2023年5月27日(土)・28日(日)、埼玉県東松山市にあるコエドブルワリーの醸造所敷地内で、キャンプ型音楽フェス「麦ノ秋音楽祭」(むぎのときおんがくさい)が開催されました。
芝生の上でCOEDOビールを飲みながら、アーティストを身近に感じられるステージでライブを満喫できる「麦ノ秋音楽祭」。会場の一画にある農園では、このイベントの開催期間中にちょうど“麦ノ秋”(麦の収穫期)を迎えて大麦がたわわに実り、“黄金の麦畑”で祝杯をあげる企画でした。訳あって“黄金の麦畑”を目にすることはできませんでしたが……イベントに参加して、コエドブルワリーが麦の自家栽培に取り組む理由を聞いてきました。
ビール×音楽×キャンプ!「麦ノ秋音楽祭2023」
「麦ノ秋音楽祭」は昨年秋に続いて2回目の開催となるフェス。コエドブルワリーの広大な醸造所敷地内に、ライブステージやフードブース、キャンピングエリア等が設けられ、来場者は芝生の上で音楽を聴いたりビールやフードを飲んで食べたり、ステージから流れてくる音楽をBGMにテントでまったり過ごしたりと、ビールと自然とエンタメを堪能できるイベントです。
ビールのラインナップは?イベント限定醸造ビールも
まずは、当日提供されていたビールのラインナップを紹介。
会場で提供されたのはもちろんCOEDOビール。開催初日の午後にドラフトで飲めたのは、定番ビールから「瑠璃」(Pils)、「伽羅」(IPL)、「漆黒」(Black Lager)、「白」(Hefe Weizen)、「紅赤」(Imperial Sweet potato Amber)。定番銘柄はボトルでも販売されていました。
イベントならではの特別なビールも。「JAPAN PALE ALE」は日本の柚子と米を使ったペールエールで、海外向けの商品のため普段はなかなか国内で飲めないというレアなビール。SPITZの草野マサムネさんが担当するラジオ番組とコラボした「美メロ」(ORIGINAL AMERICAN-STYLE PALE ALE)は、6種類の麦芽を組み合わせた重厚な味わい。そして、このイベント用に限定醸造された「音ト鳴」(おととなり)も人気でした。
「音ト鳴」は、ホップ不使用! オーガニックのマカと、高麗人参、レモンを使い、ベルジャン酵母のフルーティーなアロマが楽しめます。“フェスで楽しめるビール”がテーマで、飲むことで元気になれるエナジードリンクのようなレシピ。アルコール度数は4.0%と控えめ。苦味のないスッキリした新感覚のフレーバーで、ビールが苦手な方にもおすすめしたくなる味わい。
会場では「音ト鳴」のパッケージ商品の販売はありませんでしたが、このイベントに向けたクラウドファンディングの返礼品として缶商品が数量限定で製造されました(クラファンは2023年5月30日に終了)。ラベルは、今回のフェスにも出演したライブぺインティングパフォーマー・近藤康平さんが手掛けたもの。
フードブースは、埼玉県日高市にある豚肉専門店「サイボク」や東松山の「もつ煮のまつい」などの埼玉ご当地グルメ、麦ノ秋音楽祭オフィシャル食堂など、ビールに合うフードが充実!
パフォーマンスを間近で体感できるステージ
ライブエリアのメインステージ、「エールステージ」でパフォーマンスしたアーティストは2日間で12組。DAY1のトリは埼玉にゆかりが深く、コエドブルワリーでコラボビールをリリースしたこともあるACIDMAN、DAY2のメインアクトは前回に引き続きUAさん。アーティストを身近に感じることができる親密な空間で、ビールを飲みつつライブを楽しみました!
アウトドアイベントならではのアトラクションもあり、サッカーダーツや、木製のピンを倒すスポーツ「モルック」は親子連れで盛り上がっていました。各種ワークショップやコエドブルワリーの醸造所見学ツアーも盛況。
黄金の麦畑で祝杯、は叶わず
イベント名にある「麦ノ秋」=「麦秋」(ばくしゅう)とは、5⽉から6⽉の⻨の収穫期を表す初夏の季語。このイベントは“エンターテイメントの中に、農業と自然に楽しく出会えるタッチポイントをつくりたい”というコエドブルワリーの想いからはじまり、昨年(2022年)11月に初開催した「麦ノ秋音楽祭」では、敷地内の農園で来場者と一緒に麦の種をまきました。今回のイベントではまさに麦秋の時期・初夏に収穫期を迎えた麦畑で祝杯をあげる……はずでした。
ところが当日会場に行ってみると麦はすでに収穫済みで、一部を残してほぼ無し。
実は、想定していたよりも麦の成長が早かったため2週間ほど早く収穫期がきてしまい、麦の品質を優先してイベント前に刈り取ることになったのだとか。イベントサイトにはコエドブルワリーを運営する株式会社協同商事代表取締役社長・朝霧重治さん自らトラクターを運転して、収穫作業にあたる動画が公開されています。
大麦の有機自家栽培に挑戦、コエドの取り組み
“黄金の麦畑”を目にすることはできませんでしたが、そもそも、コエドブルワリーはなぜ大麦の有機自家栽培に取り組むのか。株式会社協同商事 広報 兼 麦ノ秋音楽祭実行員会の田邊真さんにお聞きしました。
コエドブルワリーは、1970年代から続く埼玉県川越市の有機農産物専門商社・株式会社協同商事が設立母体。地元の農家とともに有機農業に携わってきた歴史があります。川越の農家は、土づくりのため麦を植える農法を古くから行い、近年では麦は収穫せず畑に鋤き込んでいました。この麦を活用してビールを造ろうと着想したのがコエドの原点です。
しかし当時、川越の麦を使ったビール造りは麦芽製造の段階で頓挫。1996年に、川越名産のサツマイモを原料にしたビール(発泡酒)を開発しコエドブルワリーがスタートしました。形状などを理由に規格外品となったサツマイモを活用したビール「紅赤」は、今もコエドの定番商品となっています。
創業以来、地元の農業と深くかかわってきた協同商事コエドブルワリー。ビールメーカーとして醸造を担ってきましたが、ビールの主原料となる麦やホップはほぼ輸入品だという現状や、日本の有機農業の持続的な活動について課題を感じてきました。そんな中、2016年にメインとなる醸造所を埼玉県東松山市に移転。広大な敷地の一部に実験農場を設けて2019年ごろから麦の自家栽培に挑戦しはじめます。
「ここは元は企業の研修施設で、この場所(現在自家農園になっているエリア)はグラウンドとして活用されていました。雑草も生えないような土地だったので、まずは土づくりからはじめました」(田邊さん)
朝霧社長が自ら開墾して、土づくりからスタート。アメリカ・オレゴン州から取り寄せた種から種取をして挑みましたが2020年にはほぼ収穫なし。2021年には20キロほどの収穫を得ました。テスト栽培など試行錯誤を経て収穫量を増やす道筋が見えてきた2022年秋、「麦ノ秋音楽祭」で来場者と一緒に種をまき、麦は順調に育って2023年5月に収穫期を迎えました。
今年の麦の収穫量は、だいたい860キロほど。製麦(麦を発芽させてモルト[麦芽]に加工する過程)をどう行うかなどクリアしなければならない問題はまだ残っていますが、今後、この土地で収穫した麦でビールを造りたいというプランがあるそう。
「これから先、原料の自給率をあげる方法を考えなければいけないと思っています。輸入品に依存するのではなく、少なくとも選択肢として、国産の原料があることは大事です。コエドブルワリーでは毎年、山梨県北杜市のホップ農家さん(「小林ホップ農園」)が栽培した国産フレッシュホップのビールを造っています。ホップは適地にお任せするとして、麦の栽培については埼玉の風土は向いているほうなので、まだ具体的な事業計画まで至っていませんが、今後は周辺の耕作放棄地も活用して地元で麦を生産していきたいという考えがあります」(田邊さん)
日本各地にマイクロブルワリーができ、地域の農産物を副原料にしたビールは多くリリースされていますが、ビールの主原料である麦芽やホップは輸入品を使うケースがほとんど。国内で自給するのはさまざまな局面でハードルの高い挑戦ですが、コエドの自社農園・有機栽培の取り組みに今後も注目です。
次回開催は11月!麦の種まきも予定
「麦ノ秋音楽祭」は、次回2023年秋の開催が決定しました!
日程は、
「麦ノ秋音楽祭2023」次回日程
2023年11月11日(土)・12日(日)
今後、詳細な情報が出るの待ちましょう!
秋のイベントでは麦の種まきも行われる予定。自分で蒔いた麦の種が収穫期を迎え、ゆくゆくはビールとなって飲めるかもしれません。すでに「超早割」チケットは受け付けを終了していますが、特にキャンプエリアのチケットはかなり人気なので早めの予約がおすすめ。公式ページやSNSをチェックしてください。
【関連サイト】
「麦ノ秋音楽祭2023」公式ページ
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【埼玉】キャンプ型音楽イベント「麦ノ秋音楽祭2023」、COEDOクラフトビールブルワリーで5/27-28開催!