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超個性派も骨太も!【立川】で知る多摩のクラフトビール!発酵食の博覧会「発酵で旅する東京の森」

発酵食を学んで買って・旅に出る博覧会「Fermentation Tourism Tokyo~発酵で旅する東京の森~」が、東京・立川の複合施設「GREEN SPRINGS」で開催中です(2022年12月4日まで)! 発酵デザイナー・小倉ヒラクさんがリサーチした多摩の発酵食を紹介するイベントで、目で見て触って、匂いを嗅いで……発酵を五感で感じることができます。

クラフトビールも発酵食! 会場には小倉さんが訪ねた多摩のブルワリーの展示スペースが設けられています。博覧会で学んだ後は、立川のブルワリー・立飛麦酒醸造所を巡るローカルな旅へ。博覧会の模様や、多摩エリアのビールについてレポートします。

発酵にはもれなく「森」がついてくる!「発酵で旅する東京の森」

「発酵で旅する東京の森」は、2019年に渋谷ヒカリエ・d47 MUSEUMで開催され5万⼈を動員した展覧会 「Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜」の巡回展。

立川GREEN SPRINGS
「発酵で旅する東京の森」の会場は、立川「GREEN SPRINGS」2階、「TAKEOFF-SITE」

渋谷ヒカリエの展覧会に続き、「発酵で旅する東京の森」のプロデューサーは“発酵デザイナー”の小倉ヒラクさん。小倉さんは「見えない発酵菌たちの働きをデザインを通して見えるようにする」ことを目指し、これまでにさまざまなプロジェクトを展開。発酵・微生物をテーマに国内外でフィールドワークを重ねてきました。

会場内
「発酵で旅する東京の森」プロデューサー・小倉ヒラクさん

開催初日、小倉さんは「東京の発酵の現場を巡ると、そこにはもれなく森がついてくるんです」とスピーチ。西東京には、ピュアで毒がなくて微生物の栄養になるミネラルを適度に含んだ地下水が流れ、豊かな森を造り、それが発酵食品の仕込み水ともなっています。つまり、東京の発酵文化を訪ねることは、東京の森を訪ねること。今回の博覧会のタイトル「発酵で旅する東京の森」は、そんな背景から生まれたのだそう。

古くから伝わる郷土食から最新アイテムまで、多摩エリアと全国の発酵食を紹介!

会場内
東京・多摩エリア5市の発酵食を紹介

小倉さんは今回、青梅線沿線の立川市・昭島市・福生市・羽村市・青梅市の5市をリサーチ。日本酒、酒まんじゅう、小麦粉を使ったうどんのような麺を味噌と煮込む郷土食「打ちいれ」など古くから伝わる発酵食品から、チョコレート、チーズ、パンなど最近造られはじめた発酵食も発掘し、紹介しています。

もちろん、多摩のクラフトビールも!

会場内
日本全国の発酵食を紹介する企画展も開催
会場内
東京・新島の「くさや」を紹介する展示。「くさや」が生まれ、名物として広まったプロセスがわかりやすく解説されている。匂いを嗅げるオプションも……

会場の奥では、47都道府県の発酵食を集めた企画展も同時に開催。その土地の風土や歴史と発酵食のつながりを、小倉さんのやわらかい文体で解説しています。渋谷ヒカリエの展覧会に行った方にはおなじみの「匂いを嗅げます」オプションを設けている展示もあり、ローカル発酵食を五感で存分に学び・体験できます。

チャレンジングも骨太も!多摩エリアのクラフトビール

では、「発酵で旅する東京の森」博覧会で紹介されている多摩のクラフトビールにフォーカスし、丁寧にガイドしてくれた小倉さんのコメントを交えながら、ブルワリー2社の展示を詳しく見てみましょう。

「今回は、超チャレンジングと超王道、めっちゃ違う個性をもった2つのブルワリーを取り上げています」(小倉さん)

サーカスみたいなビール?【昭島市】イサナブルーイング

まずは昭島市のイサナブルーイング。手書きで添えられている小倉さんのキャッチコピーは「なんだコレは! 飲むたびサプライズ、クラフトビールのサーカスだ!!」。

イサナブルーイング
イサナブルーイングの展示

イサナブルーイングは、機械エンジニアだった千田恭弘さんが2018年に開業したブルワリーです。昭島市は東京で唯一、全戸の水道水が深層地下水。そのおいしい水を使ってベーシックなイングリッシュスタイルのビールや副原料に工夫を凝らしたビールを醸造しています。純窒素(Nitrogen)を高圧で溶け込ませた「The Nitro」シリーズは超クリーミーな泡が楽しめるビールで、レア。博覧会会場では個性あふれるビールが展示され、ホップの匂いを嗅げるオプションも。

イサナブルーイングのクラフトビール
展示されていたイサナブルーイングのクラフトビール。左から「ニュー・キネマ・パラダイス」(Italian Pilsner)、「シン・キングギドラガー」(Fresh Hop Triple Decoction Lager)、「ATOMIC Lemon IPA」(Lemon Sour IPA)。
※これらのビールは展示のみで会場での販売はなし
ホップ
ペレット状のホップの匂いを体験できる展示も

「イサナブルーイングさんは相当実験的。ブルワーは元エンジニアで、ギークなんです。流行しているアメリカのビアスタイルも造っていますが、イギリス系のベーシックなものもあるし、これ何? みたいな副原料を使ったかなりチャレンジングなレシピのビールも造っています。サーカス感のあるビールです。でも地元の人たちに愛されていて、お店にすごく人が集まっていますね。こんなにアヴァンギャルドなのに町場に根付いているんです」(小倉さん)

クラフトビール
会場で販売していたビール。「猪突猛進」(Belgian Herb Ale)、「過ぎ夜の月弧をはじく計算式のなかで」(Irish Porter)、「梅霞」(Milk Shake Session IPA)、「Zebra Udon Dashi Ale Type-O」(Belgian Dashi Ale)
※2022年11月初旬の情報。会期中、在庫状況は変わる可能性があります

イサナブルーイングの商品は、会場の物販コーナーで購入可。2022年11月初旬に販売していたのは、お屠蘇で使う屠蘇散(生薬)を漬け込んだ「猪突猛進」、王道のポーター「過ぎ夜の月弧をはじく計算式のなかで」、拝島天神社の梅を使用した「梅霞」、真昆布や伊吹いりこなどを使った出汁ビール「Zebra Udon Dashi Ale Type-O」。和の味わいのものが多く、発酵食のおつまみと一緒に購入して楽しみたいラインナップです。

骨太なビールを追究する【立川市】立飛麦酒醸造所

もう1社は立川市の立飛麦酒醸造所。小倉さんのキャッチコピーは「チェコスタイルの骨太ブルワリー!」

立飛麦酒醸造所
立飛麦酒醸造所の展示

立飛麦酒醸造所は2021年に開業。定番の3銘柄は、麦芽とホップ、水、酵母のみで副原料を一切使わず醸造しています。酵母はドライイーストではなく液体酵母を培養して使用。人工的な炭酸ガスを添加せず、発酵中に自然発生するガスのみを活かした「ナチュラルカーボネーション」を採用し、スタンダードな製法とおいしさにこだわったブルワリーです。

「立飛麦酒醸造所は、先ほどのイサナブルーイングさんとは対照的で正統派。ピルスナーはチェコのピルゼンのスタイルにこだわっています。超王道のビールです。いろいろ飲んでみた中でも、このピルスナーがおいしかったですね」(小倉さん)

立飛麦酒醸造所
立飛麦酒醸造所の定番銘柄を展示。左から「立飛ヴァイツェン」(Weizen)、「立飛ペールエール」(Pale Ale)、「立飛ピルスナー」(Pilsner)
※これらのビールは展示のみで会場での販売はなし

立飛麦酒醸造所のビールは「発酵で旅する東京の森」会場では購入できませんが、「GREEN SPRINGS」内にあるローカルフードセレクトストア「AMEKAZE」で取り扱っています。

クラフトビールを求めて超ローカルな旅へ!

「発酵で旅する東京の森」のテーマは“発酵食を巡る旅”。展示を楽しんだ後、このテーマに乗っかって超ローカルな旅に出てみました。

立飛麦酒醸造所
立飛麦酒醸造所

向かった先は立川の立飛麦酒醸造所。博覧会の会場から頑張れば徒歩で行ける距離で(所要時間20分~30分くらい)、公共交通機関を使うなら多摩都市モノレールの「立飛駅」か、立川バス「立飛本社前」バス停が最寄り。

醸造所
醸造所にタップルームが併設されている
立飛麦酒醸造所
立飛麦酒醸造所醸造長・清水秀晃さん。「多摩の恵」のブランドで知られる石川酒造で長く醸造にたずさわってきた

この日は醸造長の清水秀晃さんがタップルームにいらっしゃいました。清水さんは立川出身。博覧会でも紹介されている福生市の老舗の酒蔵・石川酒造でビール醸造部醸造長を長く務めてきたキャリアの持ち主です。基本のレシピに忠実に、クラシカルなスタイルのビールを造ることをポリシーとしています。

「立飛ピルスナー」
立飛麦酒醸造所「立飛ピルスナー」(Pilsner)

早速、小倉さんがおすすめしていたピルスナーをオーダー。「立飛ピルスナー」は、ピルスナー発祥の地・チェコのボヘミアンスタイルにこだわり、ピルゼンモルトとチェコのザーツホップを使って長期熟成しています。

「立飛ベルジャンホワイト」
立飛麦酒醸造所「立飛ベルジャンホワイト」(Belgian White)

もう1杯は、気になっていたシーズナルビール「立飛ベルジャンホワイト」を。副原料を使用しないビール醸造を基本とする立飛麦酒醸造所のビールの中で唯一、副原料を使ったビール。オレンジピールとコリアンダーの香りがさわやか。

人工的に炭酸を添加していないビールということで、お替わりしてもお腹が膨れたり、ガスが逆流したり(げっぷを連発したり……)することもなく、ナチュラルな飲み心地。強烈なホップのアロマを楽しむビールとはまた違って、繊細な味わい。

タップルームのビールはS、M、Lサイズが選べて、Sは200mlほどの容量。一気に大量に飲むのは苦手という方も、少量で多種類のビールが楽しめます。ブルワーとビールの話をしながらゆったりと過ごしたくなるタップルームです。

博覧会で学んだ後は、“発酵ツーリズム”を満喫

立飛麦酒醸造所のタップルームには、醸造所建設時に発掘された米国産のコーラの空き瓶がディスプレイされていました。このエリアでは戦前に軍用飛行機が製作され、戦後の一時期、米軍の施設となった歴史があります。「立飛」という駅名やブルワリー名は、立川飛行機工業株式会社という、かつてあった事業者名からきているのだということを現場に行ってはじめて知りました。「発酵で旅する東京の森」の会場にあった飛行機も、その流れを汲んだものなのだと納得。

博覧会で学んだ後は、ぜひ発酵食が造られている現場に立ち寄って“発酵ツーリズム”を満喫してください! おいしいビールや発酵食を堪能するだけでももちろん満足ですが、旅先ならではの新たな発見があるかも。
今回は訪問できませんでしたが、イサナブルーイングはJR青梅線・昭島駅からすぐのロケーションなので、立飛麦酒醸造所とあわせて2つのブルワリーをハシゴするのも◎。多摩エリアにはほかにもたくさんのブルワリーがあり、制覇してみたくなりますね。

発酵で旅する東京の森

博覧会では「多摩の発酵再発見ツアー」を開催する予定もあるそうなので、今後発表される情報にも注目です!

【イベント概要】
イベント名:「Fermentation Tourism Tokyo~発酵で旅する東京の森~」
会期:2022年11月5日(土)〜12月4日(日) 11:00〜19:00
会場:「GREEN SPRINGS」 2階 TAKEOFF-SITE(東京都立川市緑町3-1)
入場料:無料
主催:青梅線エリア女子旅推進委員会
企画・運営:発酵デザインラボ

【プロデューサー・小倉ヒラクさんプロフィール】
発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちの働きをデザインを通して見えるよう にする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマとしたプロジェクトを展開。d47 MUSEUM「Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜 」キュレーター。著書『発酵文化⼈類学』『日本発酵紀行』など

【関連サイト】
「発酵で旅する東京の森」公式HP

立飛麦酒醸造所

イサナブルーイング

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のび子

日本文化にまつわる分冊百科の編集担当を経て、料理専門誌編集部へ。食のサステナビリティ、クラフトビールが生み出す地域のコミュニティ・資源循環を取材。超少食だが酒はわりと強い。

よなよなの里