My CRAFT BEER 編集部の平野です。先月、東ヨーロッパの内陸に位置する、チェコ共和国の首都であるプラハを訪問してきました。プラハといえば、中世の町並みがそのまま残る歴史ある都市として有名ですが、実は、そうです。チェコはビール大国なんです。ご存知の方も多いかもしれませんが、チェコは世界で最も親しまれているビールスタイルの1つであるピルスナーの発祥国です。日本人の多くが日頃からよく飲んでいる大手ビールメーカーのビールは、ほぼピルスナーというビールスタイルで、そのピルスナーはチェコのプルゼニュ(ピルゼン)で生まれたビールなのです。
そして、チェコがビール大国と言われる所以は、一人あたりのビールの消費量がなんと世界一だというのです!
そんなビールの魅力あふれるプラハで、ビール事情を体験してきましたので、レポートしたいと思います。
チェコはビールの消費量が世界一!
日本でビールと言えばオクトーバーフェストで有名なドイツを真っ先に思い浮かべる人も多いかもしれませんが、そんなドイツでもビールの一人あたりの消費量が世界第3位(第2位はオーストリア)というのだから、ちょっと意外な気もするかもしれませんね。
キリン株式会社が発表した「キリンビール大学」レポート2015によると、チェコのビール消費量は、一年間で一人あたり142リットルで、23年も連続で1位を取り続けているのだとか。日本は、一人あたり42リットルで55位という結果となっています。チェコの人たちは、わたしたち日本人に比べて年間でひとり3倍以上もビールを消費しているということになるのですね。
チェコは「水よりビールが安い」
プラハだけに限らず、チェコでは水よりも安い値段でビールが売られていることが珍しくありません。それはレストランやカフェでも同じなのか、朝からテラスで、気持ちよさそうにビールのジョッキを傾けている人々の姿を何度も目撃しました。
日本だとビールは330ml缶が当たり前に売られていますが、チェコでは500ml以下のビール缶が売られているのを見かけませんでした。むしろ1.5Lのペットボトル入りのビールや、5Lの樽があらゆるスーパーで普通に売られていることにビックリ。チェコでは家庭でもビールサーバーが普及しているのでしょうか…。
それもそのはず、チェコを始めとするヨーロッパと日本のお酒事情を比べてみると、「なるほど、ヨーロッパではビールが安いはずだ」と思いました。
両者の酒税を比べてしまうと、ヨーロッパのそれはもうタダ同然に思えてしまうものです。原材料に関しても、日本では良質な水が豊富ですが、ホップや大麦はまだまだ輸入に頼っています。酒税も高く設定されており、原価も上がっていることを考えると、日本では第一のビールが「ハレの日の飲み物」ということになってしまっても無理はありませんね。
プラハでは至るところでクラフトビールが楽しめる
今回の旅行ではプラハ中心地を主に観光して回りましたが、街歩きをするなかで気づいたのは、本当にどこでもビールが飲めるということです。カフェやパブでも、安いところでは、一杯150円以下でビールが楽しめてしまうところもありました。
わたしはプラハのマーケットに出店しているビール屋さんで、オーソドックスなラガーを注文。厳しめなおじさんでしたが、お互いに拙い英語ながらも以下のように話してくれました。
家族でやっているクラフトビール屋さん
チェコには町一個にブルワリーがあるほど、チェコにとってビールは切り離せない仲である
チェコには数え切れないほどのクラフトビールがあり、大手との境目を感じさせない
それもそのはず、プラハのスーパーで買い物をする際にビール棚をのぞくと、一軒一軒に必ず違う銘柄のビールが置いてあるのです。全く同じ品揃えの店はないんじゃないかというくらいに、たくさんのビールが造られ消費されているのだなと感じました。
味ももちろん様々で、日本で馴染み深い大手のビールより味が濃く、時間が経つごとに味わいが変わってくるのが楽しいですね。まさに日本で飲むクラフトビールのようだと思いました。
チェコ人にとってビールは、フランス人にとってのチーズ
今回の旅行で感じたことは、チェコにとってビールは「フランス人にとってのチーズ」だということです。
わたしがフランスに住んでいたとき、どんなシチュエーションでもフランス人は必ず食事のなかでチーズを食べていました。それはレストランでの食事だけに限らず、一般的な家庭でも、パンに塗ったり一通り食事を終えた後にチーズをそのまま食べたりと、どんな人にとってもチーズは欠かせない存在です。
フランスのチーズもその歴史は長く、その数は300とも400ともいわれます。昔は家庭でもチーズを作るのが当たり前で、その流れからその土地それぞれの特徴を活かしたチーズがたくさんあり、集落ひとつにチーズが存在すると言われるほどです。
みなさんも知っているチーズ「カマンベール」も、村の名前なんですよ。このように、フランスのチーズには村の名前がつけられていることも少なくありません。
まさにフランス人が毎食チーズを欠かさず食べるように、チェコの人はビールを飲むのだなと感じました。
国中にクラフトビールが溢れているチェコは、ビール好きにはたまらない国であることを実感した旅行でした。日本で昼からビールを飲むことに抵抗を感じる方は、ぜひ一度プラハを訪れてみてはいかがでしょうか。数え切れないビールの中から自分のお気に入りを見つけてみましょう。
平野由香里
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