ビールのプロにこそ日本ビール検定(びあけん)を勧める7つの理由

日本ビール検定

2022年の日本ビール検定は、昨年に引き続いてCBT方式で実施される。3級と2級は9月1日(木)から10月31日(月)まで受検可能で申し込み締め切りは10月28日(金)、1級は10月30日(日)に受検で9月30日(金)が申し込み締め切りだ。3級や2級に興味があって、受けるかどうか迷っている人や、過去2級に受かっていて1級に興味がある人、そしてビールのビジネスに関わるすべての人に向け、受検すべき7つの理由を述べる。

なお、筆者は本検定の主催者からは一切の利益供与や取引がないことをここに改めて記しておく。

①知的好奇心が満たされ、ビールへの愛情が深まる

好きなものについてもっと知りたいと思うのは、人間の本性の一つだろう。かといって「好きならもっと知りなさい」と強制することではないし、「好きだからってそんなに知ることはない」と他人にとやかく言われることでもない。好きで知りたいなら、他人に迷惑をかけることがない限り(そんなことがあり得ると思えないが…)、どんどん進めて、ビールへの愛情と共に知識を深めたらいい。その格好の仕組みの一つにびあけんがある。

②テキストが公平中立

日本ビール検定公式テキスト
日本ビール検定公式テキスト
びあけんを受けるのにまず必要な『日本ビール検定公式テキスト』は、日本語で書かれ、特にビール全般について書かれた書籍の中で、もっとも公平中立である。例えば、検定そのものにサッポロビールが深く関わっているのだが、だからといって同社を不当に持ち上げる点はないどころか、不利に見える点も記されている。また日本にクラフトブルワーの定義があること(これはちなみに「クラフトビールの定義があること」と同値である)もきちんと掲載されている。極端な話、検定を受けなくても、通読するだけで得るものが大きい。ビールビジネスに関わっている人にこそ、読んでほしい。日本のビール市場に関わりがあることのうち、知らなかったことが必ず載っているはずだ。

③公平中立な視点が養われる

②に関連して、こうした公平中立なテキストを通読して活用すれば、自ずと公平中立な視点が養われていく。例えば、「大手メーカー5社はビール酒造組合をつくって適正飲酒の啓発をしているけれども、オリオンを除いてはストロング系を製造・販売していて矛盾しているな」とか「大手メーカーが自社商品や傘下ブランド商品をクラフトビールと呼んで売っているけれども、客観性や倫理性はないんだな」と気付いて、説明できるようになる。こうした力が、他の業界について調べたり語ったりする際にも使えるのは想像に難くない。

④知識のメンテナンスができて「時給」が上がる

これは特にプロ向けにおすすめの点だ。取引上、ビールの説明をする際、不確かな情報を伝えるのは言語道断だし、基本的な事柄をいちいち調べるのは手間だし時間がかかる。だったら、いっそ覚えてしまった方がいい。長い目で見れば、ビールについて調べる時間が減り、つまり「労働時間」が減り、報酬を労働時間で割った「時給」が上がることになる。何度でも読み返して忘れていた知識を補えば、「知識のメンテナンス」ができることになる。1年に1回の受検の機会は、正にテキストを読み返して知識のメンテナンスをする格好の機会なのだ。

⑤評判リスクを回避できる

こちらも特にプロ向け。ビールビジネスに関わるプロであればあるほど、ビールに関する間違った情報を伝えたら、信頼を失い、最悪、取引を失うかもしれない。そのリスクを回避するためにも、確かで新しい知識を得続ける必要がある。『日本ビール検定公式テキスト』は非常に公平中立といえども、一部に些細な間違いがあることはあるが、一冊全体を毀損するほどのことではない。もし、同書に載っている情報を伝えて、後に間違いだと判明しても、「同書が悪い」と言ってよい。それくらいの信頼性がある。そして2年に1回改訂され、古い情報が削られ、新しい情報が加わる。前の改訂版と比較して更新されている箇所を自分の手で拾っていくのは、知識のメンテナンスとして最高の方法の一つだ。

⑥ニュースの勘所が分かり、業界の変化にも対応できる

⑤の通り改訂版が2年に1回出るが、日々のニュースを追うのには間に合わない。そして検定では日々のニュースからも出題される。この出題に対応するためには、日々の特にマスメディアからのニュースを拾っていくことが必要になる。Yahoo!やGoogleのニュースサービスで「ビール」をキーワード登録する手がすぐ思いつくかもしれないが、これだと記事体広告や地域の小さなビールイベントの情報も拾ってしまい、慣れていないとどれが重要な記事なのか、判別しかねるだろう。

検定で出題されそうなのは、公共性が高くて業界動向に関わり、さらには知的好奇心も満たせるニュースだ。これらを探すのに一番簡単なのは、日本経済新聞を見ることだ。ビールを通じて日経新聞を読みこなせるようになれば、他の業界の動きを追って予測を立てる力も養えるようになるのは、想像に難くないだろう。このあたりの細かな方法は、次回以降の記事でも触れる。

⑦満点賞は一度受けたことがある人こそ狙え

もっとも即物的な受検のすすめなので最後に持ってきたが、級にかかわらず(1級も!)満点を取れば、ビール1年分(350ml缶1ケース24本を12ケース)を獲得者全員で山分けでもらえる。昨年まではもっとも難易度が低い3級でしか満点賞が出なかったが、今年はすでに満点賞が出ている。しかも3級と2級のダブル、2級はびあけん史上初という非常に輝かしい快挙である。この英雄のコメントは次回以降の記事に掲載する。過去に何級でもいいので受検したことがある人は、同じ級をもう一度受ければ、先述したが格好の知識のメンテナンスになるし、ビール1年分(を山分け)はちょうどいい「馬の鼻先にぶら下げるニンジン」になるだろう。

以上7点、一つでも興味を持っていただき、受検する、もしくは『日本ビール検定公式テキスト』を読んでいただければ幸いである。次回以降、びあけん主催者からの情報や、筆者なりの勉強法を詳しく取り上げていく。

【ウェブサイト】日本ビール検定(びあけん)公式サイト | 日本ビール文化研究会

The following two tabs change content below.

長谷川小二郎

執筆、編集、英日翻訳などを手掛ける著述家。ビール専門誌『ビールの放課後』発行人・編集長。2008年から、米ワールドビアカップ(WBC)、グレートアメリカンビアフェスティバル(GABF)など、世界上位の国際ビール審査会で審査員。日本地ビール協会(クラフトビアアソシエーション)講師として、ビールと料理を合わせる理論と実践を学べる「ビアコーディネイターセミナー」講師。日本ベルギービール・プロフェッショナル協会(JBPA)上級認定講師として「ビールKAISEKI(会席)アドバイザー認定講座」テキスト執筆・講師、「ベルギービール・プロフェッショナル ベーシック講座」講師。書籍最新作は日本語版監修・訳『クラフトビールフォアザギークス』。他に共著・訳『今飲むべき最高のクラフトビール100』など。日本ビール検定1級は7回連続合格、2022、2023年は首席。『知って広がるビールの世界 日本ビール検定公式テキスト(2024年4月改訂版)』ではJBPA講師として執筆協力、「ビールの放課後」が主要参考文献に採用。

よなよなの里