デザインでビール界を盛り上げる!ビアイラストレーター・イソガイヒトヒサさんが語るビール愛

イラスト
イソガイさんのアイコンのようなキャラ
イラスト:イソガイヒトヒサ

どことなくふんわりやさしい、ビールを片手に泡のようなヒゲをたくわえたお兄さん(おじさん?)のイラスト。クラフトビールが好きな方ならどこかで見たことのある画風ではないでしょうか。今回は、ビールメーカーのアートワークを多く手がける人気イラストレーター・イソガイヒトヒサさんに、現在の仕事を方向付けたクラフトビールへの思いを語っていただきました。“ビアイラストレーター”となるまでの道のりや、イソガイさんが今注目しているブルワリーの情報も!

おいしいビールをイラストに!

「おいしいビールをイラストに」をコンセプトに活躍するビアイラストレーター・イソガイヒトヒサさん。ビールのパッケージやロゴ、グッズのデザインをはじめとしたビールメーカー各社のアートワーク、雑誌『ビール王国』の連載記事「〆のビール」などなど、作品やお仕事は多岐にわたります。

ホートレート
ビアイラストレーター、イソガイヒトヒサさん。2019 年12 月に開催された「ビールに溺れる展」で
写真: @reichelagogo

イソガイさんは、いかにしてビアイラストレーターになったのか? その道のりについてうかがうと、イソガイさんの深いクラフトビール愛が浮かび上がってきました。

お酒といえばビール。クラフトビールにハマったきっかけ

イソガイさんはお酒を飲める年齢になってから、飲むのはもっぱらビールばかり。おもに大手ビールメーカーのビールを飲んでいました。

「僕がビールを飲み始めた頃は、まだ日本にクラフトビールが広まっていなかったんです。海外のものでも、レストランでギネスやシメイを提供している店が少しある程度だったと思います」

イソガイさんは学校を卒業後、デザイナーとしてアパレルメーカーに勤務しました。クラフトビールとの出会いは20代半ばから後半ぐらいの時のこと。

イラスト

イソガイさんがクラフトビールにハマるきっかけになったベルギービール「Duvel」
©イソガイヒトヒサ

「新橋の路地裏にある焼き鳥屋さんに行ったんです。狭い店なんですけど、そこがたまたまベルギービールを出すお店で『Duvel』や『VEDETT』を提供していました。それまでにも海外のビールを飲んだことはあったんですが、ビールの状態が良かったのか雰囲気が良かったのか、すごくおいしい! と思って。それからいろんな店にベルギービールを飲みに行くようになりました」

まずベルギービールにハマり、日本でクラフトビールの人気が高まっていくにつれてさらにビールへの興味が増しました。グラスについてのセミナーや試飲のイベントに参加したり、ついにはビアジャーナリスト協会が主催するビールの学校「ビアジャーナリストアカデミー」に通いビールについて学びました。

クラフトビール業界で仕事を

当時勤めていた企業でのイソガイさんの仕事の守備範囲は広く、なんでもデザインできることが強みのひとつでした。

「なんでもできるということは、良い部分と悪い部分があって。自分自身、“なんでも屋さん”のような一面にちょっと疑問を感じ、どうせだったら好きなことをやろうかなと考えていました。ビールがすごく好きで、ちょうどクラフトビールが盛り上がってきていたし、今ならビールの世界でやっていけるんじゃないかと。独立を決めました」

キャラクター
イソガイさんの分身のようなキャラ
©イソガイヒトヒサ

「クラフトビールの良さは、アートやデザインの面白さにもあると思う」というイソガイさん。ビールの醸造にも興味はあったものの、それまでのデザインの経験を活かしてビール業界にたずさわる道を模索し始めます。

ビアイラストレーター誕生!ヤッホーブルーイングとのつながり

クラフトビール界で仕事をするための前準備として、イソガイさんは独立する半年くらい前にビールのイラストを投稿するためのSNSアカウントを作りました。

ビールのイラスト
ヤッホーブルーイングのビール「よなよなエール」。イソガイさんはビールのイラストをSNSに投稿し続けていた
©イソガイヒトヒサ

イソガイさんは長野県佐久市出身で、偶然にも「よなよなエール」や「水曜日のネコ」「インドの青鬼」などのビールで知られるブルワリー・ヤッホーブルーイングの醸造所がご近所。実家が近いということで親しみがあったので、仕事帰りにコンビニでよくヤッホーのビールを買って飲んでいました。最初にビールの仕事をするならぜひヤッホーさんと、と考えて粛々とヤッホーのビールのイラストを描き、投稿しました。

「ハッシュタグをつけて、ひたすらヤッホーブルーイングさんのビールのイラストを投稿し続けたんです。そのうちにヤッホーさん側に“この人なんなんだ?”と気が付いてもらい、ちょっと会いませんか、とメッセージをいただきました」

ヤッホーブルーイングイラスト
ヤッホーブルーングとつながるきっかけになったイラスト。この後、イソガイさんの作品がヤッホー主催イベントのステッカーやポストカードに採用されることに
©イソガイヒトヒサ

SNSに投稿していたイラストがヤッホーブルーイング主催イベントのステッカーやポストカードに採用され、それがイソガイさんのビアイラストレーターとして最初の仕事となりました。

ブルワリーやビアパブのアートワークを担当、パタゴニアとの出会い

それ以降のイソガイさんの活躍は、ビール好きの方ならご存知の通り。ヤッホーブルーイングとの仕事も継続し、マイクロブルワリーやビアパブのアートワークも手がけています。

Tシャツとグラス
イソガイさんの作品。2018年「遠野ホップ収穫祭」のTシャツ(左)、ビアバー「クラフト麦酒酒場シトラバ」のパイントグラス(右)。アパレルやグッズのデザインも多数手がける
写真:イソガイヒトヒサ(SNSより)
雑誌
ビール専門誌『ビール王国』の連載コラムも担当

そんなさまざまな仕事のなかでイソガイさん自身が印象に残っている仕事のひとつが、アウトドアウェアブランドのパタゴニアとのプロジェクト。

パタゴニアビールギフト
パタゴニアは環境負荷の少ない、持続可能な農業や調達方法を支援する食品コレクションを発表しており、多年生穀物「カーンザ」を使ったクラフトビール「パタゴニア プロビジョンズ ロング・ルート・クラフト・ビール」を販売。ギフトセットはイソガイさんがイラストを描いたケースで届く
写真:イソガイヒトヒサ

パタゴニアが製造販売しているクラフトビールのプレス発表会に参加したことで声がかかり、イソガイさんはギフトボックスのイラストを担当することに。パタゴニアは環境問題に真摯に取り組んでいる会社で、この仕事をきっかけにイソガイさんは環境問題やアウトドアのジャンルに関心を広げました。いずれもクラフトビールとの相性が良いテーマで、今後さらに注目していきたいと語ります。

イソガイさんの推しブルワリーは?

ビール業界で活躍し、ビアフリークでもあるイソガイさん。今注目しているのはどんなブルワリーでしょうか。

ビール
KUNITACHI BREWERYの「たまらん坂 Hazy IPA/坂下ver.」は、東京都文京区のブルワリー・カンパイ!ブルーイングとコラボしたビール。ほとんどのビールに坂の名を付けているカンパイ!ブルーイングのメソッドにそって、国立を代表する坂でRCサクセションの曲名としても知られている「たまらん坂」をビールの名に

ご紹介いただいたのは、東京都国立市で2020年にスタートしたKUNITACHI BREWERY。大型・小型の醸造タンクを備え、さまざまなスタイルのビールを醸造しており、日本ではあまり造られていないレアなビールも楽しめます。アルコール度数を抑えながら飲み応えのあるビールもラインナップ。

フライヤー
イソガイさんがイラストとデザインを担当したKUNITACHI BREWERYのビールのフライヤー。「1926」(右)の名の由来になっている1926年は国立駅が開業した年で、イラストには旧国立駅舎が描かれている。ビールスタイルはケルシュ。「世界は点滅するモザイク模様のように」(左)は、アメリカのホップ「モザイク」を使ったセッションヘイジーIPA

KUNITACHI BREWERY醸造長の斯波克幸さんは音楽に造詣が深く、ビールの名前や解説文はポエティック。イソガイさんはボトルやWEBサイトのデザインなどアートワークを担当し、ブルワーの世界観に寄り添って、これまでとはイラストのタッチを変えて作品を仕上げています。

「今までは描いてこなかったような感じで、少し写実的というか、描き込みが多いというか。いろんなイメージを持ち寄ってすり合わせていったときに、音楽のアルバムのジャケットや小説の表紙、アニメのような印象のイラストにしたい、という方向性が決まったんです」

ビールのおいしさだけではなく、ラベルのイラストや解説文からイメージやストーリーを楽しめるKUNITACHI BREWERYのクラフトビール。各地のビアパブでも飲めますが、確実に味わえるのはJR国立駅南口から徒歩1分の「SEKIYA TAP STAND」。隣接する酒販店「酒ブティックせきや」ではボトルを扱っています。また、醸造所併設のレストラン「麦酒堂鎹(かすがい)」が2021年6月にオープン。こちらでは、KUNITACHI BREWERYのクラフトビールとビールに合うお料理が楽しめます(いずれの店舗も新型コロナウイルスの感染状況などにより営業時間や販売スタイルは変動します。営業状況などはKUNITACHI BREWERYのホームページやSNSでご確認ください)。

“ビール枠”がつないだ縁、イソガイさんのビール愛

コロナ禍に入り、ビアパブの営業時間短縮が続いたりイベントの中止が相次ぐ中、イソガイさんは似顔絵で参加するビアフェス「イラスト乾杯フェス」を企画。新たなビールイベントの在り方を提唱しました。ビール好きのミュージシャン宮武弘さんが作った楽曲「ビールのおかげ」とのコラボビールのデザインなど、ジャンルを超えたプロジェクトにも参加して活動の場を広げています。

イベント
似顔絵で参加するビアフェス「イラスト乾杯フェス」のスピンオフイベント「イラスト乾杯“空き地”フェス」の様子
写真:@YUBOPHOTO

「パタゴニアさんとのお仕事も、僕は“ビール枠”で採用されたんです。僕がビールというジャンルに絞っていなかったら一緒にお仕事をさせていただいてなかったんじゃないかという気がします。僕はビールのことなら勉強することも全然苦じゃありません。好きなことに対するパワーのすごさも実感しているので、関心のある事を仕事にしてしまった方が僕の場合は上手くいくと思っています」

イラストやデザインでビール業界に新たな価値を生み出すイソガイさん。その原点にあるビール愛に触れると、クラフトビールのもつ魅力に改めて気づかされます。イソガイさんの今後の活動にますます注目です!

【関連サイト】イソガイヒトヒサさんホームページ
【関連サイト】KUNITACHI BREWERY
【関連サイト】新発想のビアフェス!似顔絵で参加する絵の中のイベント「イラスト乾杯フェス」

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