東京・湯島の路地沿いにタップルーム併設の醸造所を構えるブルワリー、THIS BREWING。スタイリッシュな空間でビールを飲むひとときは、目まぐるしい日常から離れてほっとひといきつく憩いの時間です。ブルワリーのオーナーに、THIS BREWINGのクラフトビールや店舗づくりについてうかがいました。
スタイリッシュな空間でクラフトビールを楽しむ【湯島】THIS BREWING
東京メトロ千代田線・湯島駅から徒歩約2分、マンションや小さなオフィスなどが並ぶ静かな路地沿いを行くと“CRAFT BEER”と書かれたシンプルなデザインの看板が目に入ってきます。THIS BREWINGのタップルームと醸造所が入居するのは築50年を越えるレトロな建物ですが、フルオープンの開放的なファザードから望む店内は洗練されたモダンな空間。
THIS BREWINGのオーナーは、デザイン事務所・タングラムのクリエイティブディレクター、矢吹誠さん。タングラムは映像やWEB、展示などさまざまなプロジェクトでデザイン・ディレクションワークを担い、その一方で都内にある2店舗のカフェを運営しています。もともとクラフトビールが好きだった矢吹さんは多忙なデザイン業と並行してブルワリー開業を目指し、2023年7月にビアパブをプレオープン。10月にTHIS BREWINGの自社醸造ビールを初リリースしました。
日常に“ゆらぎ”をもたらすビール
矢吹さんはブルワリーのアートワークもトータルで担当しています。もちろん、ロゴデザインも。THISの「H」の横棒が直線でなく揺らいでいるのは、日々のピンと張りつめた緊張感に“ゆらぎ”を与えたいというメッセージ。
ブルワリー名のTHISは、今週(This week)今年(This year)などの英語表現に使われる、常に最新の今・この時を表すワードとしてセレクトしました。定型化したレシピで造られる大手のビールに対して、マイクロブルワリーが造るクラフトビールは常に変化していて、今・この時にしか飲めないもの。オリジナルビールの名は「this ○○(ビアスタイル名)」(今の、最新の○○というようなニュアンス)。唯一無二の今・この時間を大事にしてほしいという意味も込めているのだとか。
静かな路地にたたずむ理由
繁華街のにぎやかな大通りに面した店舗ではなく、静かなロケーションに出店したことには理由があります。「落ち着いてビールが飲める空間にしたかったので、路地沿いに店を出したいというのがまずありました」と矢吹さん。
「20代から70代80代の方まで、老若男女、幅広い年代の人に店を利用してもらいたいんです。都心の表通りでこういう店を開業すれば、ビアギークの若者が多く来店してくれるのかもしれませんが、ターゲットを1つの層に限定したくないという思いがあります。湯島はいろんな年代の人がいて、しかも上野や秋葉原も近いのでインバウンド客が多く、年齢も国籍もまるっと幅広い人に届けられる。それで、あえてこのエリアを選びました」(矢吹さん)
自由な時間に寄り道を
「客層もそうなんですが、もう1つ限定したくないのがビールを飲む“時間”なんです」(矢吹さん)
海外に出張した時、フランスではランチでワインを飲んで仕事に戻るのが普通だったり、ドイツでは市場の一画で買い物の途中に昼からビールを飲む光景を見かけたり。矢吹さんが外国で体験した自由なお酒の楽しみ方や文化を広げたいのだそう。「日本ではお酒は夜に飲むものというイメージが強いですが、昼夜関係なくどこかに行く途中・行く前とか何かの合間に気軽に寄り道してもらえたらと思います」(矢吹さん)
店舗は建物の2階分を使っていて、その日の気分によってさまざまに過ごせます。1階はサクッと1杯飲んだり、スタッフとの会話も楽しめるスタンディング席。2階は1人でゆったり空間を使ったり、グループでの利用も可。天気のいい日はファザードがフルオープンになり、縁側のようなベンチでビールを飲むこともできます。
誰もが楽しめるビール、人気のサワーエールは定番化?
タップルームでは6種類のドラフトビールを提供し、そのうち3tapがオリジナルビール(2024年3月現在)。時間を気にせず飲んでもらいたいので、アルコール度数は比較的抑えめ。個性ある尖ったフレーバーよりも、飲み飽きず、多くの人に楽しんでもらえるような雑味の無い味わいを目指してレシピを組み立てています。ビアスタイルは絞らず、今後さまざまなビールを造っていく予定。
2024年3月に繋がっていたビールの1つ「this juicy pale ale」は、苦味を利かせかつドライでスッキリした飲み口に仕上げた、液色に少し濁りがあるペールエール。
2024年2月には柚子を使った「this saison w/yuzu」を提供。オリジナルビールのラインナップにはフルーツを使ったサワーエールやセゾンがオンタップしていることが多く、その時々の旬のフルーツの味わいが楽しめます。
「this sour ale w/raspberry」はリビーター続出の人気銘柄で、オープン以来バッチを重ねているフルーツサワーエール。ピューレではなくラズベリーの果実を贅沢に使った1杯。季節に関係なくファンが多いので、今後定番化する可能性もあるそう。
THIS BREWINGの樽ビールは、今のところ湯島のタップルームのみで提供中(2024年3月現在)。缶商品は当面店舗での販売になりますが、先々、ECサイトやリカーショップで購入できるようになるかも。
生地にこだわったパニーノが美味! スペシャルなデザートも
タップルームで出すフードのスペシャリテは「パニーノ」。新御徒町にあるナポリピッツァのお店に特注した薪窯焼きのパニーノ専用生地に、チーズ、ハム、バジルをはさんだ一品。焼き目がこんがり香ばしくて、生地そのものが美味。
ビールを使ったデザートもおすすめ。「ビア・コン・ジェラート」は、岡山県産のジャージー牛乳を使ったリッチなミルクアイスクリームに濃厚なスタウトをかけたスイーツ。アイスクリームは東京都世田谷区にあるカフェ「Bole」の自家製。「Bole」はTHIS BREWINGと同じく、デザイン事務所・タングラムが運営するお店です。
店舗の2階にはオリジナルのアパレル商品も展示してあります。フーディは人気で、特定のサイズが一時期SOLD OUTになっていたほど。
クラフトビールを飲む、このひといき。このひととき。
THIS BREWINGのコンセプトをつづった文章の冒頭のフレーズは「このひといき。このひととき。」。
「僕は、ビールそのものというより体験を届けたいと思っています。THIS BREWINGで過ごす、そのちょっとした時間を大切にして、時間の解像度をあげてもらいたい。そういう役目を果たせるブルワリーにしていけたらいいなと思っています」(矢吹さん)
THIS BREWING
住所:〒100-0005東京都台東区上野1-3-7 ナガホリ第一ビル
営業時間:水~金曜15:00~21:00、土曜13:00~21:00、日曜13:00~20:00
定休日:月曜・火曜
※営業時間や定休日は2024年3月現在の情報。お出掛け前にSNS等で最新の情報を確認してください。
【関連サイト】
THIS BREWING オフィシャルサイト
THIS BREWINGインスタグラム
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