2020年春、東京都内でホップを育て、地域の方と一緒にクラフトビールを作る企画「東京でホップを育てようプロジェクト」が武蔵野市でスタートしました。10月には吉祥寺産のホップを使ったビールが完成し、地元客を中心にオーダーが殺到して即完売に。このプロジェクトはいかにして始まったのか? コンセプトやビジョンについて、企画の発起人にお聞きしました。
人気エリア・吉祥寺にホップ畑が出現!
東京都武蔵野市の吉祥寺エリアといえば、「住みたい街ランキング」の上位に君臨する人気の街。駅周辺の商業ビルや商店街がにぎわい、緑豊かな井の頭公園で自然も満喫できます。そんな吉祥寺の中心エリアからほど近い場所に、今年の春、突如ホップ畑が出現しました。
これは「東京でホップを育てようプロジェクト」のメンバーと農家さん、地域の方が協力して植え付けたホップ。プロジェクトの発起人は、JR中央線武蔵境駅近くのマイクロブルワリー・26Kブルワリーのオーナーであり、広告制作会社スイベルアンドノットを経営する見木久夫さんです。
この企画はどのような経緯で始まったのでしょうか。
「まず、地元の素材を使ったビールを飲みたいというお客様のニーズがありました。それに、国産ビールの原料は現状ではほとんどが輸入品なんですが、僕自身、できれば国産品を原料にしたビールを作りたいという想いをずっと持っていました」(見木さん)
武蔵野市はにぎわう繁華街や閑静な住宅地のイメージがある一方、実は耕作地も多いエリアです。見木さんは身近にある畑でビールの原料となる作物を栽培することを模索。さらに都市の農家と近隣の消費者をつなげるきっかけや場づくりにも、クラフトビールが貢献すると考えました。
「都市の畑でホップを育ててビールを醸造し、それをイベント化することで地元の方が農業に興味を持ち、最終的に、でき上がったビールで乾杯してみんなでワイワイやれれば1つのストーリーが成立するなと思ったんです」(見木さん)
見木さんのアイデアに一般社団法人武蔵野市観光機構が賛同し、多摩エリアの地域情報誌などを手掛ける株式会社けやき出版も協力、そして公益財団法人東京観光財団のバックアップも決まってプロジェクトが動き出しました。
吉祥寺産のホップを初収穫
夏季は天候不順が続きましたが、吉祥寺の畑で「カスケード」「信州早生」の2種のホップを栽培。地元有志の方と一緒に8月に1kg以上の毬花(ビールの原料となるホップの雌花)を収穫しました。
ホップは見木さんの26Kブルワリーに持ち込まれ、吉祥寺産のホップを使った「吉祥エール」が誕生しました。10月初旬、26Kブルワリーが入居しているカフェ「ond」で販売が始まると地域のお客様の注文が続き、樽出しの分は2週間ほどでソールドアウトに。一番花を使ったビールは苦みがフレッシュで飲みやすく仕上がり、二番花、三番花と味わいが変化。これは生のホップならではの楽しみです。
クラフトビールで、地域を盛り上げる
今年はコロナウイルス感染防止のために多くの人を集めるイベントは実現できませんでしたが、見木さんは今後、ホップの栽培からビールの醸造まで、地域の方がファミリーで参加できるようなプロジェクトにしていきたいと言います。
ホップの栽培地も増やしていく予定で、三鷹、立川、小金井、あきる野市など、中央線沿線のロケーションで候補地を検討中です。
「クラフトビールを作ることそれ自体が目的ではなく、ビールをきっかけにしていろんな人が出会う場づくりをしていきたい」と語る見木さん。マイクロブルワリーがひしめく中央線沿線で、今後、東京産のフレッシュなホップを使ったクラフトビールが広まっていくかもしれません。
【公式ページ】東京でホップを育てようプロジェクト
【公式ページ】26Kブルワリー