よく冷えたビールをよく冷えたグラスに注いで、キンッキンに冷たい液体を喉に流し込む!……それがビールの楽しみ方のすべてだと思っていませんか?
暑い夏の日に冷えたビールを飲み干すのは至福のひと時。でも、ビールの種類は多種多様で、スタイルごとにおいしく飲める適温の目安があるんです。なかには、冷蔵庫から出してしばらく置いて、常温に近づけてからじっくり、ゆっくり飲むのが適しているビールもあって、むしろ寒い季節に飲むのがおすすめなものも。今回は、ビールをおいしく飲むための温度についてご紹介します。
冷やせばいいってもんじゃない?ビールには適温がある
まずざっくりとした認識として、ビールを大きくカテゴライズする2つのスタイル、ラガーとエールで考えると、ラガー系のビールの一部はよく冷やして飲むのが適していて、エール系は常温に近づけた温度にした方が本来もつ風味や香りを楽しめる傾向があります。また、色の淡いものは冷たく、色の濃いもの・アルコール度数の高いものは高めの温度で飲むのがベター。
ビールスタイルは、ラガーとエールの中でもさらに多種多様に展開しているので、各スタイルによって適温が違ってきます。冷たくして飲みたいビール、冷蔵庫から出して少し置いてから飲んだ方がいいビール、常温に近い温度帯がいいビールについて、代表的なビールスタイルをあげながら見ていきましょう。
しっかり冷やして飲みたいビール
【ピルスナー、アメリカンラガーなど】
冷蔵庫から出したらすぐ、冷たいうちに飲みたいのはピルスナー。ラガービールの1つで、日本の大手メーカーが生産しているビールのほとんどがあてはまるスタイルです。アメリカでよく飲まれているミラーやバドワイザーなどのアメリカンラガーもよく冷やして飲みたいビール。どちらも、のど越しや爽快感を楽しむタイプのビールです。
とはいえ、冷やし過ぎも良くありません。冷やし過ぎるとビール本来の風味や香りが感じられなくなり、泡立ちも悪くなります。適温の目安はアメリカンラガーが5~7度くらい、ピルスナーは6~9度くらいとされます。
冷蔵庫から出してちょっと待ってから飲みたいビール
【ベルジャンホワイトエール、ヴァイツェン、ペールエール、IPAなど】
エールビールは、キンキンに冷えた状態から少し温度を上げてから飲んだ方がモルトの風味やホップの香りを楽しめます。飲み頃の目安は、ベルジャンホワイトエールが6~10度くらい、ヴァイツェンが10~12度くらい、ペールエールは11~14度くらい、IPAは7~13度くらい。時間をかけてゆっくり飲み、温度の変化につれて甘味や旨みが増して味わいが変わっていく様子をたどるのも楽しいですね。
しばらく常温に置いてから飲みたいビール
【スタウト、バーレイワインなど】
モルトの深い香りや甘味・旨みが特徴のビールは、常温にしばらく置いてから飲んだ方がアロマが引き立ちます。飲み頃の温度の目安はスタウトが12~15度ほど。熟成させたバーレイワインは16度ほどと、特に高めの温度帯が適しているとされます。
グラスも冷やすべき?凍ったグラスのデメリット
冷え冷えのピルスナーやライトラガーが飲みたい時、グラスもしっかり冷やしておくのがベストと思いがちですがそれも良し悪し。特に暑い日は凍ったグラス注がれたビールがとてもおいしそうに見えますが、グラスを凍らせると内側に霜が付き、ビールに水分が混ざってしまいます。冷やすならば冷凍庫よりも冷蔵庫がおすすめ。
さらに細かいことを指摘すると、冷蔵庫にグラスを入れると冷蔵庫に入っている食材などの匂いが移ってしまうことがあり、ビールの繊細な香りや味わいを楽しみたい方はそれも避けた方がいいかもしれません。あるビアパブでは、ビールを提供する直前にグラスに一度氷を入れて適度に冷やし、氷を捨て、水分をぬぐってからビールを注いでいました。何を優先するか、どこまでこだわるかは飲み手の判断ですね。
自分にとっての適温を見つけるヒントに
今回、複数の資料をあたってみて、同じビールスタイルでも適温とする温度にばらつきがありました。なるべく共通した見解をまとめましたが、スタイルは同じでも手掛けるブルワリーによってビールの味わいはさまざま。温度帯についてはあくまでも目安。なにより、飲み手の好みや飲むシチュエーションもありますので、みなさんにとっての適温を見つけるヒントにしてみてください。また、今回「適温」の目安として示したのはグラスに注いだ時の温度で、飲み頃の温度です。ビールを保存する際は必ず冷蔵庫に入れましょう。
【参考資料】『クラフトビールの世界』ぴあ刊
【参考資料】『ビール大全』楽工社刊
【参考資料】『ビール事典』学研刊
【参考資料】『世界のビール博物館』ステレオサウンド刊
【参考資料】『日本のクラフトビール図鑑』マイナビ刊