ビールが飲める書店!西荻窪「BREWBOOKS」店主がクラフトビール好きにおすすめする本3冊

ビールと本

クラフトビールの楽しみ方は人それぞれ。仲間と盛り上がって飲みたい方もいれば、好きな本や漫画を片手に1人でじっくり飲みたい方もいますよね。今回は、クラフトビールを飲みながら本が読める書店を取材。ビールと本を愛する店主に、クラフトビール好きにおすすめしたい本3冊をご紹介いただきました!

“麦酒と書斎のある本屋”、西荻窪「BREWBOOKS」

アンティークショップや雑貨店、個性的な飲食店など、個人経営のお店がひしめく東京・西荻窪。「BREWBOOKS」(ブリューブックス)はJR西荻窪駅南口から徒歩約4分、神明通りの商店街から一歩入ったところにある“麦酒と書斎のある本屋”。クラフトビールが飲める書店です。

外観
「BREWBOOKS」の店舗。レンガの壁と、青い窓枠・ドアがかわいい!
看板
開いた本とホップつきのスピン(しおり紐)のイラストが、「BREWBOOKS」のシンボル

店主の尾崎大輔さんは大学で日本文学を学んだ後、社会人になってから西荻窪で暮らしはじめました。最初は強い思い入れもなく選んだ土地でしたが、住むうちにこの街が気に入り、西荻在住歴はもう14年ほどになります。

内観
「BREWBOOKS」店主・尾崎大輔さん

「いろんな文化が共存していて、豊かで面白い街だなと思って。西荻で何かやりたいという気持ちが芽生えてきたんです」(尾崎さん)

本が好きで、クラフトビールが好きな尾崎さん。会社員時代、仕事帰りの夜遅い時間に、がっつりではなく軽く1杯だけビールが飲める店が欲しいと感じていました。自分の好きなクラフトビールと本を組み合わせて、西荻の街に「僕が入りたい店、あったらいいなと思う店」(尾崎さん)を実現してみようと、2018年10月に「BREWBOOKS」をオープンしました。

1階は書店、2階はクラフトビールが飲める書斎

店舗は、レンガの外壁の小さな一軒家。1階は書店、2階はクラフトビールを飲みながら備え付けの本が読める“書斎”です。

内観
「BREWBOOKS」店内には、文芸書や人文系の書籍などさまざまなジャンルの本が並ぶ
内観
お酒やクラフトビール関連本のコーナーも
内観
zineの品揃えも充実。『かわいいワンカップ手帖』はワンカップ酒のレビューを収録した人気のシリーズ

1階の書店には、文芸書や、人文系をはじめさまざまなジャンルの新刊書籍を取り揃えています。ベストセラーや売れ筋の本はあまり置かず、このお店に通うお客様を意識して尾崎さんが選んだ本が並び、独立系の小規模出版社の本やzine(個人やグループが発行する雑誌)の品揃えも充実。店の奥には、本棚をレンタルして小さな書店を開ける「BOOKSELLER CLUB」のスペースがあります。

内観
2階の書斎。畳のスペースには大き目のクッション、窓際にはゆったりした椅子も用意されている
内観
2階の利用料金は1時間1000円

2階の書斎は、畳敷きの広いスペースに文机、窓際には椅子も用意されています。1時間1000円で利用でき(1時間以上利用する場合は20分200円)、クラフトビールが1本サービスされるというシステム。1階の本は持ち込めませんが、2階に置いてある本は読み放題。尾崎さんが好きな村上春樹の小説やエッセイ、特集が組まれた文芸誌などがそろい、村上春樹ファンにはたまらない空間です。『HUNTER×HUNTER』などの漫画もありました。

書斎では読書会や句会、漫画について語る漫画部など、定期的にイベントが開催されています。イベントは、参加費プラス1ドリンクオーダーが基本。もちろんクラフトビールも飲めます。話がヒートアップしてくると、ビールのボトルがどんどん空いていくとか……

書斎で飲める久我山Mountain River Breweryのビール

尾崎さんがはじめて飲んだクラフトビールは、スコットランドのブルワリー・ブリュードッグの「PUNK IPA」。クラフトビール好きの同僚からすすめられて飲んでみると、「なんだこの苦いのは。こんなビールがあるんだ」(尾崎さん)、と衝撃を受けたそう。友人と、銀座のブリューパブ「八蛮」に通い詰め、ボトルや缶でもクラフトビールを買うようになりました。

ビール
「BREWBOOKS」で提供しているのはMountain River Breweryのクラフトビール

そんな背景から、「BREWBOOKS」の開業時に提供していたのはブリュードッグと、これも尾崎さんが好きな志賀高原ビールのクラフトビールでした。オープン後しばらくして同じ杉並区内の久我山で営業しているブルワリーMountain River Breweryのスタッフが来店したことをきっかけに、現在はMountain River Breweryのビールを提供しています。

ビール
Mountain River Brewery「Kugayama Blonde」

取材当日のビールのラインナップは4種類。ブルワリーの地元・久我山をイメージしたブロンドエール「Kugayama Blonde」、オレンジピールの香りとコリアンダーのスパイシーさが楽しめるベルジャンホワイト「Mountain White」、瓶内熟成させ飲みやすくドライに仕上げられたセゾン「River Saisons」の定番3種と、山形県産のワインぶどう「ヴェルデレー」を大量に使った季節限定のフルーツエール「Landscape」を提供。

編集部はフラッグシップの「Kugayama Blonde」をオーダーして2階へ。用意していただいたカップに注いで飲んでみました。「Kugayama Blonde」は苦味や炭酸が穏やかで、香りがフルーティー。本を読みながらまったり飲むのにちょうどいいテイストです。

2022年2月現在は新型コロナウイルス感染防止のため「BREWBOOKS」店内でのクラフトビールの提供はお休み中。ただし、Mountain River Breweryと連携して行っている「ローカルピックアップ」は継続しています。「ローカルピックアップ」は、Mountain River Breweryのオンラインショップでビールを注文(決済)し、「BREWBOOKS」で受け取ることができるサービス。送料がかからないので、西荻近隣にお住いの方にはうれしいサービスです。受け取りのルールなど詳しくは記事の最後にリンクするMountain River Breweryのサイトを参照してください。

クラフトビール愛好者におすすめ!店主がセレクトした3冊

本とビールを愛する尾崎さんに、クラフトビールが好きな方におすすめしたい本、3冊をセレクトしていただきました。尾崎さんの解説文とともにご紹介します。なかなかディープなセレクションです!

内観

生活や公共を考える、くらしの中のアナキズム

「BREWBOOKS」店主・尾崎さんおすすめ本、1冊目は人類学者・松村圭一郎さんの『くらしのアナキズム』。アナキズム(無政府主義)と聞くと気が引けてしまう方もいるかもしれませんが、この本は「アナキズム=無政府主義という捉え方を覆す、画期的論考!」(帯の紹介文より)で、革命家の名前はほぼ登場しません。本文中「はじめに」には、「どのように自分たちの手で生活を立てなおし、下から『公共』をつくりなおしていくか。『くらし』と『アナキズム』を結びつけることは、その知恵を手にするための出発点だ」とあります。世界各地でのフィールドワークなどの経験なども交えて人類学の視点から語られる国家論・アナキズム論です。

本
『くらしのアナキズム』松村圭一郎著(ミシマ社 2021年)

“アナキストが「権力からの強制」を嫌うのは、自由と平等が大切だと思っているからだ。”と著者は言います。クラフトビールを作る・飲む行為には、大量生産大量消費を前提とする大手ビール会社には無い自由の精神が宿っています。日本各地に多くの優れたマイクロブリュワリーが生まれ、地域の人々がそれを消費するということはくらしの中のアナキズムかもしれません。クラフトビールを好む人と『くらしのアナキズム』は相性が良いと思います。(尾崎さん)

フリーライター・スズキナオさんの生活史

尾崎さんおすすめ本2冊目は、お酒界隈で活躍するフリーライター・スズキナオさんの著作、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』。『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス 2019年)の続編です。ご近所を歩いたり、身近な人に話を聞いたり、気になる飲食店に入ったり……そんな日々の出来事を綴り、スズキナオさんが「ひとり考える」。「これがスズキナオ流『生活史』」(帯の紹介文より)。

本
『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』スズキナオ著(スタンド・ブックス 2021年)

たゆたう川を見に行く。焚き火をして、ビールを飲む。自分の欲求にきちんと当てはまる「何か」を実行することは、実はそう簡単ではありません。コロナ禍によって生活圏が狭まったとしても、自分の頭で考えて、自分の足を使って楽しみを見出すこと。そこにはクラフトビールを楽しむことと通じる心持ちがあると思います。(尾崎さん)

ビール好きによるビール好きのための実用書

最後は『クラフトビール フォア ザ ギークス ブリュードッグ流 ビアギーク宣言!』。スコットランドのブルワリー・ブリュードッグの創業者ジェームズ・ワットとマーティン・ディッキー、英国の記者リチャード・テイラーによる、クラフトビール好きに直接刺さる実用書。2019年に日本語版が発売された『クラフトビール フォア ザ ピープル ブリュードッグ流 あたらしいビールの教科書』に続く1冊です。ビアスタイルの解説から、自家醸造のガイド、ビールと相性のいい料理、ブリュードッグのクラフトビールの詳細なレシピなど、図入りでわかりやすく紹介しています。

本
写真右『クラフトビール フォア ザ ギークス ブリュードッグ流 ビアギーク宣言!』著者:リチャード・テイラー、ジェームズ・ワット&マーティン・ディッキー 日本語版監修翻訳:長谷川小二郎(ガイアブックス 2021年)、写真左『クラフトビール フォア ザ ピープル』

ブリュードッグ創業者による、クラフトビールを知り尽くしたいギークのための本。前著『クラフトビール フォア ザ ピープル』からさらなる高みを目指します。日本国内でのホームブリューイングはむずかしいですが、熱量と軽快さを両立した翻訳文は読んでいてワクワクします。(尾崎さん)

尾崎さんが紹介してくれた本は3冊とも「BREWBOOKS」1階で販売中(2022年1月現在)。『くらしのアナキズム』と『クラフトビール フォア ザ ギークス』は「BREWBOOKS」のオンラインショップでも買えます。

ビールを片手に読書に没頭してみては?

クラフトビールを飲みながら本を読むと、いつもより本の世界に没頭できるかも。2022年2月時点ではビールの提供をストップしていますが、本好き・漫画好きの方は「BREWBOOKS」の書斎にぜひ立ち寄ってみてください。ビール片手に参加できる読書会も再開を期待しましょう!

本とビール

【関連サイト】
「BREWBOOKS」
「BREWBOOKS」オンラインショップ
Mountain River Breweryオンラインショップ
【関連ページ】
ビールをより深く理解するための本『クラフトビール フォア ザ ギークス ブリュードッグ流 ビアギーク宣言!』発売

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