丸の内朝大学で学ぶ、日本を“熱く”するクラフトビール

日本でも様々な地域で醸造所がつくられ、老若男女問わず愛されるクラフトビール。地域に根ざして個性豊かなクラフトビール作りに取り組む人々の熱意、そして食や農業、観光に関連づいた作り手の思いを学ぶ講座が市民大学『丸の内朝大学』で開講されました。

広報担当の長谷川さんに今回の講座についてお話を伺ったところ、「今回開講した『地域活性とクラフトビールクラス』は、募集初日に定員が埋まるほどの人気振りでした。これまでの受講生アンケートから、地域や地域活性に興味のある方も多く、現在のクラフトビール人気と合わせて、改めて関心の高さを実感しましたね。」とのこと。

My CRAFT BEERはそんな“地域と人を結ぶ、クラフトビール”について、たっぷり取材してきました。

第一回講義『旅のはじまりのビール』を十勝から/柏尾哲哉氏

旅のはじまりのビールを持つ 左:本庄さん 右:柏尾さん

旅のはじまりのビールを持つ 左:本庄さん 右:柏尾さん

柏尾さんは北海道帯広市出身。東京で弁護士として活動されながら故郷である十勝の活性化を目指してプロジェクトをスタート。北海道大麦100%使用の麦芽を用いたクラフトビール『旅のはじまりビール』が話題。

『旅のはじまりのビール』はドイツに古来より伝わる麦酒醸造法を守り、材料は麦芽・ホップ・酵母・水のみ。一口飲んだ瞬間からしっかりと麦の香りや味、そしてビールの持つコクを感じることができます。試飲した受講生からは「わ、美味しい…」という感嘆の声が上がるほど。

旅のはじまりのビール

旅のはじまりのビール

柏尾さんは「就職や結婚、進学などの人生の節目となる“旅のはじまり”に是非飲んでほしいです。飲んだ方の思い出に残る一杯になってもらえれば嬉しいですね。今後も様々な計画をしています、是非豊かな自然溢れる十勝へ一度来ていただきたいです」おっしゃっていました。

また、今回はキリンビール勤務時代には本場ドイツへの留学経験もある本庄啓介さんにもお話を伺うことができました。本庄さんは現在アウグスビールにて醸造家を務めており、また多くのクラフトブルワリー立ち上げのコンサルティングもなさっています。

本庄さんのお話によるとビール作りの過程で最も重要なのは『製麦』なのだそう。

「ビール作りにおいて重要なのは、やはり製麦。この製麦の過程によって、ビールそのものの香りや味、色まで変わってしまう。大麦を発芽させて、はじめて『麦芽』ができる、この段階が最も重要なのです。意外と、この重要性についてビールを作っている人でも知らないことが多いのです。」とのこと。本場ドイツで学んだ本庄さんだからこそ知る、製麦過程の重要性について伺うことができました。

第二回講義 ホップの里からビールの里へ。醸造する町 遠野/浅井隆平氏

浅井さんは岩手県出身。キリンビールに就職後は営業を担当。出向先で町づくりの魅力を感じ、現在は“ホップを通じた地域活性”を担当している。また、日本のホップ生産を世界水準に高めるためビールの里・遠野に新農業法人を設立。2018年4月に遠野市へ移住。
左:遠野醸造 田村淳一さん 右:浅井隆平さん

左:遠野醸造 田村淳一さん 右:浅井隆平さん

浅井さんの、遠野とホップに対する熱意は強い。

「日本産ホップを通じてビアカルチャーをもっと盛り上げたいです。“ビールを極めたければ遠野へ来い”と言えるレベルまでもっていくのが今の目標。そのために、その年に収穫されたホップを楽しむ『フレッシュホップフェスト』やホップ畑で人生最高の一杯を、がテーマの『遠野ビアツーリズム』など様々な企画を実施しています。」と笑顔で語ってくださいました。

また、地域活性において最も重要なことは、そこに住む人々の気持ちなのだとか。

「その地域の宝物を、その土地に住む人々が誇りに思っていることが地域活性において何より大切だと思っています。我々には、クラフトブルワーが交通渋滞のように集まる場所にしたい、マイクロブルワリーラボを作りたい、などいくつも夢があります。まだ発展途上でオールイメージですが、ビールの里になるという夢を叶えるため、日々仲間たちと意見交換しています。」とのこと。

今後、世界に類を見ない、いちじくやマスカットの香りがする新品種ホップMURAKAMI SEVENを使ったビールの展開なども予定しているそうで、ますます遠野の町から目が離せませんね。

遠野のホップ農家から

遠野のホップ農家から

第三回講義 ヤッホー流 チームとビールのつくりかた/原謙太郎氏

原さんは、2011年にヤッホーブルーイングに中途入社。イベント企画や顧客調査、広報など様々な業務を担当。大ヒット製品 『水曜日のネコ』の開発にも携わり、現在はよなよなエール広め隊(広報)のユニットディレクターとしても活躍中。
ニックネームで呼び合う社風のヤッホーブルーイング。原さんは“ハラケン”と呼ばれている

ニックネームで呼び合う社風のヤッホーブルーイング。原さんは“ハラケン”と呼ばれている

原さん

『軽井沢高原ビール』『信州ナチュラルビール』など。地域限定製品も多く発売しているヤッホーブルーイング。地域限定製品の発売は、製品の希少価値を高める目的のみではなく、その地域への観光客誘致の目的もあるのだとか。まさに地域と人をクラフトビールが繋いでいるのです。

そんな全国のビールファンを魅了する個性的でユニークな製品を生み出すヤッホーブルーイングの経営戦略とは?

「ヤッホーブルーイングは、クラフトビールが一般的ではなかった創業当時から、小規模でありながら圧倒的に大きな醸造所を用意しました。また、当初から全国流通を視野に入れていたので、瓶ではなく缶での生産を行うなど周囲からすると驚かれるようなことも率先して実践してきました。この一見クレイジーだと感じられる方針が今に繋がっているのでは、と思っています。」

また、大手メーカーのようなマーケティングや費用確保が困難なことを強みに変えたのだとか。

「差別化を図るため、何よりオリジナル戦略を重要視しました。その結果、2016年に世界最高峰のビールコンペティション・ワールドビアカップにて『アメリカンスタイル・ストロングペールエール部門 銀賞』を受賞しました。これはアメリカ以外のブルワリーでは初めてのことで、社員一同驚きましたが、強い自信にも繋がりました。これまでの技術の積み重ねによって評価いただけたのだと感じましたね。」と語ってくださいました。

また、人気の製品を生み出す秘訣は、ヤッホー流の会議やチーム作りにあるそう。

「どの製品もターゲットを狭く絞り、デザインも尖ったものも多いので、社内で全員一致というのはありませんね。しかし、我々はこの議論が割れることはマイナスだと感じていません。誰かが『このデザイン嫌い。絶対売れない』と感じる製品でも、市場が支持してくれて売れる製品もある。100人全員が支持してくれなくてもその中の1人が強烈に支持してくれれば記憶に残る製品になるというスタンスで製品開発をしています。また組織内でもニックネームで呼び合うことや、誰でも手を挙げれば製品開発などのプロジェクトにかかわるチャンスを作るなど、挑戦できる組織つくりを心掛けています。」とおっしゃっていました。

クラフトビールによって繋がっていく『地域』と『人』

今回My CRAFT BEER編集部では、丸の内朝大学の『地域活性とクラフトビールクラス』を取材しました。そのなかで感じたことは、今後ますます発展するクラフトビールの可能性です。その土地の素材を使用し、醸造家の心をうつすクラフトビールは、人々の心を引き込む魅力を持っているのだ、と改めて実感しました。

クラフトビールは飲む人それぞれの感性や好みによって、楽しみ方も様々。是非、My CRAFT BEER読者の皆様も、お気に入りのクラフトビールを求めて、色々な地域に足を運んでみてはいかがでしょうか。そこでしか味わえない“とっておきの一杯”が、そしてその土地でしか出会えない“特別な出会い”があるかもしれませんよ。

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杏

1993年生まれ 東京都在住/金融機関勤務を経て、24才でフリーライターに。女性の生活を豊かにするマネー術や取材記事、美味しい食事とお酒に関する記事を中心に執筆しています。最近は下町グルメとクラフトビールに夢中!