「ビール片手に、なんかやろう。」京都・福知山の旧銀行跡地に開業するブルワリー「CRAFT BANK」創業者の思い

京都府の北部に位置する福知山市を拠点に、昭和10年に誕生した旧銀行跡地を利用して新たなクラフトビールブランド「CRAFT BANK(クラフトバンク)」を手がける創業者の羽星大地さんと庄田健助さん。現在、応援購入サイト「Makuake」では、CRAFT BANKが手がけるクラフトビールが先行販売されています。今回は、創業者のお二人にCRAFT BANK設立のきっかけや今後の目標について、お話を伺いました。

福知山の旧銀行跡地で、クラフトビールに携わりたい

京都市内から電車で約2時間の場所にある福知山市は、戦国武将・明智光秀が築いた城下町として世界中から多くの観光客が訪れる場所です。

株式会社CraftBank CEO / 羽星大地さん

創業者の一人である羽星大地さんは、そんな歴史ある福知山市で生まれ育ちました。大学進学と同時に横浜に移り住み、卒業後も5年ほど東京で仕事をしていましたが、「地元で大好きなクラフトビールの事業を始めたい」との強い思いから、約2年前に故郷の福知山市にUターン移住しました。

「東京で働いていたとき、仕事仲間と足を運んだブリューパブで、前向きに頑張る人がクラフトビールを飲んでイキイキしていたんです。それを見て、ビールをきっかけにたくさんの人が集まって、どんどん挑戦していけるような場所を福知山に作りたいと考えました」と、地元・福知山でクラフトビール事業を始めるに至ったきっかけを教えてくれました。

株式会社CraftBank CFO / 庄田健助

もう一人の創業者である庄田健助さんは、兵庫県出身。北海道大学で建築や都市計画について学んだ後、「東京や大阪の大規模な再開発ではなく田舎のローカルな商店街を活性化させたい」との思いから、近畿地方を中心とした商店街の再開発に携わってきました。

「就職して僕が初めて担当した場所が福知山だったんです」

そう語る庄田さんは、仕事を通して福知山とのつながりが広がっていったといいます。そして「他にいい場所はたくさんあるけれど、福知山ほど人の顔が分かる場所はありません。せっかく夢だったクラフトビール事業を行うのであれば、人との距離が近く、知り合いが多い福知山でやりたいと思いました」と、福知山でクラフトビール事業を始めた理由を教えてくれました。

craft-bank,2022

2022年5月には、福知山に昭和10年創業の旧銀行跡地を利用した新たなクラフトビールブランド「CRAFT BANK」をオープン予定のお二人。3階建ての施設で、1階にはクラフトビール醸造所とでき立てのクラフトビールを楽しめるブリューパブ、2階・3階にはビール片手に作業ができるコワーキングスペースやイベントスペースを併設する予定です。

もともと、クラフトビール事業を立ち上げようとしていた庄田さんは、旧銀行跡地を見学したとき、ここでクラフトビールを造りたいという思いが込み上げてきたといいます。というのも、2019年にクラフトビールを学ぶため、本場のサンディエゴとポートランドのブリューパブを巡る旅に出た庄田さんが印象的だったのが、大きなビール醸造用タンクの目の前でビールを味わえるブリューパブでした。

「旧銀行跡地の広さなら、僕が理想としている大きなビール醸造用タンクを前にしてビールを飲む、ということが実現できると確信したんです」とうれしそうに話してくれました。

本来であれば、公益的な信用金庫であった場所を簡単に借りることはできません。しかし、10年以上もの間、福知山の商店街を活気づけようとさまざまな個人商店を誘致していた取り組みが評価され、旧銀行跡地の使用許可を得られたといいます。

羽星さんと出会ったのは、これからクラフトビール事業を始めようと動き始めていたまさにそのとき。地元の商工会議所の人につないでもらったことがきっかけで、ふたりは意気投合。出会った日には、庄田さんが理想とする旧銀行跡地を見学しに行くほど、二人のクラフトビールへの想いは燃えていました。

「旧銀行跡地は、僕たちにとって理想の場所なんです」と話す羽星さんは、旧銀行跡地を見学したその日に、自分たちが手がけるブリューパブの未来が見えたそう。一目惚れに近い感覚で、二人は旧銀行跡地を利用したクラフトビール事業への取り組みをスタートしました。

立ちはだかる壁。周囲の人々の支えで少しずつ前へ

羽星さんと庄田さんが出会ってすぐ始まったという、旧銀行跡地を利用したクラフトビール事業。しかし、旧銀行跡地の解体や改修、さらにはクラフトビールを醸造する設備投資など初めてのことばかりの経験で、たくさんの壁にぶつかったといいます。

craft-bank,2022

「初めは、すべて自分たちで作っていきたいと考えていました。でも、実際やってみるとできないことが多く、今は地域の人やプロに助けてもらいながら、少しずつ前に進んでいます。たくさんの人たちの協力があってのCRAFT BANK。ご縁に恵まれているといつも思っています」と羽星さん。

たとえば、クラフトビール醸造所で利用する冷蔵庫は近所のお菓子屋さんから譲り受けたもの、ビールを醸造するタンクの一つは、山梨県でクラフトビールを醸造するうちゅうブルーイングさんから購入したもの。CRAFT BANKを手がけるにあたって、地域の人をはじめ、たくさんの人々の協力がありました。

しかし、そこにはちょっとした裏話もあるようで。

「実は、うちゅうブルーイングさんにタンクを譲り受けるとき、『缶の充填設備は妥協したらダメだよ』とアドバイスをいただいたんです。ひとまず50万円くらいの設備でスタートしようと考えていたのが、その言葉を受けて500万円になりました」と庄田さん。さらに羽星さんが「業界の先輩方に話を聞くうちに、事業の規模がどんどん大きくなっています」と、笑いながら教えてくれました。

理想はDRUNKABILITY(ドランカビリティ)なビール、目標は宮崎ひでじビール

craft-bank,2022

今回、応援購入サイト「Makuake」で先行販売されているクラフトビールは、濃厚でコクのある丹波黒枝豆を使用した「KUROMAME BLACK(黒豆ブラック)」や、大きくて甘い丹波栗の「KURI GOLD(栗ゴールド)」、京都っぽさが魅力のゆずを使用した「YUZU PALE ALE(ゆずペールエール)」をはじめとする全6種類。これらのビールを造ろうと思った理由は何だったのでしょうか。

「京都で造るビールなので、やはり京都の名産品を使用したものにしました。福知山は地方の町。全国の人に知ってもらうためにも、地域の名産品を活用したビール造りを行っています」とCRAFT BANKのビールについて教えてくれた羽星さん。さらに「カラフルなラベルデザインも特徴で、例えば青色はどんなビールができる?赤色は何を原料にしよう?など、デザインに合った副原料を使用したビールも造りました」と庄田さんが楽しそうに話してくれました。

今回「Makuake」にて先行販売される6本のクラフトビールは、これからもCRAFT BANKを象徴する定番ビールにしていきたいというお二人。

庄田さんは「ほかにも、僕らが好きなヘイジーやIPAなどのビアスタイルにどんどん挑戦していきたいです」と笑顔を見せつつ、「僕らにとって、もはや当たり前になっているエール系のIPAでも、福知山に住む人々は飲んだことがある人の方が少ない。初めて飲む人もいるんです。そういう地元の人に向けて、IPAやラガーのようなおいしいビールを造っていきたいです」と、これから手がけていきたいビールへの思いを語ってくれました。

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また、羽星さんと庄田さんが目指す理想のビールはと伺うと、「DRUNKABILITY(ドランカビリティ)なビールです」と即答。DRINKABILITY (飲みやすい)と DRUNK(酔っ払う) を組み合わせた、お二人が造った造語で、「クラフトビールを楽しみながらいつの間にか何杯でも飲んでしまう、というビールを目指しています」と話してくれました。

一方で、お二人の目標としているビールはと伺うと、「修行でもお世話になった宮崎ひでじビールです」とニヤリ。理由を伺うと「宮崎ひでじビールは、ラガーがおいしいビール。でもラガーは、IPAやヘイジーなどのホップをたくさん使用するビールと比べて、味の調節が難しいビールなんです。『ごまかしが効かないビール』をしっかりと造る技術を持つ、宮崎ひでじビールが僕たちの目標です」と、修行した当時を懐かしむように話してくれました。

CRAFT BANKのこれから

2022年5月に、CRAFT BANKのオープンを予定している羽星さんと庄田さん。さらなる展開について伺うと「福知山を賑やかな場所にしていきたいです」と声を揃えるお二人。

羽星さんは「ビールをきっかけに色々な人が集まって、そこで出会った人たちが新しいことにどんどん挑戦していけるような、活動できる場所にしていきたいです」と話し、続いて庄田さんは「ビール片手に変な人が集まってほしい。そんな人がつながる場所にしていけたらいいなと思います」と展望を話してくれました。

craft-bank,2022

また、CRAFT BANKのビールについても「めちゃくちゃいろいろなことに挑戦していきたい」と羽星さん。「国内外問わず、たくさんのブルワリーとコラボして新しいビールを造ったり、農家さんとコラボしたり、アウトドア会社とコラボしたりとたくさんの可能性について考えています」とこれからの夢を語ってくれました。

一方で庄田さんは「100%京都産のビールを造りたいと思っています。たとえば、一緒にホップを栽培したり、ビールの副原料を栽培したりと、すべての工程で自分たちの知っている人が手がけたビールを造りたいです」と今後の抱負を語ってくれました。

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現在、CRAFT BANKのクラフトビールは、応援購入サイト「Makuake」で先行販売されています。クラウドファンディングをするにあたり、どうして「Makuake」を選んだのかを伺うと、「ビールの商品力で勝負していきたいから」と羽星さん。

続けて、「将来的には、全国にビールを売り出していきたいと考えているので、ビールの商品力で勝負できるかどうかを今の段階で挑戦してみたかったんです。Makuakeさんは、物販=商品力に注力しているイメージがあるので、Makuakeさんを通して戦えるなら、僕たちの自信につながるのではないかと思って選ばせていただきました」とMakuakeを利用するに至った経緯を教えてくれました。

今回、取材を引き受けてくださったCRAFT BANKの創業者・羽星さんと庄田さんが、お二人の夢であるクラフトビール事業への取り組みが着実に実現されているなかで、あらためてクラフトビールへの熱い思いを伺えました。旧銀行跡地の魅力を活かしつつ、新しいものを取り入れてCRAFT BANKにリノベーションしたお二人。新たな人々の出会いの場所として、福知山がどんどん賑やかになる日が待ち遠しく感じます。

また、今回ご紹介したCRAFT BANKが手がけるクラフトビールは、応援購入サイト「Makuake」にて2022年4月29日まで先行販売中です。京都らしさをたっぷりと詰め込んだビールをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

【参照サイト】京都発。旧銀行跡地でつくる、新たなクラフトビールブランドの挑戦。- Makuake

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むなげちゃん

1995年生まれ。京都在住。元酒類販売営業マン。ビールはもちろん、お酒全般を愛する。現在は、お酒メディアをはじめとしたウェブライターとして活動中。将来の夢は、世界中のお酒を飲み歩きながら記事を執筆すること。大好きなビールに揉まれて生きていきたい!「note」では、日々お酒情報更新中!大好物は鴨川で飲むビール。最高!

よなよなの里