クラフトビール エッセイvol.2「タイのクラフトビールが今アツい!」

「チョンゲーオ!」

チョンゲーオとは、タイ語で乾杯を意味する。

バックパックでタイへ行ったのも、確か20歳の頃だった。もう4年も前のことになる。

初めて訪れたのは高校3年生の夏。国際ボランティアに参加して、約1週間ほど現地の村にホームステイをさせてもらい、植林などのボランティアをさせてもらった。その時に仲良くなったのが、村の青年のピピだ。青年といっても、年は僕の5つ上で、今年で29歳にもなる。そのボランティア以来、SNSで連絡を取り合っており、ちょうど4年前の夏、タイに訪れた際に久々の再会を祝して乾杯することになった。

「まさか、レツと乾杯できる日が来るなんてね。立派になったもんだ。乾杯はビールでいいかい?」

僕は笑顔で頷き、ピピがビールを注文してくれた。ピピは相変わらずで、見た目も変わっていなかった。黒い肌にスラッとした体格で、手足が長く見える。爽やかな笑顔とは裏腹に、伸びた襟足がさらに暑さを感じさせた。

可愛い獅子のロゴが入ったビールが運ばれて来た。と思ったら、同時に器に盛られた氷が一緒に運ばれてきた。日本でいう、水割りセットが来たので僕はきょとんとする。

「こっちでは、このシンハービールに氷を入れて飲むんだ。冷やして、味を薄めてガンガン飲むんだよ」

ピピはそう言って、僕の分の氷も準備してくれている。

「チョンゲーオ!」

乾杯という文化は、なぜか全国共通だ。というよりも、酒飲み共通なのかもしれない。

グラスを軽くぶつけ合うことで、いくらか心の距離が近くなった気がしなくもない。もちろん、気のせいだが。

タイでビールを飲むのは初めてで、ゆっくりと口元へ運ぶと、強めの麦の香りが立ち込めてくる。雪を思わせるようなきめ細かな真っ白い泡立ちと、氷を入れたことによる冷たさが、さらに喉を乾かせた。グッと一口飲むと、薄めていることもあり物足らず、ゴクゴクと飲み干してしまう。

「美味い」

思うより早く、声に出ていた。深いコクと美味しい苦味の後に、すっきりとした後味が締めくくる。この気温で飲むには、ピッタリすぎた。

「そうだろう? シンハーは日本のビールとも味が似ているらしい。それに、優秀なビールだしね」

「優秀なビールって?」

「この鳥のマークは神鳥ガルーダといって、王室の象徴なんだ。特に優れた製品しかこのマークは与えられない」

ピピ曰く、銀行などにもこの鳥のマークが使われているらしい。それほどキチンとした称号なのだろう。そのうち僕にも与えられるはずさ、とピピは軽口を叩いた。

「そういえば、一人でアジアを回っているのかい?誰かと一緒じゃなくて?」

「そうなんだ。日本では、なかなか気の置けない友人を作るというのは難しい」

「それでいい気もする。気の置けない友人なんてのは、そう簡単に出来るものじゃないし、そう簡単に出来てしまってはいけない」

「どうして?」

「アルコールと友情は一緒なんだよ。酔えば仲間意識に溺れる」

ピピは短く言い切った。

「このご時世、ネットやらSNSやらで上辺の付き合いばっかりじゃないか。みんなで集まったり、みんなで何かをしてみたり。ただそれだけの関係を友達だったり、友情と呼んだりする。でも、そいつらはお互いの生い立ちすらも知りやしないんだ。言うなら最近の友情とやらは、このビールよりも薄味だね」

そう言ってピピは、グラスにビールを注ぐ。どこか寂しげに見えたその表情は、僕より何年も社会を経験しているからなのだろうか。ビンが空になったので、新しくもう一本注文する。

「そういう僕らも、まだお互いの生い立ちを知らない」

事実だった。僕はピピの生い立ちを知らないし、ピピも僕の生い立ちを知らない。先の話でいうと、僕らも薄味の友情だ。

「そんなの、これから知ればいいじゃないか」

その一言に、内心ずるいと感じながらも、笑顔で言い放つピピは憎めない。今日は長い夜になりそうだ、と適当な相槌を打ち、少年時代の記憶を海馬から引きずり出す。カラン、と氷が溶ける音が妙に心地よく感じた。

日本からも半日かからず行ける!タイのクラフトビールが今人気!

シンハービール

1933年にタイで生まれ、王室にも認められた由緒あるプレミアムビール。

一番搾りから醸造され、独特で豊かな味わいが加わったビールは、アジアンスタイルならではのバランスの取れたスパイシーな味わいを持ち、時には華やいだ気分をさらに盛り上げるアイテムとして、愛され続けている。

ラベルに刻まれた古代神話に登場する伝統的な獅子をシンボルとし、今では世界50カ国の様々なシーンで楽しまれ、「世界の一流ビール500」にもランクイン。タイ王室にも認められた唯一のビール。東南アジアの暑い気候や辛い料理に合わせて、ガンガン飲めるよう薄味の仕上りに。まさにこれからの時期に飲んで欲しいビール。

首都バンコクでは、世界のクラフトビールが飲めるようになってきており、クラフトビール人気が徐々に熱気を帯びてきている。大手メーカーのシンハーもクラフトビールに進出しており、シンハー直営店のEST.33でエールやブラックビールなどを味わえる。洒落た雰囲気の店内で飲むローカルのクラフトビールは格別だ。

Mahanakhon White Ale

ホワイトエール。淡いオレンジ色のボディに綺麗な薄い白い泡立ちが特徴。レモンやオレンジピールのほのかなアロマにシトラシーなフレバー。暑いタイでは飲みやすいクラフトビールが多く受け入れられるのだろう。

LAMZING STICKY MANGO

タイを代表する果実、マンゴーとココナッツを使ったクラフトビール。
他にも「A GO-GO IPA」や「FULL MOON BUSSABA EX WEISSE」など、様々なクラフトビールが今、タイではアツい!

日本からも遠くなく、飛行機も安ければ往復1~2万円で行ける距離にあるタイ!

何より、パッタイやグリーンカレーなどのタイ料理はビールにめちゃくちゃ合うのです。

日本でもネットでアジアのビールは買えたりしますが、やはり現地の空気を感じて、本場の料理と一緒に飲むのには敵わない!

ぜひ皆でご唱和をお願いします。「今度の休みは、タイに行きタイ!」

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白川 烈

1994年生まれ。 小中高でのいじめや自殺未遂など自身の経験をキッカケに、 20歳の頃より全国各地での講演活動やエッセイを通した執筆活動を行なっている。”なんてことのない ただの日常のなかにこそ、普遍的でたいせつなものが佇む”をコンセプトに「 #DAYSTORY 」というエッセイ集を執筆中。基本的に大阪に生息中。関西の方、ぜひクラフトビール飲みにいきましょう。

よなよなの里