フルーティーで飲みやすく、人気の高いビールといえば、白ビールですね。
あの箕面ビールの「桃ヴァイツェン」も白ビールの仲間ですが、お好きな方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。この記事で後ほど詳しくご紹介します。
さて、白ビールとは言うものの、液色は完全な白ではなく「白っぽく濁っている」ことが特徴。ホワイトビール(ホワイトエール)と称される場合も、もちろん同様の意味合いとなります。
もしもビアバーで最初の一杯に迷ったら、フランス語ではブロンシュ、ドイツ語ではヴァイスなど「ホワイト」と名のつくものを選ぶと、きっと乾杯に適した爽やかなビールに出会えるはずです。
そんな安定感も備えた白ビールについて、さらなる魅力をお届けする今回は、前回の記事に続く紅白完結編となります。
紅白それぞれのビールを取り揃えて、これからのクリスマスシーズンや年末年始のおめでたいムードに、華を添えてみてはいかかでしょうか。
白く濁る理由
白ビールは、ウィート(小麦)のビールと呼ばれます。通常、ビールには大麦だけが使われますが、白ビールには小麦が混ぜられているためです。小麦に多く含まれるたんぱく質により、白濁したビールに仕上がります。
白ビールいろいろ
1.ヴァイツェン(またはヴァイス)
小麦をビールに使う習慣は、ヨーロッパにおいて古くからみられ、中でも南ドイツで生まれたヴァイツェンは有名です。苦味のほとんどない可憐な味わいで、ビールは苦手だけどヴァイツェンだけは好んで飲む、という方もいるほど。ちなみにヴァイツェンはドイツ語で「小麦」、ヴァイスは「白い」を意味します。
現存する世界最古の醸造所ヴァイエンシュテファンは、725年に建てられた修道院から始まり、なんと1040年にはビール醸造を始めていたと伝えられています。現在はバイエルン州の公営企業として運営しているそうです。
ヴァイツェンの香りを表現する上でよく例えられる特徴そのままに、バナナやクローブに似たフルーティーな香り。小麦のやさしい甘みが主体で、ほのかな酸味もあります。
【参考】ヴァイエンステファン ヘフヴァイス | 日本ビール株式会社
ヴァイツェンは専用のヴァイツェングラスに注がれますが、ご覧の通り、上部に向かってグラスの口が膨らんでいます。これは、ヴァイツェン特有の厚い泡を保ち、酵母や小麦の豊かな香りを最大限に楽しむための設計。特徴的なフォルムには、理由があるのですね。
国産の美味しいヴァイツェンも沢山あります
その中でも、私が今回ご紹介したいのは、創業20周年を迎えた富士桜高原麦酒。今年は記念イベントや限定醸造ビールでも注目を集めていました。ドイツ仕込みの確かな醸造技術をベースに、厳選した原材料と富士山から十数年かけて湧出する良質な軟水を使い、至高のビールをつくり続けています。
ヴァイツェンは、ヘッドブルワー宮下氏の思い入れが特に詰まった看板ビール。フレッシュなエステルの香り高さが秀逸です。絹のようななめらかな舌触りとともに、まろやかな甘みが広がります。
【参考】富士桜高原麦酒
2. ベルジャンホワイト
ベルギーでも小麦ビールの歴史は古く、先住民族のケルト人たちもつくっていたと考えられていますが、ベルギーのビール史上、記録に現れてくるのは1300年頃から。ほどなくしてブリュッセルのヒューガルデン村で、今日のホワイトエールが生まれました。世のベルジャンホワイトのお手本であり、最も有名な銘柄がヒューガルデン・ホワイトです。
最近は水曜日のネコや白濁(しろにごり)がスーパー、コンビニで購入できることもあり、ベルジャンホワイトは、私たちにとって既に身近な存在であると言えますね。
先述のヴァイツェンは麦芽化した小麦を使うのに対し、ベルジャンホワイトは麦芽にしない生の小麦を使います。これによりリンゴのような芳香が生まれ、さらにコリアンダーやオレンジピール(オレンジの皮)などを加えるため、独特な香味を伴うビールとなります。
セント・ベルナルデュス・ホワイト/セント・ベルナルデュス醸造所
時代の流れで一時途絶えてしまったベルギーのホワイトエールを復活させたピエール・セリス氏が、ヒューガルデン・ホワイト、セリス・ホワイトに続き最後につくったビールです。
爽やかでとても飲みやすいのに、よりスパイシーさが際立った素晴らしい仕上がりとなっています。
【参考】St.Bernardus
イザック/バラデン
実は過去の記事でご紹介したこともあるイタリアのビール、イザックもベルジャンホワイトスタイルです。
ベルジャンホワイトは、喉を潤すにも料理に合わせるにもふさわしいオールラウンダー。また、銘柄によってスパイシーな印象を強めたもの、反対にフルーティーな香りを高めたものなど、個性の違いを楽しむ飲み方もできるのです。
このような魅力から、ベルギーにとどまることなく世界中でつくられ、人々に愛される存在になったのでしょうね。
3.その他
白いビールの仲間たちをピックアップしてみました。
国産桃ヴァイツェン/箕面ビール
毎年、開栓情報が出回ると桃ハンターなる人々がビアバーに集結し、各地で瞬く間に完売してしまう人気爆発ビール「桃ヴァイツェン」がこちらです。
八旗農園(和歌山)の新鮮な「あら川の桃」をふんだんに使用。桃の品種は、今年は早生・白鳳・川中島白桃の3種でしたが、それぞれの収穫時期に合わせてリリースされます。そのため、仕込み毎に違う品種の味わいが楽しめるのです…! なんとも贅沢な気分になりますね。甘過ぎず絶妙な加減で、しっかりと桃を感じることができ、ジューシーながらも後味はドライです。すべての桃を制覇したくなること間違いなしの、季節限定販売。
ラベルのお猿さんの頬が染まっていますが、よく見てください。隠れ桃です。
【参考】箕面ビール
オールドチコ クリスタルウィート/シエラネバダブリューイング
ヴァイツェンは、実はさらに細分化されていて、その中に「クリスタルヴァイツェン」と呼ばれるタイプがあります。クリスタルヴァイツェンは濾過されているため濁りがなく、厳密には白ビールではないとする見解もあります。
こちらはクリスタルヴァイツェンにも分類されるビールですが、小麦のまろやかさがありながら、クリスタルホップによって爽やかな香りとクリーンな苦味が特徴付けられています。公式HPにて、ペアリングフードの一例に寿司を挙げているところもユニークです。
【参考】Old Chico® Brand Crystal Wheat
シエラネバダといえば今年、先にご紹介したヴァイエンシュテファンとの限定醸造ビールがオクトーバーフェストでお目見えし、アメリカNo.1クラフトビールメーカーと世界最古の醸造所のコラボレーションとして話題となりました。
ジョセフ・ビオ/シランリュウ醸造所
最後にご紹介するのは、現代の普通小麦の原種にあたる「スペルト小麦」を使った、ちょっと特殊なウィートエールです。
小麦の古代種ということから、素朴な香りや味わいを想像していましたが、思いのほか華やかな香りが広がり、とてもフルーティーで爽やかなキャラクター。
一説によるとスペルト小麦には、普通小麦にはない心地良い香りが含まれているとのこと。食前酒におすすめです。
他にも、西洋ソバの実を使ったビールなど個性的な商品をリリースしているベルギーのシランリュウ醸造所。小規模ながら革新的な視点と技法を持ち、グルテンフリーのビールもつくっているそうです。健康意識の高いあなたに是非。
【参考】Brasserie de Silenrieux – Accueil
いかがでしたか?スタイルひとつとっても、銘柄によって千差万別なのがビールの常。この機会に紅白いろいろなビールを飲み比べて、お気に入りを見つけてみてくださいね。
【参考文献】
ビールの図鑑/株式会社マイナビ/2013年5月30日初版発行
ベルギービールという芸術/著者:田村功/株式会社光文社/2002年9月20日初版発行
Mariko
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