めくるめく美を味わって。花とクラフトビールの世界

ビールの苦みや香りを決定付ける原材料といえば、ホップですが、その和名をご存じでしょうか?ホップは「毬花」と書き、「まりばな(まりはな)」、または「きゅうか」と読みます。

見た目は黄緑色の小さな松ぼっくりのようですが、丸みを帯びた雌花の愛らしいイメージに合う、素敵な名前ですよね。

そんな、花のようなホップだけではなく、実際に花を材料に加えてつくられているビールが豊富にあります。今回はその中から、おすすめをいくつかセレクトしてみました。

花が使われているビール

コメディ バイオレット/スカセネス醸造所(ベルギー)

香り付けに、なんと、すみれの花を使ったホワイトビール。一口だけで、想像以上に甘やかな香りが立ちのぼります。味わいを色に置き換えて表現するなら、まさに「うす紫色」の淑やかさ。後味には、際立つ甘みの中にも、ほのかな苦みが感じられます。驚くほどに香りが長く残ります。

※画像引用元・ビールについて:http://www.worldbeer.co.jp/beer/belgium/index.html

ファントム・ピサンリ/ファントム醸造所(ベルギー)

ピサンリとはフランス語でタンポポのこと。醸造所のダニー・プリニオン氏が、自ら摘んだというタンポポの花を使った限定ビールです。原材料に「乾燥タンポポ」の文字を、私はこのビール以外で目にしたことはありません。アルコール度数8%でしっかりと引き締まった、爽やかなセゾンビールです。

※画像引用元・ビールについて:http://sugaya-beer.com/shop/item_detail?category_id=54083&item_id=2176944

たんぽぽゴールドIPA/伊勢角屋麦酒(三重)

こちらもタンポポですが、花ではなく、タンポポの「花酵母」を使用。花酵母を使った伊勢角屋麦酒の人気シリーズにIPAが登場です。

タンポポの花酵母による、フルーティーな香りが特徴的。酸味に似たみずみずしい香味をかすかに感じるのは、記憶の中の、野に咲くタンポポに思いを馳せるからでしょうか。IPAらしく苦みの効いたジューシーな味わいです。

※画像引用元・ビールについて:https://www.biyagura.jp/ec/products/280

さくらゴーゼ/湘南ビール(神奈川)

こちらは「ゴーゼ」、酸味のあるスタイルのビールです。通常、ゴーゼには塩が使われますが、さくらゴーゼは塩のかわりに「桜の塩漬け」を使っているそうです。軽やかで、優しい酸味と塩味がリフレッシュにぴったり。

スパークリングワインがお好きな方にもおすすめできます。ほのかな桜の風味が印象的です。

※画像:筆者撮影
※ビールについて:http://www.kumazawa.jp/shonan-beer/

番外編

TART/ソーンブリッジ醸造所(イギリス)

ボトルにご注目ください。魅力的な美女がいます。こちらのシリーズは、実際に花が使用されているわけではありませんが、神話に登場する春と花の女神「フローラ」がラベルに描かれていて人気があります。

ソーンブリッジ醸造所といえば「ジャイプルIPA」が有名ですが、他にもラガー、ペールエール、インペリアルスタウトなど多様なスタイルで実力を誇ります。個性豊かなラインナップは、まるで女神がもたらす豊穣を象徴しているかのよう。どのビールをとっても確かな美味しさで、イギリスをはじめ世界のビール好きから愛されているのも納得です。

中でも私のお気に入りは「TART」、サワーエールです。きりりとしたレモンの酸味と苦味に、喉が心地よく刺激されます。ちなみに私が飲みながら読んだラベルには、ギャラクシーホップ使用と書いてありましたが、ホップ由来のグレープフルーツのような香りも楽しめます。

※画像引用元・ビールについて:https://whisk-e.co.jp/products/tart/

おすすめのおつまみ

花を使ったビールと一緒に、バラの形をした餃子はいかがでしょうか。用意するのは普通の餃子の材料でOKです。包み方を変えるだけで、一気に華やかな表情になります。

作り方は簡単です。まず、餃子の皮を、端が少し重なるように横に3~5枚ほど並べます。皮が重なる部分には水をつけて接着します。餡は少量を取り、皮の中央部に横たえるようなイメージで、棒状に細長く置きます。

餡を挟み込むように下から上に向かって皮を持ち上げ、半分に折りたたんだら、端からくるくると巻きます。巻き終わりにも水をつけ、皮が剥がれないようにしっかりと留めます。バラの花に見立てて形を整えますが、この時、花びらに似せるため、ところどころ皮をめくるのがポイントです。

ごま油を熱したフライパンに、餃子を並べます。少量の水を入れ(水が跳ねるので注意してください)、蓋をして、中火で蒸し焼きにします。少し焼き目がついたら蓋を取り、強火で焼き上げれば完成です。

餃子とビールの相性は最高ですよね。お好みの餃子のたれを用意して、ビールタイムを満喫してください。ひと味違うたれをお探しであれば、お酢のかわりにバルサミコ酢を選んで醤油と合わせるのもおすすめです。また、もし濃厚さが欲しい場合は、卵黄と柚子胡椒を混ぜ合わせたたれでお召し上がりください。コクが加わり、餃子のジューシー感を楽しめます。

気になるビールはありましたか?今回ご紹介したビールは、限定醸造や完売などの理由で、入手が難しい場合もありますので、あらかじめご了承ください。

ビール好きな皆さまにとって、一週間でビールを飲むのに最適な日といえば「花金」ですね。一括りにビールといっても、このように多彩なビールがありますので、たとえ金曜日でなくても「花に呑み酒に臥す」シーンをもっと日常に取り入れてみるのも良いかもしれません。一日の終わりに花を買って帰る日のように、きっと私たちの気持ちに潤いを与えてくれることでしょう。ぜひ、クラフトビールの多様性を感じてみてください。

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Mariko

宮崎県出身。ビールと音楽の話になると急に喋りはじめる。九死に一生を得た経験から日常は数えきれないほどの奇跡でできていると知る。ビールがもたらす楽しみをいかに増幅させるかが興味の焦点。シャイの極みなのにクラフトビールのおかげで人や場とのストーリーが急速に紡がれつつあり、ドラマチックな人生に困惑中。

よなよなの里