sauvinの真髄」「THAT’S HOP 絶妙のMosaic&Citra」は「クラフトビール」「ナショナルビール」といった既存の区分にとらわれない「新しいビールの形」としてのチャレンジだった。
販売から半年ほどが経ったが、同商品に対する反応は各方面から届き、ポジティブ・ネガティブ、さまざまなものがあったという。
ビール業界全体がダウントレンドと言われている中、2018年4月には酒税法が改正された。この変革の時期に「Innovative Brewer」ブランドが新たな一手として打ち出した商品が4月24日から販売される「ビアチェッロ」だ。
今回は「Innovative Brewer」ブランドでのマスターブリュワーである新井氏に新作「ビアチェッロ」に対する想いを語ってもらった。
括りや定義などを持つことでビールに対する視野が狭くなってしまうのではないか?
– 「Innovative Brewer」誕生にあたり、まずはこれまでサッポロビール内で展開してきたクラフトビールへの取り組みを教えてください。
新井:サッポロビールは、2015年に「クラフトラベル」というブランドで、本格的にクラフトビール市場に参入しました。2015年といえば、世間的には「クラフトビール元年」と言われるほどクラフトビールに対する認知度が大きく広まった年です。
サッポロビールとしても、ピルスナー一辺倒ではない新しいビールの楽しみ方を提供するべきだろうと「クラフトラベル」ブランドを展開していきました。
– 「クラフトラベル」に対する市場の反応はいかがでしたか?
新井:元々のコンセプトが「ナショナルクラフト」です。個性と飲みやすさを両立したクラフトビールということで、もちろん、マイクロブルワリーほど激しい個性を出すことはしませんでしたが、ヴァイツェン、IPAなどクラフトビールファンにはおなじみの定番スタイルのビールを飲みやすい形で展開していきました。正直、爆発的に売れるということはありませんでした。
ただ、その中でも2016年に出した「Craft Label THAT’S HOP 伝説のSORACHI ACE」は、少し違いました。ビールスタイルとして売り出すのではなく、「ソラチエース」というホップそのものを前面に推した、いわゆるマニア向けの商品だったんですが、ビールファンが良い反応を示してくれたんです。
「大手がクラフトビールを出すのは矛盾している」というのは、よく言われることなのですが「Craft Label THAT’S HOP 伝説のSORACHI ACE」に対する反応を見た時に「ナショナルブランド、クラフトビールなどの括りに捉われるから、上手くいかないのではないだろうか」と感じたんです。美味しいビールであれば良いわけであって、正直そのような区分は意味がないですよね。そこで「これまでのビールの既存概念に捉われない新しい価値を持つビール」として出したのが「Innovative Brewer」だったんです。
クラフトでもナショナルでもない「Innovative Beer」を作る
原料を楽しむという視点から生まれた「THAT’S HOP」シリーズ
新井:原料にこだわった商品が市場でブームを起こす中、ビールに応用してみるとどうなるだろう?と考えたところ、やはりビールでこだわるなら、まずは「ホップにこだわるべきだろう」という着想のもと、第一弾の「THAT’S HOP Nelson Sauvinの真髄」「THAT’S HOP絶妙のMosaic&Citra」が誕生しました。いろんなメーカーがフレーバーホップを使った商品を打ち出していますが、ホップが主役になっている商品って意外とないんですよね。そこで我々は、商品名に入れ込むくらいホップを主役にした商品を出しました。スタイル・値段で商品を選ぶのがほとんどという現状で、ホップでビールを選ぶ新しい価値観を与えたかったんです。
ホップのポテンシャルを楽しめるような形で作ってあるので、実はシングルホップというわけでもないんですよ。だから「スタイルはなんですか?」という質問が一番難しくて、この2商品は上面発酵なので「エールです」と答えるしかないんですよね(笑)
ビールに対する憧れは失われていない、ビアチェッロの狙いとは?
– 新商品の「ビアチェッロ」は、4月の酒税法改正に合わせてのリリースを狙っていたのでしょうか?
新井: 4月より前は発泡酒というジャンルで出されているタイプの商品ですが、酒税法改正によってビールとして販売できるようになりました。もちろん、このタイミングで出すインパクトはあるのですが、実はかなり前から開発をしていた商品なんです。酒税法改正に合わせて「ビールとして販売できるから造った」というわけではないんです。
長いスパンで見た時に、ビールは20年ほどずっとダウントレンドが続く市場なんです。今まで通りのアプローチでは回復しないだろうこの現状の中、新しいビール文化を形成するための、私達なりの大きな一手として打ち出した商品になります。
– ターゲットとしては、どのような層を想定した商品なんですか?
新井: ビールが苦手な人って、やはり苦味に対する抵抗感があるんですね。では苦くないビールなら飲むのかというと、そういうわけでもない(笑)ビールって苦いものという認識はあるので、苦いから飲まないというわけではないんですよね。だから、苦味を減らして香りづけたベルジャンホワイトとか、果汁と混ぜて苦味をマスキングしたビアカクテルは、外食では飲んだとしても、家庭ではなかなか定着しないんですよね。
一方で「ビールで乾杯したい」と思っているようなビールに対する憧れを持っている「ビールを飲まない」層は一定数いるんです。
苦味を少なくするのもダメ、甘さでマスキングしてもダメ。ではビールが苦手な人に飲んでもらうにはどうすればいいのか、再度考えた時に「苦味の質を変える」という発想に行き着きました。
グレープフルーツとオレンジの皮を使ったジューシーな苦味
– 苦味の質を変える上で、原材料にはどのような工夫をしたのでしょうか?
新井:苦味の質を変えるということで、グレープフルーツとオレンジの皮を使っています。この製法は「チェッロ」という、果物の果皮を高アルコールで漬け込んだイタリアなどでよく飲まれている「リモンチェッロ」という飲み物から着想を得ました。
一方で、ホップは独自のドライホッピング製法で添加しているので、ビールらしい香りはしっかりと感じるんです。これによって、ビールらしさはあるんだけど苦味だけちょっと違う新しいカテゴリーの商品に仕上がっています。
– 缶の色味やデザインも、今までのビールとは一線を画していると思います。パッケージに対するこだわりは、どういった部分にあったのでしょうか?
新井:ビールを敬遠する理由の1つとして、やはり「おじさんっぽい」というイメージの問題があると思います。そういった意味で、今あるビールっぽいデザインからはかけ離れたものにしたかったんです。「ビールであってビールじゃない」そんな味の特徴を、デザインでも表現することにこだわりました。
– 「ビアチェッロ」のターゲット層はどのような想定なのでしょうか
新井:若い方やビールが苦手な方はもちろんのこと、なんとなくRTDを飲んでいるような方々にも飲んでいただきたいです。「何かお酒を飲みたいけど、自分にあったものがない」と感じているような、どこにも属していないフワフワとした層が「ビアチェッロ」をきっかけにビールの楽しさに気づいてくれたらいいなと思っています。
実は、ビアチェッロ発売に合わせて、苦味をコンセプトとして、店舗プロモーションを実施する予定です。代官山のSIGN ALLDAY様とのコラボレーションショップとして、『Bitter Innovation~ビアチェッロ×SIGN ALLDAY~』を4月20日から24日までオープンしますので、ぜひ足をお運びください。一足早くビアチェッロが楽しめますし、ビアチェッロに合わせた苦みが特徴の料理もお楽しみいただけますよ。
取材後記
「Innovative Brewer」誕生の秘話から新商品「ビアチェッロ」の狙いまでマスターブリュワーの新井氏に語ってもらった。
話の中で、今後の展開にも話が及んだが、「ビアチェッロ」以降も全く新しいビールカテゴリーを創るべく、展開を考えているようだ。
酒税法改正等、ビール業界を取り巻く現状は大きく変わっていくが、本質である「美味しさ」が変わることはない。ジャンル、定義にとらわれず幅広い層が楽しめる商品として「ビアチェッロ」は新たなビールファンを獲得しそうだ。
なお、4月24日のビアチェッロ発売同日には、フレーバーホップビールカテゴリーの第3弾として 「Innovative Brewer THAT’S HOP Polaris & Apolloの魔法」も発売される。
ドイツのミュンヘンの北に位置する伝統的なホップ産地ハラタウ地方で生まれた、ミントを思わせる清涼感ある香りが特長の「ポラリスホップ」と、アメリカワシントン州にある世界有数のミントの産地ヤキマ渓谷で生まれた、グレープフルーツを思わせる柑橘系の香りが特長の「アポロホップ」を組み合わせたフレーバーホップビールだ。
ポラリスホップのミントを思わせる香りをライムのような香りに変えた、「まるでホップに魔法がかかった」ような味わいもぜひ堪能してみてはいかがだろうか。
期間限定店舗
4月24日の「Innovative Brewer ビアチェッロ」発売に先立ち、同商品の新たな苦味を料理と共に楽しむことのできる期間限定店舗が4月20日から24日まで、代官山SIGN ALLDAYとのコラボレーションによりオープンする。
【詳細ページ】苦味の概念変える店「Bitter Innovation」、代官山に期間限定オープン
「ビアチェッロ」販売店舗
以下のエリアの「ファミリーマート」「サークルK・サンクス」で販売
東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・山梨県・長野県・三重県・愛知県・岐阜県・滋賀県・京都府・大阪府・奈良県・和歌山県・兵庫県
以下の小売チェーンの首都圏エリア一部店舗にて販売
クイーンズ伊勢丹(一部店舗)、ヤオコー(八百幸成城店)
※一部取り扱いのない店舗や品切れしている場合もあります。
樽生が飲める店舗
銀座ライオン(一部店舗)
※ブランドサイト参照
【ブランドサイト】ビアチェッロ
「Innovative Brewer THAT’S HOP Polaris & Apolloの魔法」販売店舗
以下のエリアの「ファミリーマート」「サークルK・サンクス」で販売
東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・山梨県・長野県・ 三重県・愛知県・岐阜県・滋賀県・京都府・大阪府・奈良県・和歌山県・兵庫県
以下の小売チェーンの首都圏エリア一部店舗にて販売
クイーンズ伊勢丹(一部店舗)、紀ノ國屋(一部店舗)、ヤオコー(八百幸成城店)
※一部取り扱いのない店舗や品切れしている場合もあります。
【ブランドサイト】Innovative Brewer THAT’S HOP Polaris & Apolloの魔法
山下 貴將
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