奄美群島で70年ぶりに生まれたブルワリー「AMAMI BREWERY(奄美麦酒醸造所)」

AMAMI BEER HALL(奄美ビアホール)

毎年8月4日は「ビヤホールの日」として日本記念日協会に認定されている。それに2日先立つ8月2日、鹿児島県奄美市の飲食店・酒屋兼土産品店であるAMAMI BEER HALL(奄美ビアホール)で、店内で醸造されたビールが初めて提供された。ブルワリー名としてはAMAMI BREWERY(奄美麦酒醸造所)だ。

このブルワリーは2022年7月7日に発泡酒製造免許を取得。念のため補足すると、税制上は発泡酒免許でも、後述するようにヴァイツェンやペールエールといったビアスタイルを基礎とするビールを製造しており、国際的にはビールである。

AMAMI BREWERY(奄美麦酒醸造所)

運営するのは奄美大島で2店舗の飲食店を展開する奄美DNA社で、今回の新店は県内で鹿児島市の天文館通りに次ぐ規模の繁華街である、屋仁川通りからほど近い。そしてブルワリーとしては奄美群島唯一の存在だ。奄美群島とは鹿児島と沖縄のほぼ中間の北緯28度に位置し、奄美大島から加計呂麻島、与路島、請島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島までの8つの有人島を指す。総人口は約12万人、総面積は約1231㎢に及び、すべて鹿児島県に属す。

奄美群島に現在あるブルワリーは同店だけだが、初ではない。実は奄美大島には、1952年に設立された巴麦酒株式会社がトモエビールを製造して同年9月1日に発売を開始している。同社を設立したのは、現在も黒糖焼酎を製造し続けている西平酒造。さらに、巴麦酒直営の「中央ビヤホール」も開業し、ビールそのものとともに新聞広告での宣伝もされた。しかし翌1953年後半からはそうした広告が見られなくなり、ビール製造は短期間で終わってしまったようである(参照:軍政下奄美の酒(2) 吉田元)。

つまり、AMAMI BEER HALLは、奄美群島でほぼ70年ぶりのブルワリーとブルワリー直営ビアホールとなるのだ。同社の推計によれば奄美群島全体の年間ビール消費量は350万リットルで、このうち1%のシェアを目指すとしている。

AMAMI BEER HALL(奄美ビアホール)外観

ビール製造事業は構想2年。醸造機器の搬入が遅れるなどがあり、初醸造に漕ぎつけた。それまでの間、宮崎県日南市の日南麦酒に委託してビールを製造し、自社の他の飲食店で提供して反応をうかがい、自分たちで醸造するときのために備えていった。飲食店としては2022年1月に開店し、計画していたすべてのサービスを提供しているが、まだプレオープンという扱いである。今後、ビールや料理のメニューとレシピを改良し、9月に本格的なオープンを目指している。

AMAMI BREWERY(奄美麦酒醸造所)醸造設備

取材時に味わえたのは、「島ばななヴァイツェン」「長命草ペールエール」「純黒糖闘牛ブラウンエール」「ソルティーシークニンサワーエール」の4銘柄。

島ばななヴァイツェン アルコール度数5%
島ばななはよく売られているバナナと比べると小さく、モンキーバナナに似ている。奄美大島産を使用とのことだが、バナナ香よりクローヴ香が強く、甘味より酸味が強いのが面白い。聞けばやはり発酵温度が高めだという。甘く味付けた肉料理に合わせると、クローヴ香が料理の甘さを引き立てつつ、酸味で引き締まる。また醤油の香りと高まり合うので、例えば刺身と合わせても面白い。この銘柄の紹介資料ではグラスに注がれたビールとマグロの刺身を一緒に写した写真が採用されていて感心した。

長命草ペールエール アルコール度数5%
長命草はボタンボウフウとも呼ばれる植物で、根は鎮咳、鎮静、利尿、強壮作用があり、葉は煮て食べると滋養強壮薬になるとされる。この銘柄には奄美大島産が使われている。

ボタンボウフウ

上立ち香(アロマ)での青草のような爽やかな香りが印象的。甘味は控えめでさっぱりとしており、苦味を伴う渋味が香りと相まって薬草の感じがたっぷり。濃い緑茶の代わりに鮨と一緒に楽しみたい。口に含むと麦芽の穀皮のにおいが感じられるので、これが出ないようにするともっと良くなる。

純黒糖闘牛ブラウンエール アルコール度数6%
徳之島産の黒糖とショウガが使われていて、飲むしぐれ煮のよう。薄く味付けた畜肉や青魚と一緒にやれば、口の中でしぐれ煮が出来上がる。ショウガの香りと苦味が、麦芽と黒糖由来の香ばしさと甘味とよく調和している。ショウガの使用量を増やして香りと苦味を高めた方が、銘柄としての特徴が際立ち、後味での甘味の消え方が向上するかもしれない。

ソルティーシークニンサワーエール アルコール度数7%
徳之島に自生するミカン「シークニン」と奄美大島産の塩を使用。淡い色からは意外なうま味の強さ。塩分濃度は2%ということで塩味を強く感じるが、酸味とよく調和しているし、うま味がよく引き立っている。しかししょっぱいと感じる人は氷を浮かべる飲み方も勧められていて、よりさっぱりと飲める。

店内で飲める樽のビールは上記4銘柄の他に6銘柄の合計10銘柄を用意している。

店内の冷蔵庫では他社の瓶と缶の銘柄も扱っており、店内でも持ち帰りでも楽しめる。

今後は自家菜園で収穫したパイナップルを使った「奄美パイナップルスムージーエール」、ハブを使った「奄美ハブダブルIPA」も製造・販売していく予定だ。

飲食店としては午前11時から開店しており、飲み物や食べ物を注文しつつWi-Fiやコンセント、複合機も使えるので、コワーキングスペースとしても利用できる。余裕のある旅程にしたり、ワーケーションなどを組み合わせたりして、ゆっくり滞在して楽しむのがいいだろう。

施設情報

AMAMI BEER HALL
鹿児島県奄美市名瀬港町1-2 松第2ビル1階
TEL:0997-58-8100 FAX:0997-58-8103
https://www.instagram.com/amamibeerhall/

AMAMI BEER SHOP | 奄美ビール
https://amamibeer.com
https://www.instagram.com/amamibeer/

【参照サイト】AMAMI BEER HALL|奄美ビアホール – MADE IN AMAMI の奄美クラフトビール

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長谷川小二郎

執筆、編集、英日翻訳。2008年から、米ワールドビアカップ(WBC)、グレートアメリカンビアフェスティバル(GABF)など、国際的な上位ビール審査会で審査員。ビールと料理を合わせる理論と実践を学べる「ビアコーディネイターセミナー」講師、「ベルギービールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」テキスト執筆・講師、「ベルギービール・プロフェッショナル ベーシック講座」講師。最新作は日本語版監修・訳『クラフトビールフォアザギークス』。他に共著・訳『今飲むべき最高のクラフトビール100』など。日本ビール検定1級は5回連続合格。